家族間感染を防ぐためにどんな対策をしているかをリビング読者に聞いたところ、多数が「手洗い」と一緒に実践していた「うがい」。ところが、藤田さんによると、実はうがいの効果に関する研究データは少なく、有効かどうか判断できないといいます。「手などを介して口に入ったウイルスは10分程度で体内に入るので、期待するほどの効果はないのではと思います」
また、多かったのが「寝る場所を別にする」という対策。これに対しては「病院で感染症の患者を隔離するのと同じですから、対策としては有効。可能なら実践するといいでしょう」。
「マスクは二重にして、寝るときもずっと着けていました」(NU・33歳)には、「二重にしても効果が増すわけではありません。1枚のマスクをきちんと着けることの方が大事」との答えが。
「子どもはマスクも嫌がるし、寝る部屋を別々にはできないので難しいところ」(KR・36歳)という悩みも。「正しい方法でこまめに手を洗い、むやみに手を顔に持っていかないこと。これに気をつけるだけでも感染しにくいはず」とアドバイスしてくれました。
家族の誰かが感染した場合でも、適切な対策をすれば、ウイルスの広がりを抑えることができるそう。秋・冬に流行する主な感染症の対策を、藤田さんが教えてくれました。「すべてに共通」「呼吸器感染症」「感染性胃腸炎」の三つのカテゴリーに分けて紹介します。
感染予防の基本は、手に付着したウイルスが室内や体内に侵入するのを防ぐこと。外から帰ったとき、トイレの後、食事の前に、必ず手を洗いましょう。指輪や腕時計は外した上で、せっけんをしっかり泡立て、手の平と甲、指はもちろん、指の間、爪の先、手首まで入念に洗い、よく洗い流すのが正しい方法です。
濡れた手にはウイルスがつきやすいので、洗った後は、乾いたタオルで水分を残さず拭き取って乾かすことが大切。正しく手洗いをしてよく乾かすことが、最も効果的な感染予防策といえます。
誰かが感染症にかかったら、リビングルームなど家族が過ごす環境を清浄化して、ウイルスを広げないようにしましょう。呼吸器感染症の場合はアルコール、感染性胃腸炎の場合は、0.02%の次亜塩素酸ナトリウム(※1)を含ませた布で、ドアノブ、手すり、家具、複数の子どもが触るおもちゃ類などを拭いて消毒します。なお、金属に次亜塩素酸ナトリウムを使った場合は、腐食しないよう10分後に水拭きを。
(※1)次亜塩素酸ナトリウムを含んだ市販の漂白剤を薄めて使用。塩素濃度約5%の漂白剤の場合、2ℓの水に原液10mlを加えると0.02%になります
咳やくしゃみといった症状が出ている人がいる場合は、家族全員がマスクを着けることで、飛沫感染を防ぐことができます。ただし、ガーゼのマスクは水分を通してしまうので、ウイルスの侵入を十分に遮断できません。不織布製の使い捨てサージカルマスクを選んで。必要なときにだけ着用するようにしましょう。
サージカルマスクを装着するときは、マスクの鼻の部分のワイヤーをきちんと曲げて隙間ができないようフィットさせ、プリーツを伸ばして顎の下まで入れます。着けたらむやみにマスクに触らないことも大事です。
食事中など、マスクを着けられないときに咳やくしゃみが出そうになったら、口と鼻をティッシュかハンカチで覆うか、服の袖で覆う「咳エチケット」の実践を。手で口と鼻を覆っても、その手で周りの物やドアノブを触れば感染の原因になります。
感染性胃腸炎にかかっている人の嘔吐物を処理する際や、使った後のトイレを掃除する際には、使い捨ての手袋を着用するのが鉄則。素手だと手を洗っても大量のウイルスが完全にとりきれないのです。なお、処理時に汚物が飛散することが予測されるのでマスクも着用しましょう。
処理後は、床などを0.1%の次亜塩素酸ナトリウム(※2)を染み込ませた布などで浸すように拭いて消毒し、10分後に水拭きします。掃除に使った布や手袋はポリ袋に入れて廃棄。衣類は汚れを落としてから、85℃の熱湯で1分間以上、または0.02%次亜塩素酸ナトリウム(作り方は上記※1参照)に30分ほど浸して消毒を。汚物処理後はせっけんと流水で手を洗うことを忘れずに。
(※2)塩素濃度約5%の市販の漂白剤の場合、500mlの水に原液10mlで0.1%の次亜塩素酸ナトリウムができます