宇治橋や宇治駅、そしていきいきと演技をする人々を映したショートムービー。3月、地域住民による作品の上映イベントで発表されました。
この作品は、2020年の公開に向けて準備が進められている長編映画「宇治発映画」の製作に先駆けて作られたもの。
「製作には地域住民も参加。映画の目的は、宇治の魅力を全国に発信することです」とは、「宇治発映画」制作委員会代表の森田誠二さん。
「宇治には長い歴史があり、多くの伝説も残されています。代表的なのが、自分を犠牲にして兄に皇位を譲ったという皇子『菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)』の逸話。宇治には、誰かのために生きることが幸せだという精神性が息づいていると感じます」
「宇治発映画」は、そんな宇治の伝説や生活文化を取り入れた、誰もが楽しめるエンターテインメント作品。完成が待ち遠しいですね。
西陣の石畳の通りに立つ「織成舘 須佐命舎(おりなすかん すさめいしゃ)」。和洋折衷の趣ある建物で、映画を通しての交流が生まれています。
定期的に開催されているのが「西陣シネマ」。映画を見るだけではなく、映画にまつわる体験ができるのが特徴です。
3月には、コーヒーに関わる人々を追ったドキュメンタリー映画を鑑賞。その後はトークセッションが行われました。海外の農家を訪れて、〝生産者がわかる良質なコーヒー〟づくりに挑戦しているゲストが登場しましたよ。
来場者からは「コーヒー豆の精製方法の違いとは?」といった質問も。映画の感想を話す時間も設けられ、参加者同士の距離も近づいていきます。
「映画は一種の疑似体験。同じ空間で同じ体験をすれば、共通の話題ができますよね。人々が知り合うきっかけづくりを意識しています」とは、西濵愛乃さん。妹の萌根さんと二人で「西陣シネマ」を主催しています。
「手織技術振興財団」理事の渡邊隆夫さんが「織成舘 須佐命舎を活用して地域を盛り上げてほしい」と依頼したのが「西陣シネマ」の出発点とのこと。萌根さんは「西陣の店や施設と連携したイベントも企画したい」と展望を語っていました。
行政にも新しい動きが。京都府では昨年、若手クリエーターを表彰する「京都デジタルアミューズメントアワード」を創設。商工労働観光部ものづくり振興課の須田建太朗さんに、その背景を聞きました。
「映画やゲームなどの〝コンテンツ〟は、地域にとって貴重な資源。京都府ではこれまで、映像制作のワークショップや優秀な企画を映画化する担い手づくりなどを進めてきました。さらに若手クリエーターの支援のために設けたのがこのアワードです」
対象は、府内の企業や大学などから推薦された京都に縁のある40歳以下のクリエーター。
「多彩な可能性を秘めた人材を発掘し、京都からたくさんのクリエーターが羽ばたいていく賞にしたいです」
京都市では、映画の新たな顕彰制度を創設することが決まっています。
「京都はかつて『東洋のハリウッド』といわれたほど、時代劇を中心にした映画文化が栄えた町ですが、現在は時代劇映画の製作は下火に。この制度は映画自体はもちろん、衣装や小道具などを製作する環境も活性化し、映画文化の振興と映画に関わる技術の継承につなげることを目指しています。具体的な内容は今後検討していきます」(京都市文化芸術企画課・永原さん)
南区西九条でアート系にこだわった作品上映を続けてきた映画館「京都みなみ会館」。昨年3月に閉館し、今夏、再オープンします。館長の吉田由利香さんに、映画文化についての考えや再開への意気込みを聞きました。
「人々の目に触れるのは宣伝展開が派手なメジャーな映画が中心ですが、マイナーな作品にも素晴らしいものはたくさんあります。時には、たった2時間を映画館で過ごすことで、その後の人生における考え方ががらりと変わることも。そんな出会いを提供するのが『京都みなみ会館』の使命だと思っているんです。
閉館時には、地元はもちろん他府県からも惜しむ声が寄せられ、京都で映画とともに青春時代を過ごした人が全国にいることに気づかされました。映画館に通った思い出を後々まで記憶にとどめてもらえるのも、学生や文化芸術を愛する人が多い京都ならではだと感じます。
再開後も作品選びの方向性は変わりませんが、スクリーンが三つに増えるので、1作品を1日に複数回上映するなど、より足を運んでもらいやすいよう工夫します」