ふくよかで愛嬌(あいきょう)のある、金色のネズミの像。上京区の善行院で出あえます。
京都御所の紫宸殿を中心にして、京都市内の十二支の方角に妙見大菩薩をまつる「洛陽十二支妙見」。善行院はその一つで、子の方角、つまり北に位置しています。
住職の児玉純人さんが案内してくれたのは、境内北側の妙見堂。こちらに、招福の願いが込められた金色のネズミ像「福子(ふくこ)」が置かれていました。
「開運や厄よけ祈願に、〝福子〟にも触ってお参りしていただけたら。子は十二支の最初なので、当院から12カ所を回る『洛陽十二支妙見めぐり』を始める方も多いです」(児玉さん)
■上京区上御霊前通新町西入ル妙顕寺前町514(地下鉄「鞍馬口」駅から徒歩10分)、TEL:075(451)4182。午前9時〜午後4時 ※2020年1月1日(祝・水)は午前0時から水行、祈祷(きとう)を実施。一般の人も参加可
朱色が鮮やかな楼門、そして続く中門(ちゅうもん)の先へ。右には「ね」、左には「たつ・さる」。本殿の手前にある七つの社が、干支の神様として親しまれる下鴨神社の末社「言社」です。
境内は今年の干支や、生まれ年の干支にお参りする人でにぎわいます。こうして参拝できるようになったのは昭和に入ってから。
下鴨神社・広報の東良勝文さんは「昔は中門の内側には一般の方は入れませんでした。由来については北斗七星に関連があるといわれていますが、詳しくは伝わっていません」。歴史が古くて分からないのも「どんな理由があったのだろう」と想像が膨らみますね。
祭神・大国主命は複数の名前を持つ神。子の社では〝大国主命〟ですが、丑・亥では〝大物主命(おおものぬしのみこと)〟など、ほかの社には別名でまつられています。
■左京区下鴨泉川町59(市バス「下鴨神社前」停からすぐ)、TEL:075(781)0010。午前6時30分〜午後5時 ※2020年1月1日(祝・水)は午前0時〜午後6時30分
ネズミからイノシシまで、十二支が勢ぞろい。小倉神社から天王山へと続く坂に並ぶのが「十二支石像」です。
718年に創建、平安京遷都の際には御所の鬼門よけとして祈願されたという小倉神社。子の像は横向きで、耳が小さめなのが個性的。ほかにもヘビは竹に巻き付いていたり、サルは木の実を取ろうとしていたり。細かい彫刻が施されているなど、いずれもユニークなデザインです。
宮司の榎本和彦さんによると、「十二支の像を置くようになったのは十数年前。手水所の亀や竜の石像を手掛けた石材店さんが造ってくれたものです」とのこと。本殿手前の手水所へ行ってみると、亀と竜の石像を発見! 表情などに、十二支と似た雰囲気が感じられますよ。
■大山崎町円明寺鳥居前83(阪急バス「西乙訓高校前」停から徒歩10分)、TEL:075(956)2044。参拝自由
十二支やネズミにまつわる話を教えてくれたのは、京都産業大学教授の村上忠喜さん。
「十二支の起源は中国。もとは漢字を並べた数遊びの要素が強かったと考えられます。後に〝子〟は〝ネズミ〟など身近な動物を当てはめるように。日本だと〝亥〟はイノシシですが、中国ではブタという違いがあります。日本に十二支が伝わったのは平安時代以前のこと。方角や暦、時間を十二支で表すようになりました。
多産なネズミは子孫繁栄の象徴です。『鼠浄土(ねずみじょうど)』という地下の〝ネズミの国〟で福を授かるという昔話も。九州などにはネズミが海を渡ってくるとの話も伝わっていて、いずれもネズミと異界との関係性を感じさせます。『下京では、部屋を間借りしている人がその家のネズミを殺すと引っ越しをしなければならなくなる』という伝承から分かるのは、家や土地との結び付き。昔は頻繁に家にネズミが出たため、その土地に住む神とのイメージが生まれたのでしょう」