今回のアンケートで、「(子どもたちの、その夢に対して)大人はどんなことができると思いますか」という質問にも答えてもらいました。
すると、「そっと見守る」という人と、「積極的に応援する」という、大きく二つのタイプの回答があがりました。
花園大学教授で臨床心理士の橋本和明さんは、「結論としては、どちらもいいと思います。
夢は壊れやすい〝シャボン玉〟のようなもの。空高く飛ばすために、見守っていても良いし、風を送っても良い。いずれにせよ早い段階で壊れてしまわないよう、心掛けることはできるはず。シャボン玉は上空ではじけるかもしれませんが、できたばかりのものをつぶすようなことをせず、お互いに楽しむことが大切です」と話します。
さらに、〝できること〟として、「経済的な備えをしている」という回答も多数。「なりたいものになるために、行きたい学校に通わせてやれるように貯蓄」(NKさん)、「音楽はお金がかかるので、自分も仕事をしています」(IMさん)というように塾、習い事に通わせるなどを、夢へのステップと捉えている人も少なくないようです。
「例えば、『ピアニストになりたい』と言った子がいたとして、ピアノを習わせてあげるのは、能力を引き出す上で、もちろんいいことです。ただ、経済的にそういった応援をすることができなくても、子どもが一生懸命にピアノを弾いている様子をほめてあげる、といったこともひとつの応援です。そのときの状況や様子に応じて、ケースバイケースで親としてできることがあると思います」(橋本さん)
今回のアンケートで「(夢は)ない」と回答した子どもが250人中33人と、約13%いました。〝まだ見つかっていない〟のか〝夢を持てない〟のか、その状況はさまざまでしょうが、最近は「夢を持てない子どもが増えている」ともいわれているようです。
保護者からは、「(自分が夢を持っていなかったので)子どもには持たせたい。でもどうしていいのかわからず、困っている」(NTさん)、「自分自身夢を持つのが遅かったので、早いときから家族で将来について話し合っている」(SNさん)と、早く夢を描いてほしいと願う声が聞かれる一方で、別の見方をしている人も。
「いきなり一つのことにこだわってしまうと周りのことが見えなくなってしまう危険があるから、子どものうちから将来のことを考えなくてもいいのでは」(KJさん)、「人にほめられるような夢を持つことよりも、自分がどんな状況でも楽しく過ごせるほうが大事だと思うから」(OAさん)と、あえて持たせたいとは思わないとの意見も。
橋本さんは、「昔と比べ、さまざまな情報が入ってきやすくなったため、子どもたちが現実からかけ離れたことを言いにくくなったという側面もあります」と話します。
「先日、小学校の卒業式に出席する機会があり、皆が夢を語る場面で、『今はまだ、将来何になりたいのか分かりませんが、中学校で一生懸命に勉強して見つけていきたい』と話した子がいました。具体的な夢ではないかもしれないけれど、等身大の自分が見えているのは、それはそれで立派なことだと思います。
いま、夢がないという子どもは、夢をふくらませている段階かもしれません。ありのままを受け入れ、子どもの力を信じることが、その子の夢を育てることにつながります」
教えてくれたのは
子どもの夢をシャボン玉に例えましたが、夢はまた、子ども自身です。それをつぶしてしまうのは押しつけや、さらには虐待につながってしまうこともあります。
子どもが夢を持つには、〝そうなりたい〟と思う理由があるはず。それが一見、かなわないようなことでも、頭ごなしに否定するのではなく、尊重してあげるのがいい時期もあるのではないでしょうか。ちなみに私の息子は幼稚園のころ、「キリンになりたい」と言っていました(笑)。背が高いから、かわいいからとか理由があったようです。
子どもが夢を語ってくれたら、「どうして?」と聞いてみてください。そこには、その時の子どもの″素直な気持ち〟が映し出されているのです。そして、それは子育てのヒントにもなります。
夢は高く飛ぶ前に、弾けて現実を知ることもあるかもしれませんが、それを大人が先まわりしてつぶしてしまうことのないようにしないと。夢は自分を大事にするからこそ、出てくるものだと私は思います。周囲の大人は、それに圧力をかけたり、無理に別の方向に行かせようとするのではなく、大切にしてあげることが大事なのです。
子どもたちは、夢を大切にしてもらったことで、自分を大切にしてもらったという気持ちが残り、自分も自身の将来や周囲を大切にするようになるのではないでしょうか。