働き方改革で生活はどう変わる?


〝残業時間〟〝有給休暇〟がポイントに

「働き方改革関連法」の中でも、私たちの生活に大きく関わる〝残業時間〟と〝有給休暇〟の二つをピックアップ。「京都働き方改革推進支援センター」のコーディネーターで、社会保険労務士の富樫保さん、内田雅文さんに聞きました。

教えてくれた人
「京都働き方改革推進支援センター」コーディネーター、
社会保険労務士 (左から)富樫保さん、内田雅文さん
時間外労働の上限規制で、残業が減少

大企業では4月から、中小企業では2020年から実施される、残業時間の上限規制。

原則的な上限(※1)は、月45時間、年360時間。繁忙期などの特別な事情があって、労使協定で合意した場合は上限を超えることも可能ですが、その場合も年720時間以内、月100時間未満(※2)、複数月平均で80時間(※2)を超える残業はできなくなります。

「これまでは労使協定の合意があれば、法律上は時間の上限なく労働者を働かせることができたんです」と富樫さん。

「4月からは上限規制を破った事業者には罰則が課せられることもあります。過度な残業をさせる事業者は、大幅に減るでしょう」

現在、毎日4時間以上の残業をして、時に休日も出勤しているような人は、帰宅時間が早まり、自分の時間や家族と過ごす時間が増える可能性が。一方で、短時間で成果を出す、効率的な働き方が求められる傾向が出てくるといいます。

「ただし、残業時間が多くても2時間程度という人には、特に変化はありません」とは内田さん。

「残業代が減るのは経済的に厳しい」との声に対しては、「確かに残業時間が減ると、手取りが少なくなる場合もあります。その補填(ほてん)というわけではありませんが、2023年には、中小企業においては残業代の単価を上げる制度『残業の割り増し賃金率引き上げ』が施行されます」

(※1)自動車運転業、医師など、一部、上限規制の適用を除外・猶予される事業・業務もあり
(※2)休日労働を含む

5日間の有給休暇を取得させるのが企業の義務

有給休暇の取得が義務化されることもポイント。こちらは大企業、中小企業いずれも4月からスタートです。

本来、事業者は一定の要件を満たした全ての労働者に対して、勤続日数に応じた日数の有給休暇を与えなければなりません。しかし、これまでは原則として労働者が自ら申し出なければ有給休暇が取得できなかったため、取得日数がゼロという人も少なくなかったのだとか。

「4月からは、事業者は10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、毎年5日間の有給休暇を取得させることが義務となります。違反した事業者には罰則も。

〝10日以上の有給休暇が付与される労働者〟には、非正規社員も含まれます。パートでも週3日の勤務を5年6カ月続ければ、10日間の有給休暇が付与されることになっています」(富樫さん)

自ら有給休暇を申請しない人には、事業者が希望を踏まえて時季を指定する必要があります。

「希望通りの日程で取得できるとは限りませんが、これまでほとんど有給休暇を取れなかった人は休みが増えるはず。事業者の意識も変わってきているので、有給休暇の取得をためらっていた人も、申請しやすくなるでしょう」と内田さん。

「休暇を取って念願の家族旅行に!」といった夢もかないそうですね。

大企業は2020年、中小企業は2021年から実施

正規・非正規間の格差をなくすための規定も

来年以降も進められていく〝働き方改革〟もチェックを。パートや派遣、有期の契約で働く人に大きく関わってくるのが、正社員と非正規社員の間の均等・均衡待遇規定の整備。大企業は2020年、中小企業は2021年から実施されます。

「〝均等待遇〟とは、仕事の内容が同じなら同様の待遇にするということ。〝均衡待遇〟とは、仕事の内容や責任の重さが異なる場合は、違いに応じてバランスのとれた待遇にするという意味です。

例えば、正社員と契約社員が仕事内容や異動の範囲は同じなのに、契約社員だけが昇給も賞与も全くないというケースは、不合理な待遇差といえますね」(富樫さん)

不合理かどうかの判断が難しそうですが、厚生労働省がウェブサイトで公開している「同一労働同一賃金ガイドライン」が参考になるとのこと。

さらに非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由について、事業者に説明を求めることができるように。

「その場合、事業者には合理性があり、非正規社員が理解できるような説明をする義務があります。パートの時給が上がったり、これまで正社員にしかなかった通勤手当が支給されるようになったりと、待遇が良くなる人もいるかもしれません。不合理な格差を生まないようにと、正社員と非正規社員の間の業務内容の線引きがより明確になる場合もあるでしょう」と内田さん。

富樫さんからは「パートや派遣でも労働者としての権利意識をしっかり持つことが大切です。待遇に疑問があれば、厚生労働省のガイドラインなどを読んで知識をつけた上で、事業者に説明を求めて」とアドバイスも。

このページのトップへ