健康と大きく関わっている舌の筋力は、加齢だけではなく口腔内の疾患(がんなど)や歯の喪失などで物が食べられない状態が続いても低下していくそう。使わないと衰えるのは、全身の筋肉と同じなのですね。
「今までよりもしゃべりにくくなった、舌をかむようになった。これらは、筋力低下のサインといえるかもしれませんが、客観的に調べられる方法もあります」(大迫さん)
それが、歯科医院で受けられる舌圧検査です。
「舌を歯の内側に押し付けたときの圧力をはかることで、筋力が十分にあるかがわかります」
食べ物を喉に流し込む力があるか、舌がきちんと機能しているかなどが数値でわかるので、一つの目安になりそうです。
もし筋力が低下しているという結果が出たら、〝舌の筋トレ〟に挑戦してみましょう。※下記参照
「自宅で簡単にできるトレーニングです。今後のために鍛えておきたい人にもおすすめです」
「いずれのトレーニングも、何セットするなど決める必要はありません。疲れない程度、休みながら繰り返し、徐々に回数を増やしていけばいいでしょう」
続いて紹介する舌の機能は、〝味を感じるセンサー〟としての働きです。
舌の表面には目に見えないほど小さな、多数の味蕾(みらい)と呼ばれる突起があります。味蕾は甘みや苦味、酸味といった味を判断する細胞の集まり。この細胞の働きが鈍くなることで、味を感じなくなったり、感じにくくなったりする味覚障害が起こります。
「味蕾の働きが悪くなる原因はいくつか考えられます。例えば、唾液が分泌しないことで口の中が乾燥すること。これは、血圧を下げる薬やアレルギーの薬などの副作用でもみられる症状です。また、亜鉛の欠乏も原因といわれています」と大迫さん。亜鉛はカキやレバーに多く含まれているので、積極的に取りたいですね。
もう一つ、味蕾の働きに影響を及ぼすのが、〝舌苔(ぜったい)〟と呼ばれる白っぽい舌の汚れ。細菌の固まりなのだそう。
「舌苔は口臭の原因にもなるので、舌の表面を常に清潔にしておきましょう」
大迫さんは続けて、「大切なのは、普段の舌の色を把握しておくこと 」と話します。
「そこを認識していないと、舌苔で白くなっていても比較できませんから。舌の色でいうと、黒っぽくなっている場合はカビに感染している場合があるので要注意です。健康チェックのためにも普段、どんな色をしているのか意識しておきましょう」
「舌苔を取り除こうと歯ブラシで舌を磨く人もいますが、これは舌を傷つけてしまう恐れがあります。市販されている舌ブラシを使用しましょう。使うタイミングは、朝一番。寝ている間はどうしても唾液の分泌量が減り、乾燥もします。自浄性が悪くなると舌苔が付きやすいので、起きてすぐがおすすめです。ポイントは〝やり過ぎないこと〟。何回も、力強くこすると舌を傷つけて炎症を起こす可能性があります。ブラシに汚れがつかなくなったらOKですよ」(大迫さん)
昨年、女性タレントが罹患(りかん)したことにより、注目を集めた舌がん。日本口腔外科学会によると、舌がんは口腔内にできるがん(口腔がん)の中でも発生頻度がもっとも高く、口腔がんの約40%を占めるのだとか。
「舌がんになる理由ははっきりとはわかっていません。ですが、喫煙の習慣がある人や、合っていない入れ歯や歯並びの悪さなどで慢性的な刺激を受けている人はなりやすいといわれています。生活習慣を見直したり、刺激を除去するよう心がけてください」
では、どのような症状があれば注意が必要でしょうか。
「2週間たっても治らない口内炎のようなものがあること。ほかには、舌の一部が白くなっていたり、赤く腫れている場合も、自己判断ではなく歯科や耳鼻科を受診しましょう」
変化に気付くためには、やはり普段の舌の状態を把握しておくことが大切。かかりつけ医での検診も定期的に行いたいですね。
毎月1回、口の中をチェックしましょう!
上記は、舌がんを含む口腔がんのセルフチェック法です
出典元:(公社)日本口腔外科学会HP 「口腔外科相談室 お口のトラブル相談室」より