10月は国が定める「食品ロス削減月間」です。料理の専門家に、捨てられがちな食材をおいしく食べるための工夫を教えてもらいました
イラスト/オカモトチアキほか
家庭で調理中に出る生ごみは年間約33万にも
調理中に出る、生ごみの量を意識したことはありますか?
環境省のデータ(令和4年度)によると、家庭で出る生ごみのうち、約33万トンが野菜の皮などを厚めに取り除く「過剰除去」によるものだそう。
「捨てられがちな部位の中には、調理次第で食べられるものがあります」とは、食品ロスの削減に取り組む、京都市資源循環推進課の担当者。
「皮や芯にも栄養がありますし、無駄なく使いきることで食費の節約にもつながります。せっかくコストパフォーマンスを意識して買い物をしても、捨てる部分が多いのはもったいないですよね。いつもの習慣で余分に取り除いているところはないか、食べられないと思い込んでいるものはないか、振り返ることが大切です」
硬い皮や芯は細かく刻み口当たりをよくして
過剰除去を減らすコツについて、京都華頂大学 現代生活学部 食物栄養学科の教授・塩田二三子さんに聞きました。
「野菜はヘタ・皮・芯など、硬くて繊維質な部分が多い食材。口当たりが気になったり、切り分けるのが面倒だったりという理由で可食部ごと捨ててしまう人も多いよう。しかし、たいていの野菜は火を通したり細かく刻んだりすることで食べやすくなります。皮ごと調理してもいいですし、むいた皮を冷凍保存しておき、別の料理に活用するといった方法もあります」
よく使う食材を例に、捨てられやすい部分に含まれる栄養や、おすすめの調理法を教えてもらいました。また、同大学食物栄養学科が発行した冊子「エコクッキングレシピ集」に掲載されている、簡単レシピも紹介。こちらは学生が考案したレシピです。
[ 野菜編 ]
ニンジン
ヘタのふちに包丁の根元を差し込み、円を描くように切ると、ヘタだけを取ることができます。先端部分は傷みがなければそのまま利用可。皮もβ-カロテンが豊富です。千切りなら皮付きでも口当たりが変わりにくいとか。
ホウレン草
根元の赤い部分は、アントシアニンやミネラルの一種であるマンガンが豊富で、冬場は甘みが強くなるそう。根元から水に浸し、株を広げながらふり洗いすると汚れが落ちやすくなりますよ。葉がつながる程度に、根を切り落として。
ブロッコリー
芯は、繊維が気になる場合は、表面の硬い皮をそぎ落とし、中心部分を使いましょう。ミキサーにかけてペースト状にすると効率よく食物繊維を摂取できます。
カボチャ
β-カロテン、食物繊維が含まれている皮や種。コロッケなど果肉を潰して使う料理は、皮やワタも利用しやすいです。種はオーブンで焼いて塩を振ると、おつまみ感覚で味わえます。
野菜の芯を利用したグツグツポタージュ
〈材料(4人分)〉
- ブロッコリー 1/2個(約125g)
- キャベツ 1/4個(約180g)
- バター 30g
- 水 300cc
- 野菜くず(白ネギの葉、ニンジンの皮、タマネギの根元などなんでもOK) 120g
- A(塩 小さじ1/3、牛乳 200cc、生クリーム 50cc)
- オリーブオイル 少々
- パセリ 少々
〈作り方〉
- 鍋に水と野菜くずを入れ、30分煮込む
- ブロッコリー、キャベツを一口大に切り、別の鍋で柔らかくなるまで茹でる(芯も同様)
- 茹でた❷を取り出し、バターで炒める
- ❶の野菜くずと煮汁(200cc分)、❸をミキサーにかける
- 鍋に❹を移し、Aを入れて温める
- 器に盛り、オリーブオイルとパセリをかける
[ キノコ編 ]
軸のうま味を料理にプラスして
キノコ類は種類や料理によって傘のみ、軸付き、と使い分けることも。
「先端の石づき以外は食べられます。軸にもうま味成分があるので、料理の隠し味として加えてもいいですね。最近は、エノキの根元だけをほぐさず塊のまま焼いて、ステーキ風にする調理法もあります」(塩田さん)
シイタケ・エノキ
おがくずが付着していることもあるので、石づき(先端から約1cm)のみをカット。エノキの根元の軸が固まった部分も食べることができます。
シイタケの軸のふりかけ
〈材料(作りやすい量)〉
- 干しシイタケの軸(水で戻したもの) 20g
- かつお節 10g
- A(濃口しょうゆ 大さじ2、砂糖 大さじ1、みりん 大さじ1、酒 大さじ1)
- シイタケの戻し汁(水でもよい) 大さじ2
〈作り方〉
- 水で戻した干しシイタケの軸をみじん切りにする
- かつお節をミルなどを使って細かくする
- 鍋にAとシイタケの戻し汁を入れ、火にかける
- ❸が温まったら❶❷を入れ、焦げないようにかき混ぜながら水気がなくなるまで炒る
※通常のシイタケの軸を使ってもよい
[ 果物編 ]
皮付きの輪切りなら子どもでも食べやすく
秋は果物がおいしい季節ですね。
リンゴやナシなどは、表面をよく洗い、皮ごと食べるのがおすすめだそう。
「皮の色が濃く色素成分が多いということは、それだけ栄養素も含まれているということ。薄く輪切りにすれば皮の硬さを感じにくく、子どもでも食べやすくなりますよ」
りんご
ヘタ、種は取り除いて。果肉はくし切りにし、種の周囲にある、色が異なる薄皮のような部分のみを切り落としましょう。皮は食物繊維やポリフェノールが豊富です。
みかん
外皮は干して漢方薬として利用されてきました。刻んで茹でると苦味を和らげることができ、果肉と砂糖と一緒に煮詰めればマーマレードに。
野菜と果物の皮のかきあげ
〈材料(作りやすい量)〉
- A(ニンジンの皮 1/3本分、サツマイモの皮 小1個分、リンゴの皮 1/2個分)
- 溶き卵 大さじ1
- 小麦粉 大さじ2
- 水 大さじ2
- B(砂糖 小さじ2、シナモン 少々)
〈作り方〉
- Aをそれぞれ2〜3cmの長さに切る
- 溶き卵に水と小麦粉を加え、粉が残る程度に軽くかき混ぜる
- ❶を一口大ずつに分け、小麦粉(分量外)少々をふりかけて混ぜる。❷をティスプーン1〜2杯分加えて混ぜる
- 鍋にサラダ油(分量外)を底から2〜3cm程度入れて170℃に熱する。❸の形を整え、表面がきつね色になるまで揚げる
- Bを混ぜ合わせ、取り出して油を切った❹にまぶす
[肉・魚編 ]
皮や骨は揚げてパリッと食感に
鶏肉の脂身や皮、魚の骨は、身が付いたまま捨てられやすい部位とか。
「肉や魚の皮は煮るとブヨブヨした食感になりますが、オーブンで焼くとパリッとした食感に。魚の骨も、油で揚げるとおせんべいのように食べやすくなります」
鶏肉
皮にはコラーゲンが含まれています。脂質が気になるときは、湯通ししたり、焼いて出てきた油をキッチンペーパーで拭き取ったりすることで、さっぱりと味わえます。
魚・エビ
骨はカルシウムが豊富。小ぶりなものなら、じっくり煮ることで小骨も柔らかくなります。エビの殻にはカルシウムや、抗酸化作用のあるアスタキサンチンが。揚げてパリッとさせ、ミキサーなどで細かく砕くことで、ふりかけとして楽しめます。
捨てる食材にも使い道が
調理中に除去した魚のアラ、手羽先の骨などでだしを取ってみませんか。
「すぐに使わないときは冷凍庫に除去した部分をストックしておき、時間に余裕があるときに鍋で煮込んで。作っただしも冷凍できるので、煮物やスープに使えます。『まだ何かに使えるのでは?』という発想が、食品ロス削減につながります」
捨てる部位も、ひと工夫で料理に生かすことができそうですね。
\教えてくれたのは /
京都華頂大学 現代生活学部 食物栄養学科 教授
塩田二三子さん
「普段捨てているところを食べるのは、始めは抵抗があるもの。無理のない範囲で食材をおいしく味わい、楽しみながら食品ロス削減に取り組んでみては」
(2024年9月28日号より)
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