秋から冬にかけて増えてくる風邪やインフルエンザといったウイルス性の感染症。家族の一人がかかってしまうと、どんどん他の人に感染して一家全滅…、ということも。家族間感染を防ぐための対策や注意点を専門家に教えてもらいました。
京都府立医科大学 感染制御・
検査医学 病院教授
同附属病院 感染症科・
臨床検査部・感染対策部 部長
藤田直久さん
「秋・冬にかかりやすい感染症といえば、インフルエンザ、風邪症候群などのウイルス性の呼吸器感染症です」とは、京都府立医科大学病院教授で、同附属病院感染対策部部長の藤田直久さん。
「一般にインフルエンザは12月頃からはやり始め、3月頃まで続きます。幅広い世代に発症するので、家族みんなで気をつけてほしいですね。急な発熱などの全身症状と同時に、咳(せき)やのどの痛みといった気道症状が現れるのが特徴です」
風邪症候群、いわゆる〝風邪〟を引き起こすウイルスは、ライノウイルス、コロナウイルスなどさまざま。赤ちゃんがいる家庭で特に用心してほしいというのが、RSウイルス感染症です。
「多くは軽症で発熱、のどの痛み、咳、鼻水といった症状が出ます。成人も感染しますが、乳幼児は重症化しやすく、細気管支炎や肺炎になり呼吸困難に至ることもあります」
激しい嘔吐(おうと)や下痢が生じる感染性胃腸炎にも要注意。ノロウイルス感染症は年齢に関係なく発症し、ロタウイルス感染症は乳幼児に多く見られます。
「ロタウイルスでは、乳幼児が脳症を起こす例に加えて死亡例も出ています。いずれも体力の低い子どもや高齢者がかかれば重症化する恐れがあるので注意。ロタウイルスは乳児向けのワクチンがありますので接種を」
では、これらの病気は、どのようにして感染するのでしょうか。〝飛沫(ひまつ)感染〟と〝接触感染〟が、インフルエンザ、風邪症候群などの主な原因だといいます。
「感染者の咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込むことによる感染を『飛沫感染』と呼びます」(藤田さん)
一方、〝接触感染〟とは、ウイルスに汚染された人の手やつり革などを触ることで、手についたウイルスが口から体内に侵入して感染すること。
「嘔吐や下痢を主症状とするノロウイルス、ロタウイルスといったウイルス性胃腸炎は、主に目に見えない程度の吐物や便を介した『接触感染』によりうつります。基本的には飛沫感染はしませんが、嘔吐物を長時間放置すると、乾燥した嘔吐物が空気中に漂い、それを吸い込むことで感染するリスクがあります。嘔吐物は速やかに処理しましょう」
家族間感染を防ぐためには、感染経路に応じた対策を実践する必要があるとのこと。2面では、具体的な対策やアドバイスを紹介します。