ロコモ予防にも。座りっぱなしにご注意を

2022年2月18日 

リビング編集部

「気が付いたら何時間も座りっぱなしだった」。そんな人は、健康リスクが高まるそう。体への影響などを探ってみました。

イラスト/松元まり子

近ごろ、座っている時間の長さと健康リスクの関係が、多くのメディアで取り上げられるようになりました。

「2020年に世界保健機構が発表した『WHO身体活動・座位行動ガイドライン』でも、座りすぎで不健康になると記載され、注目されました」とは、京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の講師・小山晃英先生。

座りっぱなしが体に与える影響を、対策法も含めて教えてもらいました。

将来介護が必要なリスクが高まる〝ロコモティブシンドローム〟との関係についても聞いていますよ。

肉を動かさないことで血行不良に

「歩いたり腕を曲げたりなど、体が動くのは筋肉が伸び縮みするから。

ところが、座っているとその動作が完全にオフになります。筋肉は動かすと、その周りの血管の収縮と拡張が自動的に行われますが、それがストップすると、血流が悪くなります。

さらに座っている時間が長いと、いすに接している背中やお尻、足といった部分に圧がかかって血管が縮こまってしまい、これも血流が悪くなる原因の一つに。

冬場に、家でじっといすに座っていると足先が冷たくなってくるのはこのせいです。逆に、歩いたりして筋肉を動かすと、血の巡りがよくなり、体がぽかぽかしてきますね」

活習慣病のリスクも

血流が悪くなることで、病気の心配もでてきます。

「血行不良と筋肉を動かさないことによる新陳代謝の低下、すなわち活動量の低下が、高血圧や糖質異常症、糖尿病といった基礎疾患といわれる生活習慣病、さらには循環器疾患やがんにも関わることが、多くの論文などで発表されています」と、小山先生。

「国内の35~69歳の男女約6万人を7年ほど追跡した私たちの研究では、日中の座っている時間が2時間増えるごとに、死亡リスクが15・3%増加することが認められました。さらに、生活習慣病のリスクのある人ほど、より顕著であることも分かっています。

また、普段座っている時間が長いからと、余暇時間(仕事をしていないとき)にジムに行くなど運動活動量を増やしても、これらのリスクはなくならないことも明らかになりました」

平日の座りすぎを解消するために、休日にまとめて運動してもだめなんですね。

2011年に行われた国際調査によると、平日に座っている時間が最も短い国はポルトガルで2・5時間でした。では日本はというと、7時間と世界一長いという報告もあります。

「健康な体づくりには運動や睡眠、食事が大切といわれますが、座っている時間が長くならないということも、意識するように心掛けてください」

来〝ロコモ〟にならないためには、今から座る時間の意識を

座りっぱなしによる筋力の低下などで気になるのが、将来、〝ロコモ〟になるのではということ。

「〝ロコモ〟とは、移動するための能力が不足したり、衰えたりなど、移動機能が低下した状態を指します。

今私たちが行っている、40~65歳のロコモを発症する前の年代を対象にした転倒するリスクについての研究によると、脂肪や筋肉の量に関わらず、座っている時間が長くなればなるほど、転倒するリスクが増加するというデータが出ています。

座っていることが、骨や筋肉、軟骨・神経といった体を動かす運動器を衰えさせることにつながるのでは、と考えられます。

ロコモにならないためにも、腰も膝も痛くない比較的若い段階から、座りっぱなしに気を付けるという生活習慣を、インプットしておくことをおすすめします」

ロコモ〟ってなに?

〝ロコモ〟とは、「ロコモティブシンドローム」の略語。運動器症候群とも言い、自分がロコモかどうかは、さまざまな質問やテストの結果で判断されます。

加齢などにより、運動器の働きが衰えると、転倒や骨折、関節の病気になる危険性もアップ。将来、介護が必要になったり、寝たきりになる可能性も高くなるとされています。

15~20分を目安に動いて、座りっぱなしの時間を短く

対策法などがあれば教えてください。

「座っている時間をいきなり減らすというのは、皆さん難しいと思います。ですので、〝座っている時間を中断する〟ということをこまめに取り入れていただきたいと思います。

職場で自由に立ち上がれなかったり、テレビやスマートフォンを見ていて長い間座ったままというときは、座りながらでもストレッチを取り入れたり、足を冷やさないことがポイントです。加えて、できる範囲でいいので体を伸ばしましょう。適度に刺激を与えることで筋肉が動き、血流が良くなります」

これ以上座らない方がいいよ、といった目安はありますか?

「冬場なら、座り始めて20~30分動かないと足が冷えてくると思いますが、それが目安かと。痛みがある方は別ですが、座り始めて15~20分くらいで動いたり、ストレッチをしてください。

何より、こまめに自分で気づき、意識して動くことが大切です。とはいえ、ついつい長く座ってしまうという方も多いと思います。そんな方は、パソコンやスマホのアラーム機能を利用するのもいいですね」

教えてくれたのは

京都府立医科大学 大学院医学研究科
地域保健医療疫学講師
小山晃英先生

「座っている時間が長ければ、こまめに動いて座っている時間を減らすことが重要です。オフィスなどでは、座ったまま膝下を上げるストレッチなども有効です。座りすぎによる血流障害や筋肉の衰えを防ぎ、健康寿命を延ばしましょう」

取り入れたい!

かんたんストレッチ

座っている合間に取り入れたいストレッチを紹介します。家庭編・オフィス編があるので、チャレンジしてみて

教えてくれたのは

リビングカルチャー倶楽部
「Happy Feel ヨガ」
インストラクター
山脇ミサさん

家 庭 編アキレス腱を伸ばそう

足を肩幅に開いて立ち、写真のように右足を半歩後ろに引いて、左足の膝を曲げて右のふくらはぎを10秒ほど伸ばす

そのまま右膝を曲げて、右のアキレス腱と前足首をストレッチ。同様に反対の足も行う

Point

②のとき、右足のかかとが床から離れないように。足がむくみやすい人にもおすすめ

オフィス編座ったまま血流アップ

いすに浅く座り、右膝の裏を左膝の上にのせて力を入れながらギューッと右膝裏を圧迫させる

その後、右膝裏を同じ場所でトントンとたたくように上下させる。同様に反対の足も行う

Point

①で足の血流を止め、②で流すイメージで行ってみましょう。机の下でもやってみて

(2022年2月19日号より)