キーワードは楽しく、分かりやすく ハカセの論文

2020年11月27日

リビング編集部

大学の先生が書いた〝論文〟というと「難しそう…」とのイメージがあるのでは。でもなかにはユニークだったり、実は身近だったりするテーマのものも。そんな論文について分かりやすく教えてもらいました。研究が進めば私たちの将来の生活も変わるかも!

イラスト/かわすみみわこ


論文タイトル
乳児は道徳特性を帰属するか?14カ月児の公平性に対する期待は、エージェントの妨害行為に影響される※行為の主体者

同志社大学  赤ちゃん学研究センター
センター長  板倉昭二さん

〝良い人〟に期待するのは赤ちゃんも同じ

生まれたばかりだと侮るなかれ! 「赤ちゃんも良い人、悪い人を分かっているようです」と話すのは、同志社大学の板倉昭二さん。

こちらの論文では、14カ月の赤ちゃんが善悪の行動をもとに公平性を判断していることを解明。例えば、Aさんがある人を助け、Bさんがある人を邪魔する場面を赤ちゃんに見せたとします。続いて、AさんとBさんはイチゴを配ることに。このとき〝良い人〟であるAさんなら、みんなに平等にイチゴを分けてくれそうですよね。

「そうした予想は赤ちゃんにも共通。Aさんが予想に反して不平等にイチゴを分けると、赤ちゃんはその行動を長く見ていました。赤ちゃんは予期しない事象を長く見るという傾向があり、これを『期待違反法』といいます」

一方、〝悪い人〟のBさんが平等に分けても、不平等に分けても、見る時間に差はなし。赤ちゃんは良い人についてのみ「公平に分けるだろう」と期待しているのです。

「この結果は、今後、人がどのようにモラルを獲得するのかを調べる上でも役立つと思います」



論文タイトル
だしの風味と減塩

同志社女子大学 
生活科学部食物栄養科学科
教授 真部真里子さん

かつおだし特有の味や香りの力でおいしく減塩

減塩を心掛けたいけれど、おいしさまで失いたくない。そのためには、だしの〝うま味〟が有効だと以前から知られていました。

同志社女子大学教授の真部真里子さんが目を付けたのは、かつおだし特有の風味。「うま味以外のほかの味やにおいも重要なのではと考えました」(真部さん)

論文に書かれているのが、卵豆腐による実験。真部さんが学生とだしや塩分濃度を変えていろいろな卵豆腐を作り、だしの風味の効果を調べてみると…。

「うま味成分だけがあるグルタミン酸ナトリウム溶液をだしとして使ったときは、塩分濃度を0.75%まで下げるとおいしく感じられなくなりましたが、かつおだしで作ると0.75%の塩分濃度でもおいしさが損なわれなかったんです」

かつおだし特有の味は塩味を増強させると判明。そして、香りはおいしさを感じさせる効果があると分かったといいます。さらに、香りには〝うま味〟を思い起こさせる効果がありました。

ただ、この香りの効果はだし文化に親しんできてこそ表れるのではないかとのこと。普段からだしを上手に生かすことが、健康的な食生活につながりそうです。



論文タイトル
手芸や工作を利用して「情報の科学」を学ぶ授業実践
― 小学校での利用に先駆けた文系女子大学での実施報告 ―

京都ノートルダム女子大学 
ND教育センター
教授 吉田智子さん

〝かわいいモノ〟から学ぶプログラミング

小学校から行われている「プログラミング学習」は、ロボットや車を使った授業が主流。手芸や工作といった〝かわいいモノ〟作りを通した学習の方が興味を持てる子どももいるのでは。その研究を京都ノートルダム女子大学教授・吉田智子さんが論文にまとめました。

「子どもだけでなく、先生や親にとっても魅力的で身近な教材はどんなものかを探っています」と吉田さん。LEDをビーズやUVレジンで〝かわいく〟デコレーションした装置も、教材の一つ。ボタンスイッチを押すとLEDの光がピカピカ…。これはコンピューターが、元々はオンとオフ、2種類のデジタルデータから成り立っていることを学ぶ情報科学の教材。仕組みの単純さを知り、自分でプログラムを書きたいと思ってもらおうとのねらいです。

そのほか、色・明るさが変わるようにプログラムされたLED付きのクマのぬいぐるみなど、論文内で紹介される教材はたくさん。

「まずは面白いと感じることが肝心です。学生のアイデアも取り入れて、先入観なく『こんなことをしたい』との発想を伸ばせる教材を考えていきます」



論文タイトル
Period2のノンコーディングシスエレメントは成体の活動と体温の概日リズムの維持に必須である

京都大学大学院 薬学研究科
教授 土居雅夫さん

体内時計をコントロールするスイッチを発見

朝に目覚め、夜に眠くなる—。

そんな1日のリズムを決める「体内時計」。その体内時計を正しくコントロールする〝スイッチ〟の発見について書かれたのが、京都大学大学院教授・土居雅夫さんの論文です。

「DNA配列が、体内時計を正常に動かすための〝スイッチ〟になっていることが分かりました」(土居さん)

体内時計をつかさどる「時計遺伝子」が作り出すタンパク質の増減により、1日のリズムは刻まれています。

土居さんたちの研究チームは、DNAのうち、タンパク質を作れないためこれまで注目されていなかった「ノンコーディング領域」に着目。「ノンコーディング領域」のDNA配列がタンパク質の量をコントロールし、体内時計を刻む役割を果たしていることを確認しました。

「スイッチの強さによって、朝型・夜型などのタイプが分かれる可能性もあります。また、睡眠障害のメカニズムを知る手がかりにもなるかもしれません」

これからの研究に期待が高まります!

(2020年11月28日号より)