年齢やライフスタイルによって、住まいに求めることは変わります。そこで、読者に〝理想の住まい〟についてアンケートを実施。466人の回答の中から新築やリフォームへの意欲が強い、30代~60代の主な意見をピックアップ。理想の住まいづくりのコツを、住様式に関する研究をしている、京都ノートルダム女子大学の教授・中村久美さんに教えてもらいました。新築・リフォームで願いをかなえた読者の実例も紹介します。
「理想の住まいは?」と題したアンケート。どの年代にも共通の理想は、空間が広々として開放的なことでした。部屋が狭くても広く見える造りが良いとの声も。
広めのLDKで、家事をしながら子どもの遊びや勉強の様子を見ることができれば良いです(YMさん・36歳女性)
子どもが、のびのびと体を動かせて、少々騒がしくても、周囲の方に気を使わなくても良い環境(KEさん・37歳女性)
小さい子どもがいても安全で、広いリビング、広いキッチンがある開放感のある家(ATさん・35歳女性)
SNさん家族が住まいを新築したのは、約1年前。「キッチンで家事をしながら、子どもたちの姿が見える間取りを重視しました。人形遊びをしたり走り回ったりと元気いっぱいなので、どこにいても目が届くようにと思って」とSNさん。独立型のキッチンですが、カウンター越しにダイニング、奥のリビングを見渡せます。「けんかを始めたと思ったら、しばらく後には笑顔で遊んでて。変化に気付いて声を掛けられますし、見守れるのが良いですね」
子どもがいる30代に最も多かったのは、子どもの安全性が保たれる住まい。見守りやすく、安心して子育てできる環境を望む声がありました。
「子育てに便利なのが、日本家屋に昔からある和室。現代でも融通が利きます」と中村さん。「一般的なのは、キッチンに近く、リビングにもつながっているような6畳ほどの和室。小さい子どもが遊べる空間でありながら、寝室にもなります。お客さんの応接や宿泊などにも利用できますね」
また、子ども部屋は、将来のことも考えてつくることが大切と言います。
「小学校低学年くらいであれば、リビングで勉強することもありますよね。高校卒業後に進学などで家を出れば、子ども部屋が必要なのは実質10年程度。造り付けのベッドや机など、子ども専用の個室にしてしまうと後々使いにくくなることも。可動式の仕切りで個室にするなど、子どもの独立後も、物置きにせず〝使える部屋〟にする工夫が大切だと思います」
子どもが大きくなってきたので、各自に部屋を。リビングではみんなが集まってリラックスできれば(KOさん・47歳女性)
リビングに階段があるなど、家族みんなが顔を合わせられる間取り(TMさん・43歳女性)
収納スペースが豊富で使いやすい。夫婦の寝室、子供それぞれの寝室、ゲストの寝室にも個室が確保できるように(KOさん・46歳女性)
「家具を増やしたくなくて、収納家具を造り付けました」と、6年前に新築したEMさん。リビングに造り付けの棚は、大きく三つに分かれています。「小学3年生の息子と夫婦で一つずつ分けて使っています。息子は学校のプリントやおもちゃ、夫は本、私はアルバムや雑誌などを入れて。棚の上は共有スペース。化粧品など日常的に使う物は片付けず、使いやすいように。息子の作品や写真、お気に入りの鉄道グッズなども飾ってあげたくて」。キッチン下のデッドスペースや階段上の踊り場も活用しているそう。「空いている部屋を荷物置きにしないように意識しています」
収納スペースを増やしたいという声が多かった40代。中村さんは、日本の家は高度経済成長期から特に多くの物にあふれていると話します。
「かつて茶の間や座敷で暮らしていたときは、必要な物を茶だんすや押し入れに納めて、見えるところには物を出しませんでした。今は洋風のリビングや洋室で暮らすのが主流です。元々、物を押し入れや蔵に〝しまう〟文化の日本に、インテリアを飾り付ける欧米の〝置き並べる〟文化が入ってきたため、物があふれるように。
それらを管理するのに、家の中心に納戸のような3畳ほどの収納スペースがあると良いと思います。場所は屋根裏ではなく、人が集まる居間や台所など。その方が、定期的に収納物の見直しができて有効に使えます。日用品のストックを置けて、来客の際、一時的に物を避難させることも。クリスマスツリーなど、季節物も身近な場所に片付けることで出しやすくなります」
また、子どもが成長して個室を望み始めると、家族が顔を合わせる空間が重要視されます。
「個室があったり習い事を始めたり、子どもや家族とすれ違うことが増えてくるころ。アイランド型のキッチンにしたり、ダイニングキッチンであれば、食事を作りながら家族で時間を共有できます。共働き家庭が多い今、キッチンは主婦だけの城ではなく、片付けなど全員が家事に参加できるような空間にしたいですね」