いま、まちにライブラリーが増えています。個人宅や商店街、カフェにデパート、大学…と場所もさまざま。読書の秋、いつもの図書館とはちょっと違う、本のある空間を紹介します。
撮影/橋本正樹(1面)、瀬田川勝弘(2面「and happiness.」)
knocks! horikawa(ノックス! ホリカワ)
みんなの図書館
現在オーナーは34人 1箱ずつの個性が伝わる本棚
上京区・堀川商店街に2023年10月オープンした「knocks! horikawa」。子どもの学びの場、音楽やアートを楽しむ場、そしてシェア型ライブラリー「みんなの図書館」と多彩な顔を持っています。
こちらの主宰の一人で、同図書館を担当する國定若菜さんによると、名前の「みんなの」には二つの意味が。一つは誰でもふらっと立ち寄れて、気兼ねなく本を読めること。「開かれた場なので会話をしても、飲み物や食べ物を持ち込んでもいい。親子で室内遊びをしてもいいですよ」
もう一つは誰でも本棚のオーナーになれること。シェア型ライブラリーというのは、本棚をシェアして自分だけの本棚を持つことなのです。「現在34人のオーナーがいて、各ブロックに並べた本からは関心や個性が伝わり、自己表現にも。読む誰かへの貢献にもなると思います」
近隣の住人に買い物客、通りすがりの人など多くの人が刺激を受け、安らぐ場になりそう。「京都の歴史本を手にまち歩きなど、本棚に並ぶ本から着想を得た企画もしていきたいです」
knocks! horikawa みんなの図書館
- 京都市上京区奈良物町481 堀川出水団地第3棟第314号室
- 年内は火・木・土曜午前10時~午後4時
- 閲覧無料。貸し出しは会員登録300円が必要。最大3冊まで、2週間 ※1箱本棚のオーナーは月2000円要
正親(せいしん)まちの本箱プロジェクト
家の軒先、お店の前に小さな文庫 本箱にはユニークな名前も
学校帰りの子どもたちが立ち読み、通りがかる人が足を止めて本を借りる―。まちかどでこんな光景が見られるのは上京区の千本中立売近く。民家の前、路地の奥、店先などにさまざまな本箱が置かれ、絵本に児童書、小説、京都にまつわる本、実用書などが並びます。
仕掛け人は「正親まちの本箱プロジェクト」の代表・岩谷礼子さん。「2年前の春、東山区の『まちじゅうを図書館に』という活動を知り、すぐに話を聞きにいってノウハウを教わりました。家で眠っている本が地域で再び生かせると感銘を受けたんです」と話します。
周りの人に声をかけると賛同者が続々と集まり、同年秋にはプロジェクトを始動。現在11カ所に、賛同者がおのおの本箱を設置しています。これらの本箱には「学校前文庫」「薬屋さん文庫」といった名がついていて、それぞれ常連さんがいるそう。誰でも自由に読め、各文庫に置かれる貸し出しノートに必要事項さえ書けば、簡単に借りられます。「本を見ている人と話したりノートで感想をやりとりしたり、そんなつながりも楽しいですね」(岩谷さん)
and happiness.(アンド ハピネス)
幅広い世代が思い思いに過ごす ライブラリー&カフェ
本を読むだけ、食事だけ、あるいは両方楽しんでも。「and happiness.」はライブラリー兼カフェ。JR「西大路」駅にほど近い、マンションの敷地にあります。
「4年前から準備を進めてきました」と代表の宇野明香さん。その中で事業の関係者や周辺住民に本の寄贈を呼びかけると、多種多様な1300冊が集まったといいます。どう配架するか試行錯誤し、今年5月にオープン。「生きやすくなる裏技」などテーマごとに本が並んでいます。「本を戻す位置は大まか。だから本との出会いは一期一会、次来たとき同じ所にあるとは限らないので、気になるならすぐに読んでと伝えています」
近所のお年寄りが憩いに、小学生が宿題をしに、高校生が英語の本を借りに…と幅広い世代が来店。自由度の高さも魅力です。「子育て中の人にはゆっくり絵本が読めてカフェで食事もできるし、目の前の公園で遊べると喜ばれます。ここがあることで顔見知りになり、会話する人たちも。つながっていく姿を見るとうれしいです」
and happiness.
- 京都市南区唐橋平垣町24-4 メイツ京都西大路ハミングサロン内
- 月・水曜午前10時~午後4時、火・金・土・日曜午前10時~午後7時
- 閲覧無料。貸し出しは会員登録500円が必要。最大3冊まで、2週間
- TEL:075(585)3258
大丸京都店8階レストランフロア「まんがの壁」
食欲そそる〝食まんが〟が大集合
2023年9月末にリニューアルオープンした「大丸京都店8階レストランフロア」。その一角を占めるのが食に関するまんがを集めた「まんがの壁」です。壁一面を埋める『美味しんぼ』(原作/雁屋哲、画/花咲アキラ、小学館)をはじめ、約3000冊ものまんがが自由に読め、屋上広場への持ち出しもOK。同フロアでの食事の前後はもちろん、まんが目当てで訪ねるのもよし。
大丸京都店 まんがの壁
- 京都市下京区四条通高倉西入立売西町79番地
- 午前11時~午後10時
- 無料(閲覧のみ)※飲食店への持ち込み不可
- TEL:075(211)8111(代表)
まちのコミュニティスペース クロス「こども図書室」
子どもたちの新たな居場所に
2023年4月、宇治市にオープンした「まちのコミュニティスペース クロス」は、館内の一室が「こども図書室」に。書架に絵本や児童書100冊前後を陳列し、定期的に入れ替えも行っています。室内はカーペット敷きで「日中は乳幼児と保護者の方がのんびりと、夕方は小中学生が楽しげに本を読んでいることが多いです」とスタッフ。
まちのコミュニティースペース クロス「こども」図書室
- 宇治市小倉町西山44-1
- 午前10時~午後5時、月曜休、臨時休館日あり
- 無料(閲覧のみ) ※入館登録が必要。小学1年生以下は保護者同伴
株式会社ウエダ本社
まちライブラリー@ウエダ本社/utena works
女性の生き方、働き方のヒントに
「まちライブラリー@ウエダ本社/utena works」は働く人と働く場をサポートする会社が母体。ライブラリーでは特に子育て中の女性の参考にと育児、地域、自己分析、働き方、起業といった多様なジャンルの書籍をそろえています。火曜の午前中、開館前に子連れで参加できる「わたしを知る」がテーマの〝お話会〟も開催。参加無料。
株式会社ウエダ本社
まちライブラリー@ウエダ本社/utena works
- 京都市下京区五条堺町角塩釜町363 株式会社ウエダ本社北ビル3階
- 火曜午後1時~3時、木曜午前10時~正午
- 無料(閲覧のみ)※公式LINE(ライン)での友だち登録が必要
- TEL:075(708)7739
京都府立植物園 「きのこ文庫」
巨大きのこの中に、本がびっしり
緑の森に、にょきにょきっと巨大なきのこの姿が! 京都府立植物園内、正門近くの「きのこ文庫」は1985年に設置された野外ライブラリー。きのこ形の書架から本を選び、そばのベンチに座って読めます。園内散策のあと、出会った草花について調べても。所蔵は子ども向けの絵本や図鑑など約3000冊。
京都府立植物園 「きのこ文庫」
- 京都市左京区下鴨半木町
- 午前9時~午後5時(入園は午後4時まで)
- 入園料要。大人200円・高校生150円・中学生以下無料(閲覧のみ)
- TEL:075(701)0141(代表)
京都芸術大学 「子ども図書館 ピッコリー」
蔵書多数、大人も利用できます
1978年の開設で、親子孫と3代にわたって通う家族も! 京都芸術大学内にある「子ども図書館 ピッコリー」は、乳幼児向けの絵本や小学校高学年が読む児童書など1万7000冊超を厳選して所蔵。保育・幼児教育に関する雑誌もあり、広く一般に開放されています。休止中のイベントは再開に向け準備中とのこと。
京都芸術大学 「子ども図書館 ピッコリー」
- 京都市左京区北白川瓜生山2-116
- 木・金曜午前10時30分~午後6時、土・日曜午後0時30分~6時
- 閲覧・貸し出し無料。※貸し出しは利用登録が必要。最大5冊まで、2週間。未就学児は保護者同伴
- TEL:075(791)8013
絵の本ひろば ここやねん
心地よく、人との関わりも育む
どこでも誰でも本を楽しめる〝ひろば〟
「絵の本ひろば ここやねん」は長岡京市から各所へ出張するライブラリー。公民館や保育所、学校、公園の一角に絵本や写真集、料理本などを持参。本の表紙が見えるように並べて目にも楽しい図書空間をつくっています。「表紙を見て自分で気になる本を選び、好きなように読んでもらえれば。笑い声をあげるのも自由です」と代表の小矢野由美さん。世代の違う人たちが自然と交わり、初対面の大人と子どもが一緒に本を読み出すこともあると言います。「誰もが楽しく居心地のいい場所で、人と関わる体験ができます。本が苦手な人も気軽に足を運んでみてください」。無料(閲覧のみ)。活動予定はフェイスブック(https://www.facebook.com/enohonhirobacokoynen)を参照
(2023年11月11日号より)
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