子どもたちが住みたい「未来の家」とは? 幼児から小学生までを対象に絵を募集したところ、夢いっぱいアイデア満載の絵がたくさん寄せられました。その中から、5人の絵に注目! 立命館大学理工学部建築都市デザイン学科教授の平尾和洋さんと京都美術工芸大学工芸学部建築学科助教の中村卓さんに、絵を見てもらいました。
屋上には、太陽光発電のパネルや風力発電のための風車。建物の右側に流れる水路には、水力発電のための水車も描かれています。「空気を汚さず、エネルギーを作って生活できる環境にやさしい家を考えました」と鈴木絆太(はんた)くん。実はこの家は雲の上に建っているそう。そもそも「雲の上に行けたらいいな」と思って描いたとか。
「発想がおもしろい」と平尾和洋さん。一方で「ドイツや北欧では当たり前になっている風力発電や太陽光発電が、この絵では住宅に採用されています。知識があり、よく考えられていますね。雨水の利用は日本でもすでに行われていますが、雨による発電技術はまだ聞いたことがありません。この技術が開発されればすごい」。さらに、「近年は、ゼロエミッション(資源循環型の社会システム)やライフサイクルコスト(構造物の生涯費用)といった〝環境技術〟が科学的な面からも注目されているんですよ」とのこと。
「大きくなったら宇宙に行く」と話す籔内理貴(まさき)くんが描いたのは、青い線で囲まれた丸い透明の空間の中に浮かぶ家。青い線とからむ茶色の線は〝風〟で、空間を守る役割なのだそう。黄色やオレンジ色の星もきらめいています。
中村卓さんは、「周囲の環境を考えながら家のデザインを描く方法は、実は、プロと同じ手法なんですよ」と感心しきり。「透明で軽やかな空間を実現するには、青い線の部分の素材が必要。将来、開発されて『マル』と命名されたらすてきですね」
また、「ホッとするような暖色のピンク色で描かれた家は、〝暖かな家庭〟という大切なメッセージが込められているように思います」。理貴くんはこの家で「宇宙を見たい。金星に行きたい」と思っているそう。中村さんは、「この家ならではのおもしろい過ごし方があり、それがこの家に大きな付加価値を与えています。この考え方は、大人にとっても勉強になります」。
鈴木粋歩(すいほ)くんが描いた家は、外付けの上り専用のエレベーターと下り専用の滑り台あり。何だか楽しそうです。「窓がたくさんあるので10階建てくらいでしょうか。(左側の)滑り台は、直線だとスピードが出過ぎて危険ですが、大きく蛇行しているおかげでスピードが調整され安全性が保たれていますね」(平尾さん)
四角い窓は、お客さんがゆっくりと夜空を眺めるためのもの。「建築は、太古の昔から、『太陽が昇り夜には星が出る』という自然で単純な事実に向き合ってきました。天体にあこがれる視点に、建築の本質的なことを思い起こさせられました」
この絵を、教育・研究機関向けの天体望遠鏡・ドームなどを設計・施工する西村製作所の広報・泥(なずみ)弥生さんにも見てもらいました。「望遠鏡での観測は振動を嫌います。がっしりとした頑丈そうな建物は、星の観測のことをよく考えていると感心しました。雨が降ったときは、自動でドームの扉が閉まるようにするといいですよ」