前のページで紹介した「皮脂欠乏症」までいかなくても、手がかゆい、顔がかゆい、足がかゆい…、ということは日常茶飯事。しかし、これらのかゆみのメカニズムは、まだはっきりと解明されていないのだとか。
清水平さんによると「現在わかっていることは、皮膚の中にある〝肥満細胞〟が何らかの刺激を受けることで、かゆみを引き起こす物質〝ヒスタミン〟を出すということです。ちなみに、肥満細胞とは、肥満しているかのように大きいため、そう名付けられているだけで、肥満体形とは関係ありませんよ」。
かゆみを引き起こす〝何らかの刺激〟というのも気になります。
「刺激の一つとして、『皮脂欠乏症』をはじめとするアトピー性皮膚炎などの皮膚の病気があります。また、内臓の病気が、かゆみを引き起こすこともあります」
肝臓が悪くなると、白目や手が黄色くなる、いわゆる〝黄疸〟の症状が出ることは知られていますが、この症状と全身のかゆみは併せて出ることがあるのだとか。腎臓の病気とかゆみも関わりがあると清水平さん。ただ、こちらは慢性腎障害や透析を行った際の合併症として起こるので、腎臓が悪くなったからすぐにかゆみが出るというわけではないとのこと。
そのほか、薬や化学物質(金属)のアレルギー、毛染めの薬品や化粧品 によるかぶれでかゆくなることも。自分の肌に合うものを選ぶことが大切ですね。
こうしたかゆみの原因物質を特定するために役立つのが、皮膚科で行われているパッチテスト。金属や医薬品、樹脂(化粧品やアロマオイルなど)、ゴム、染料など、かゆみを引き起こすものがわかります。
「テスト自体はいつでも受けられますが、テストを受ける間は2日間入浴禁止、大汗をかいてはいけないなどの条件があります。ですので、夏場よりもこれからの季節の方が向いているかもしれませんね」(清水平さん)
肥満細胞が刺激され、かゆみが生じるということはわかりましたが、それでもかゆいときはかゆい!そんなときはどうすれば…?
「大切なのは、かかないこと。かくことで快感が得られ、その刺激でかゆみがまぎれます。ですが、かいてしまうと皮膚の表面が荒れて、ちょっとした刺激にも過敏になります。そうすると、さらにかゆくなる、またかく…、という悪循環に陥ってしまうんです」
そこで有効なのが、冷やすことなのだそう。
「流水で冷やしてもいいですし、タオルを水にぬらして患部に当ててもOK。ただし、冷やし過ぎには注意を」
ここで疑問。そもそもかゆみを予防する方法はあるのでしょうか。
「大切なのは〝保湿〟です。乾燥の時期だけではなく、一年を通して保湿を心がけましょう。皮脂欠乏症の予防や対策にも役立ちます」と清水平さん。
「保湿剤は継続して使うためにも、自分に合うものを選びましょう。しっとり系かさっぱり系など質感で選んでもOK。好きな香りのものなら、楽しみながら続けられそうですね。
使用量は、塗った後にティッシュが肌に付くくらいが目安。皮膚がてかる程度に塗るといいですよ」
また、皮脂を流し過ぎないように、熱いお風呂や長風呂もNG。体を洗うときはナイロンタオルなどでゴシゴシと洗うのではなく、綿などの刺激になりにくいタオルでやさしく洗うのがいいそう。
「せっけんをよく泡立てて、手で洗ってもいいですよ」
そのほか、衣類選びにもポイントが。
「保湿機能のある下着もいいと思います。直接肌に触れる衣類はチクチクしない、刺激の少ないものを選びましょう」
保湿剤は清潔な手に取り、肌に少しずつおいていきます。手のひらを使ってやさしく丁寧に、広い範囲に塗りましょう。すりこまないようにするのもポイント。
夏に紫外線を受けてダメージを受けた肌。空気が乾燥する秋から冬に向けて、肌にこれ以上の負担をかけないようにする方法については、あや皮フ科クリニックの山口綾さんに聞きました。
あや皮フ科クリニックの山口綾さん
「シャワーの水量・水圧にも注意してください。あまり強いと、それも肌には刺激になります」
「キーワードは二つ。まずは紫外線対策です。秋とはいえ、紫外線は降り注いでいます。特に、曇っている日でも室内でも肌に届く、紫外線A波と呼ばれる〝UVA〟がくせ者。肌の中の真皮にまで到達し、細胞を傷つけてしまいます。これにより、シワやシミができやすくなるんです」
秋だからと油断せず、しっかりと日焼け止めを塗っておきたいですね。
「そして、二つ目が保湿です」。ここでも、保湿という言葉が出てきました。
「夏、ダメージを受けた肌は乾燥しがち。化粧水や乳液、クリームなどでしっかりと保湿をしましょう。優しく包み込むように塗るといいですよ。こするとシミやシワの原因になるので注意を」
洗顔時は洗いすぎないのもポイント。朝は水かぬるま湯で十分だそう。