京都精華大学
ポピュラーカルチャー学部
ポピュラーカルチャー学科
音楽コース 専任教授
安田昌弘さん
「音楽の流行にも繰り返しがあります」とは、京都精華大学専任教授の安田昌弘さん。
「繰り返しの例といえるのがアイドルソングです。70年代、南沙織のデビュー曲『17才』がヒットしたころからその流れがスタート。このように観客との距離が近い、親近感のあるアイドルは、これまでのスターとは一線を画していました」
〝身近なアイドル〟は、おニャン子クラブやAKB48など、現在まで続いています。
「また、90年代にブームとなったのが〝渋谷系(※)〟。60~70年代にはやった音楽を取り入れた、繰り返しの一つです」
大ヒットが出ていた90年代までの音楽と結びつきが深かったのが、テレビの歌番組やドラマ。流行の発信元は主にレコード会社でした。ところが、今は誰でも気軽にインターネットなどで音楽を発信できる時代。たくさんのクリエーターが数々の流行を生み出しています。
「最近はすでにはやり出した音楽にレコード会社が目をつけるケースが増えています。例えば、米津玄師や初音ミク。インターネットで注目されたのが始まりです。バブルが崩壊し、〝みんなで前に進む〟という時代は終わりました。大ヒットになりにくく、〝小ヒット〟が多数誕生するようになったのです」
各年代の流行曲には、何か共通点があるのでしょうか。
「歌に物語性があることです。日本人は歌詞の中の人物を歌手本人に重ねて楽しむ傾向に。歌詞の世界観がしっかりとした曲がはやるケースが多いと思います」
これまでの流行歌を振り返ってみるのもいいかもしれませんね。
(※)フリッパーズ・ギターの楽曲などに代表される音楽
立命館大学
食マネジメント学部
准教授
鎌谷かおるさん
パンケーキや、塩レモン、サラダチキン。一度は食べたことがあるという人が多いのでは。食の流行について教えてくれたのは、立命館大学准教授の鎌谷かおるさん。
「江戸時代なども流行食はありましたが、家庭における食は高度経済成長期を迎えた1970年代を境に変化。食べ物の選択肢が広がったことで、よりトレンドが生まれやすくなりました」
流行食と関係が深いというのが健康。体に良いとメディアで取り上げられた食べ物は、一躍注目されます。
「豆乳、カスピ海ヨーグルト、黒酢など、時代によって多様な健康食が登場。新たな健康食を求め続けています」
一方、スイーツも次々とブームが誕生。90年代にはティラミスやパンナコッタが流行しました。
「海外から日本に上陸したスイーツに〝新しいもの好き〟が注目し、瞬く間に人気になりました。近年では、パンケーキも海外から日本に来た店がブームに火をつけました」
90年代に流行したタピオカは、近頃またはやっていますね。
「懐かしく思う人もいるかもしれません。以前のブームを知らない世代は新鮮に感じるため、また流行となるのです。短期的な流行ですぐ姿を消すもの、形を変えながら定着していくもの、そして再びブームを巻き起こすもの。食の流行はさまざまで面白いですね」
また、近年は華やかで写真映えする食べ物が流行しているようです。
「おいしさよりも見た目が重視されています。体をつくる大切な食べ物。将来の体のことも考えつつ、流行の食を楽しんでみては」
同志社女子大学 学芸学部
メディア創造学科 教授
関口英里さん
「現代では、メディアに露出していると〝流行〟と捉えられる傾向に。SNSの影響もあり、情報を発信する〝インフルエンサー〟も登場しています」と話すのは、同志社女子大学教授の関口英里さん。
「若い世代の方が流行に敏感なイメージがあるのは、自己アピール力が高く、アクティブに行動しがちだから。社会学者のジンメルは、流行が生まれるのはアイデンティティー(自己)を保つためだと唱えました。他者との差異化を図ろうと新しいものを取り入れる動きにより、流行が誕生するのです。そして人を模倣する同調心理が、その流行を広めていきます」
流行の〝繰り返し〟に関しては次のように指摘。
「日本では、よく20年周期で流行が繰り返されるといわれます。子どものころに親しんだテイストには懐かしさを感じるもの。今風にアレンジしてまた楽しむという現象がみられます」
最近は手に入る情報量が増え、流行が続く期間は短くなってきているとか。どのジャンルでも、一つの大きな流行ではなく多様な流行が生まれている点も、近年の特徴といえそうです。今後も、流行がどう変わっていくか注目してみて。