美しく花を咲かせ、人々を魅了する桜。古くから〝花〟といえば桜を指すように、日本人に愛され続けてきました。今回は、そんな桜の奥深さを探ることに。栽培、歴史、食など、さまざまな角度から知り、春を楽しみましょう。
「桜は手をかけただけ、きれいに花を咲かせてくれます」。そう話すのは、京都府立植物園の樹木医・中井貞さん。同園の桜守を務めています。
「桜の木は傷つくと腐りやすいので、注意して丁寧に剪定(せんてい)を行っています。冬の間に力を入れるのが、肥料を加えたり、水や空気を通りやすくしたりといった土の改良。手入れによって、花の美しさも変わってきます」
取材に訪れたのは1月下旬。もちろん桜が咲くのはまだ…かと思いきや、園内の桜林にはちらほらと花をつける木が。
「秋から4月まで咲き続ける桜で『不断桜』といいます。隣の梅のような桜は『エレガンスみゆき』という種類。こちらも春まで咲くんですよ」
このように、園内には珍しい種類も多数。どのくらいの品種がそろうのでしょうか。
「園内で見られるのは約160品種。当園だけが所有する品種もあります。そんな桜の多様性を知ってほしいですね」
桜の品種を次世代に残すには、種からではなく接ぎ木で増やすことが必要。手を打たなければ失われてしまう桜を保護するため、植物園では品種の保全にも積極的に取り組んでいます。それには〝京都〟という土地柄も関係あるようで…。
「都が置かれた京都には、全国からさまざまな桜が集められました。寺社が名木を残してきたこともあり、桜の名所がたくさんあります。京都ならではの品種を大事にし、桜の文化を守っていきたいです」