電車・バスにまつわるエピソード

2023年3月31日 

リビング編集部

電車・バスにまつわるエピソード

見知らぬ人や普段は関わりの少ない人とも、同じ空間を共有する電車やバスの中。そこでの出会いや出来事から、小さなドラマが生まれることも。読者が体験したエピソードを紹介します。

イラスト/オカモトチアキ ※2023年2月にリビング読者にアンケート。有効回答数938

感謝 あのときは「ありがとう!」

読者から集まったエピソードは938話。中でも多かったのが、乗客や乗務員に親切にしてもらったという体験談でした。今も感謝を伝えたいと思える出来事や、クスッと笑える和み話など。限られた空間だからこそ、人との関わりが温かく感じられることもあるのでは。

高校時代、バス通学をした雨の日。一番後ろの席に座りましたが、降りるころには満員で、私は自分のカバンが邪魔で全く前へ動けず…。すると、隣にいた男子高校生が大きな声で「この子降りまーす!」と叫び、他の乗客たちは頭上で私のカバンを前へ前へと送ってくれました。カバンがみんなの頭の上を移動していった光景は今でも忘れません。(KM、52歳)

妊娠中、検診からの帰り道に乗った電車内は混み合っていました。ギャルのような見た目の女子高校生二人組の斜め前に立つと、二人は私を見ながらこそこそと話し始めます。私は「ばかにされてるのかな」と少し悲しい気持ちに。ですが、急にその子たちが立ち上がり「ここ、どーぞでーす」と! 「どっちが席譲るか話してたんですう」と明るく話してくれた二人。人は見た目で判断してはいけないと改めて心に誓った出来事でした。(WY、50歳)

3月、手がかじかむぐらいまだ寒い日に、バス停でバスを待っていると雪が降ってきました。傘を持っていなかった私。頭に雪がどんどん積もっていく中、後ろにいたおばあさまが「一緒に入りましょう」と私を傘に入れてくれました。どんな温かい飲み物を飲むより、心が温かくなりました。(UM、38歳)

30年前、彼氏とのデートの後、電車に乗り、数カ月会えない寂しさで憂鬱(ゆううつ)になっていたときの話。いきなり私の座る椅子のクッションがずり落ちました。「体重が重いから?」と恥ずかしく思いながら腰掛け直して再び電車に揺られていると、なんと前の席にいたおばさまの椅子のクッションもズルリ。おばさまは「まるでドリフみたいね」と。会話が弾み、寂しさも一気になくなって。ちょっと笑えるエピソードでした。(OI、45歳)

心に残る出会いがありました

知り合いというわけではないけれど、通勤や通学で毎日顔を合わせる人がいますよね。ちょっとしたきっかけで親しみが持てたり。こちらは、そんな出会いから交流が生まれた話です。

引っ越しをした関係で、卒園までの3カ月間、子どもと市バスで通園していました。帰りのバス停でほぼ毎日会うおばあちゃんがいて、バスを待つ間おしゃべりする仲に。そして登園最終日。「今日で最後やったね? 小学校でも頑張って」と、子どもにお菓子とハンカチをプレゼントしてくれました。あれから7年、子どもはもう中学生になりましたが、今でもハンカチは現役です。(TM、38歳)

東京に住んでいた20年前。バス停のベンチで本を読んでいた私に、隣に立っていた中年の女性が「本が好きなんですか?」と。私が表紙を見せながら「はい」と答えると、その方は驚いて「私はその本を出版した会社に勤めている者です」と名刺をくださいました。その方は出版社の社長さんだったのです。乗り込んだバスも、降車する停留所も同じでさらにびっくり。車内では本の話に花が咲きました。東京での懐かしい思い出の一つです。(HY、44歳)

励まされました

大変な状況にあるときや、しんどい思いをしているとき、人の優しさに触れると励まされますね。また、気の利いた一言に元気をもらうこともあります。そんな励みになったという出来事もたくさん届きました。

妊娠中に乗った混み合う電車内。子連れの女性が席を譲ろうとしてくれました。お子さんがいるので断ったら、今度はその隣のお年寄りの方が席を譲ろうと。それも断ったら、子連れ夫婦の奥さんが旦那さんに「あんたが立ち!」と言って代わってくれました。降りるときは、みんなに「頑張って元気な子を産むんだよ!」と励まされ…。つらい妊娠生活で、初めて嬉しかった出来事でした。(KY、39歳)

とてもつらいことがあって、マフラーで顔を隠しながら電車内で声を出さずに泣いていました。駅に着き降りようとしたタイミングで、「これどうぞ」と見知らぬ方がくれたのはタブレット菓子。駅からの帰り道、優しさが身に染みました。(AA、35歳)

たまに遭遇するバスの運転手さん。その日の天気などに合わせたアナウンスをしていました。例えば、「あいにくの雨ですが、足元に気をつけて今日も一日頑張りましょう」など。その運転手さんのバスに乗れると「今日はいいことありそう。ラッキー!」と思っていました。(NT、37歳)

大雪が降った日。定刻に来ないバスを待つ人たちみんなに、いつの間にか結束力がうまれ、後から来た人を「こっちで待つと良いよ」と呼び寄せたり、「○○行きは動いているみたい」と情報共有したりしていました。何分遅れているかがわかるだけでも励みになりました。(WN、51歳)

気遣い上手

さりげなく人のために行動できる人。見返りを求めない姿は、見ていると気持ちが良いもの。集まった数々の〝気遣い上手さん〟の話、見習いたくなりそうです。

朝、通勤電車から降りる駅でのこと。毎日誰かが同じ駅で降りる視覚障がいのある方を、改札口まで誘導します。私が付き添ったこともあります。誰かが決めたわけでもなく、暗黙の了解でしているところがいいなと思います。(YH、48歳)

子どもが小さいとき、電車の先頭車両で一番前の窓から前方を見るのが恒例でした。ある日、車内は人が多く諦めていたところ、こわもての男性が静かに子どもたちを景色が見える場所へと誘導してくれて。とてもありがたかったです。(UR、44歳)

電車内でおばあさんが立っていると、座っていた少年が 「どうぞ。僕、次の駅で降りますから」と席を譲りました。駅に着くと少年は降りましたが、 隣の車両に再び乗り込むではないですか。それを見ていた幼児が母親に、「お兄ちゃん、降りたのに何でまた隣へ乗ったの?」と。車内の人みんながほほ笑んで、温かい空気に包まれました。「何でやろね? 何でやと思う?」と、子どもにああだこうだと説明しないお母さんもほほ笑ましかったです。(NS、61歳)

バスに乗っていると、白杖を持った男性が乗ってきました。女性の運転手さんが「もう少し左に席があります」と男性を名指しせず伝わるよう、優先座席に導いていました。近くにいた乗客が席を譲ると、運転手さんはその乗客が降りる際、「先ほどはありがとうございました」と声をかけていました。運転手さんと乗客の気遣いに感動しました。(NA、25歳)

意外な発見!

電車に乗っていないと知らなかったこと、気が付かなかったことなど、さまざまな発見に驚いたというエピソードも。普段とは違った環境になることで、意外な一面が見えたりするのかもしれません。

普段は無愛想な上司と電車で出張に。途中で子連れの夫婦が乗ってきましたが、子どもがぐずりそうに。すると、(子どもと)目の合った上司がニコニコと手を振ったり、いないいないばあをして遊んであげるではないですか。子どもは泣くことなく、私たちは電車を降りました。それ以降、(上司が)本当は優しい人だと分かり、さまざまな相談ができるようになりました。その様子を見た他のメンバーも相談しやすくなったようで、職場の雰囲気がとても良くなりました。(UK、37歳)

ドクターイエロー(※)を見るべく、息子と何日も前から計画。やっと出合えたと思っていたら、同じような親子の多さにびっくり! 停車時間は3分ほどでしたが、子どもたちはドクターイエローのグッズを何かしら身に着けていてかわいいし、みんなが笑って喜んでいて。テーマパークにいるような雰囲気の中、撮った写真にもみんなが写り込んで、華やかになりました。(NK、36歳)

※新幹線の線路や電気設備などの状態を測定する事業用試験車。〝黄色い新幹線〟として知られます

編集後記
記者も学生時代、制服を着て電車に乗ると、同じ学校の卒業生という方によく話しかけられ、降りるまで話をした思い出が。小さなドラマを生むのは、見知らぬ誰かかあなたか…。次の乗車が楽しみになりますね。

(2023年4月1日号より)