今後は英語にまつわる新たな動きも。日本社会の特徴や、今後の英語との向き合い方について、1面に引き続き京都外国語大学教授・杉本さんに話を聞きました。
そもそも、英語が苦手な日本人が多いのはなぜなのでしょうか。杉本さんは、日本社会の特徴が関わっていると言います。
「日本社会は日本語が話せれば事足ります。使う必要がないために、英語が不得手な人が多いのです。フィリピンなどのように、母語のほか第2言語として英語を使用するような社会とは違っています」
さらに関係しているというのが、日本人の性格です。
「〝英語は下手だから〟と恥ずかしがって話そうとしない傾向があります。ネーティブの完璧な会話への憧れが強いのかもしれませんね。自主的に話さないので、上達のチャンスを逃してしまっています」
そんな日本人の英語力を向上させる目的で、2020年に実施されるのが英語教育の改革。小学校3年生から「体験型学習」という形で英語教育が始まります。
「小学5年生からは教科としての英語を学習することに。中学校や高校では、英語の授業は基本的に英語で行われます」(杉本さん)
大学入学共通テストは「読む、書く、聞く、話す」の4技能で評価。英語がこれまで以上に重視されるのですね。
「1500時間以上英語に触れないと、日常のコミュニケーションは取れないといわれています。小学校から高校までで英語に接する時間は改革後でも1000時間に満たないので、授業だけでマスターするのは難しいでしょう。ですが、英語への関心を高めるきっかけにはなるはずです」
そうした動きがある半面、翻訳機や翻訳アプリに頼れば、英語が話せなくても困らないという意見もみられます。
「海外旅行をするときなどに便利ですよね。今後はさらに技術が進化するでしょうし、うまく活用してみてください」(杉本さん)
ただし、日常的に使うには課題もあるよう。
「翻訳するまでにはどうしても数秒は必要。同時通訳というわけにはいきません。会話は3秒間沈黙すると違和感が出てしまいます。友達同士で気軽に会話をするなら、翻訳機に頼りきりにならず、自分の言葉で話すことも大切です」
近年では仕事で日本に来る外国人も増加。それに伴い、英語スキルの必要性を感じる場面も多くなりました。
「外国人と接する機会は今後も増えると思います。翻訳機を取り入れつつ、簡単な言葉は積極的に話し、英語に慣れていってもらえたら」
「苦手だから今さら勉強なんて…」と思っていても、最低限の英語が分かれば役立つ機会も多いもの。読者の声と合わせ、ケース別のアドバイスを杉本さんが紹介してくれましたよ。
という人へ
「具体的な学習法としておすすめなのが、リスニングと音読の繰り返しです。まずは英語を聞き取り、その後文字を見て聞き直してください。意味を理解したら、音声に合わせて音読を。回数を重ねるうちに聞き取れるようになり、発音も上達すると思います」
という人へ
「大切なのは日々の心がけ。テレビやラジオの英語の番組を視聴させるなど、日頃からネーティブの英語に触れる機会をつくるようにしましょう。子どもが自主的に英語に興味を持つような環境が、英語力アップにつながります」
という人へ
「〝学ぶ〟のではなく、英語に興味を持つことからスタートしては。洋楽や洋画を楽しんでみましょう。日常のシーンをクイズ感覚で英語に置き換えてみるのもいいですね。例えば、電車の中で寝ている人がいたら『He is sleeping.』(※)と頭の中で唱えてみてください。慣れてくると、パッと英語が浮かぶようになりますよ」 ※訳/彼は眠っています