雑誌で話題のおしゃれな服や、テレビで頻繁に取り上げられるスイーツ。「今年はあのアイテムを買いたい」「今度食べに行こう!」など、盛り上がることもありますね。では、そうした〝流行〟はどのように生まれているのでしょうか。また、流行は繰り返すともいわれますが、実際のところは? 今回はファッション、音楽、食の三つのジャンルにおける、流行のメカニズムを探ってみました。
京都女子大学 家政学部
生活造形学科 教授
成実弘至さん
流行と関連が深いファッション。京都女子大学教授の成実弘至さんは、「ファッションの流行は、服飾業界全体が仕掛けてつくるケースが多いです」と話します。
「ワイドパンツのように、以前はやったアイテムに再び目をつけ、新たに商品化して雑誌などで発信することも。そうして過去の流行ファッションがまた人気になり、流行が〝繰り返し〟ているように見えるのです」
最近は、SNSの力で急にはやるパターンもあるとか。
「消費者側の影響力が増してきています。インスタグラムなどで投稿されたファッションスタイルの写真を、雑誌の代わりに参考にしているという人も多いですね」
社会情勢も流行に関係しているそう。
「景気が上向いていた1980年代はDCブランド、特にバブル期は高級ブランドの全盛期でした。ところが、バブルがはじけた90年代は下火に。そしてベーシックなファッションが流行しました」
安室奈美恵さんのファッションをまねた〝アムラー〟が流行したのも90年代。有名人が火付け役になることもあるようです。
近年はファッションの〝成熟期〟だと成実さん。
「今は大きな流行は消えつつあり、ファッションは多様化しています。古着を取り入れるなど好みの服を選び、それぞれが個性を出して自分のスタイルをつくる時代といえるでしょう」
京都織物卸商業組合
副理事長
髙田啓史さん
着物の流行が花開いたのは、大正~昭和期。
「それまでは公家・武家や一部の町民などの限られた文化でした」と、京都織物卸商業組合・副理事長の髙田啓史さん。そのころの流行は、華やかな大柄の模様。竹下夢二が描いた作品などが、流行を生み出していたといいます。
「作り手の技術も流行に影響しています。化学染料が普及すると鮮やかな色みが出せるように。はっきりとした色合いの着物が作られ、人気となったのです」
十二単(ひとえ)では下着として着用されていた小袖が、表に出して着られるようになるなど、時代に合わせてスタイルを変えているのが分かります。
「自分らしさをどう出すかを試行錯誤する中で、着物の流行が生まれていっています」