実は〇〇!な外反母趾

2024年2月16日 

女性に多いイメージのある疾患、外反母趾(がいはんぼし)ですが、専門家に取材すると意外な〝実は…〟が見えてきました。進行予防の対策と合わせてチェックを。

イラスト/かわすみみわこ

年々症状が悪化する進行性の疾患

足の親指が内側に傾く「外反母趾」。患者数が多い疾患ながら、あまり知られていない事実もあると教えてくれたのは、洛西シミズ病院の整形外科医・奥田龍三先生です。
「成人女性の3〜4人に1人は外反母趾といわれています。レントゲンを撮り、足の第1中足骨と第1基節骨の角度が20度以上あるかが判断基準に。角度により3段階に分けられます(下図参照)。症状としては、出っ張った親指の関節部分が痛むほか、親指が傾くことで体重が正常に分散されず、足裏にタコ・マメができることも。その痛みで歩行に支障をきたす場合があります。重度では、第2趾が親指に乗り上げて脱臼してしまうケースも」
治療は、これらの痛みの軽減が目的といいます。では、軽度であまり痛みがない場合は放っておいていいかというと、そうではないとのこと。
「外反母趾になると、足の筋肉のバランスが崩れ、じん帯に負担がかかります。放置していると症状は徐々に進行。早めに適切な対策を取って、進行を予防することが重要です」

原因はハイヒールとは限りません

外反母趾の原因というと、思い浮かぶのは「ハイヒールなどかかとが高くつま先が狭い靴」ではないでしょうか。
「確かに、履物は大きな要因です。過去に行われた調査(※1)では、〝はだしで生活する文化圏の人々で、外反母趾に罹患(りかん)しているのは約2%〟だけでした」と奥田先生。
「足指を圧迫するような靴は避けたほうがいいでしょう。しかし、ゆったりした靴を履けば絶対ならない、ということではありません。ほかにも要因はあるのです」

遺伝によりかかりやすい人も
「はだしで生活する人の中にも外反母趾になる人はいました。普段かかとの低い靴を履いている女性や男性も同様です。そこには遺伝が関わっています」
女性患者の50%弱、男性患者の70%弱が「家族にも外反母趾の人がいる」と答えた調査結果(※2)があるとのこと。
「これらの患者は、外反母趾になりやすい足の骨格構造などを受け継いでいると考えられます。もちろん、近親者に罹患者がいるからといって必ずなるわけではありません。ただ、そのような人がさらに〝窮屈な靴を履く〟といったことをすれば、外反母趾になる可能性はより高まってしまいます」

性別や体の柔軟性も影響
遺伝のほかにも要因はあるそう。
「性別もその一つ。男性患者の数は女性の3分の1ほどです。統計から考えて、女性のほうがかかりやすい疾患といえるでしょう。
また、関節の柔らかさも関係しています。体の柔らかい人は足指の関節も曲がりやすく、外反母趾になりやすいですね」
一般的に女性は男性に比べて柔軟性が高く、さらに、ハイヒールやつま先が細い靴を履く人も。
「外反母趾が女性に多いのは、罹患につながる要因をいくつも持っているからなのです」

子どものころから発症する人も

「外反母趾は大人だけの疾患ではない」と奥田先生。
「幼児はまれですが、小学校高学年ごろから親に連れられて受診に訪れる子どももいます。体が急激に成長する思春期になると、痛みを感じ始める場合も。
子どもの外反母趾の原因は不明であることが多く、その中で遺伝も原因の一つと考えられます」
子どもの足の健康のために、親ができることとは。
「まずは適切な靴を履かせてあげることです。足指が当たるような窮屈なサイズはダメですが、甲のヒモを締めてもすぐ脱げる、すぐ履けるという大きすぎるものもよくありません」
成長が早い子どもの足。こまめに靴をチェックしてあげることが大切なようですね。
次は、外反母趾の進行を予防するための対策を紹介します。

放置しておくと悪化する外反母趾。軽度の人のための進行予防対策を奥田先生に教えてもらいました。

※中等度以上の場合、効果が見られない、もしくは悪化する可能性もありますので、医師の指示に従ってください

靴&中敷き編

足指に負担をかけない靴を選んで
奥田先生は、「外反母趾の患者さんにまず説明するのは、適切な靴選びと中敷きの使用についてです」と話します。
「靴は、かかとと甲がしっかり固定されて、つま先は足指が上下に少し動かせるくらいの余裕があるものを選びましょう。かかとの高さは2〜3㎝がベスト。高すぎるのは前滑りしてしまうのでNGですが、低すぎても重心が後ろにかかって歩きにくくなります。
靴が指に当たらないようにと大きすぎるサイズを選ぶのも、前滑りして結局は足指が圧迫される原因に。甲部分が開いているもの、サンダルのようにかかとがないものも同様の理由で避けましょう」
出っ張った関節に当たっても痛みが少ないよう、柔らかい素材の靴がおすすめだそう。革靴などの場合、「幅出し」(指の当たる部分などの幅を広げる)をしてくれる靴の修理店もあるようです。

中敷きで足のアーチを支えて
「自分の足裏の形に合わせた中敷き(インソール)も欠かせない」とのこと。
「土踏まずを構成している足のアーチをしっかり支えてくれる中敷きを使用しましょう。足裏にマメやタコがある場合は、その痛みを和らげるため、中央に膨らみもついている方がいいですね。
もともと靴に入っている中敷きや市販品については、合わないものを使用しても効果は出にくい」といいます。
「『外反母趾』と診断された場合、オーダーメイドの中敷きを保険適用で作ることができる医療機関もあります」

運動&ストレッチ編

日常生活の習慣として取り入れたいのが、足の運動とストレッチ。
「足指のグーパー運動は、親指を横へ開く役割を持つ母趾外転筋の強化が期待できます。また、親指のストレッチやホーマン体操では、母趾内転筋など親指につながる筋肉や腱(けん)、じん帯をほぐし、関節が固まるのを防ぎます。これらを続けるうちに、痛みが軽減されたり傾斜の角度が改善されたりした例も」
それぞれ毎日5〜10分間、くり返し行いましょう、と奥田先生。テレビを見ながらなど、無理なく続けられるといいですね。

グーパー体操
足指で「グー」を作るように付け根からぎゅっと曲げ、次に5本の指を思い切り開いて「パー」に。

親指ストレッチ
左足の場合(右イラスト参照)、親指の関節すぐ下あたりを指で左側に押しながら、反対の手で親指を右側にゆっくり倒します。少しつっぱっても痛くない程度まで倒したらしばらくキープし、元に戻します。(右足の場合は逆)

ホーマン体操
左右の親指に太めのゴムをかけて、足を開きます。ゴムがしっかり張れたらしばらくキープし、元に戻します。

私って外反母趾?病院に行く目安は?

「親指の傾斜が明らかである、または足裏のマメなどが痛む(特に靴を履いたとき)なら、整形外科を受診しましょう。適切な靴や中敷きを使用し、ストレッチなどの運動をしても効果が見られず、痛みで日常生活が困難な場合は主に手術による治療が行われます」

教えてくれたのは

洛西シミズ病院
整形外科顧問
奥田龍三先生

(※1)L Sim-Fookほか「A comparison of foot forms among the non-shoe and shoe-wearing Chinese population」
(※2)H Okudaほか「Factors Related to Prevalence of Hallux Valgus in Female University Students:A Cross-Sectional Study」、C Neryほか「Hallux valgus in males-part1:demographics,etiology,and comparative radiology」

(2024年2月17日号より)