ペット同行の避難訓練のために、
病気の子どもたちのために
「京都地域創造基金」を通して寄付が集まり、すでに活用されている事例もあります。
例えば、「NPO法人アンビシャス」が行っているプロジェクト。災害時にペットと一緒に避難できるよう実施している〝同行避難〟の訓練にかかる費用を募集したのだそう。
子どもと子育てに関わる市民活動を支える「京都こどもファンド」では、また異なるケースで寄付が募られました。
まず、子どもたちのために使われる資金を広く募ることからスタート。2017年度に集まった寄付金を、使い道の提案があった4団体に助成したのだとか。そのうちの一つが、入院している子どもたちに楽しい時間を、と活動しているボランティアグループ「にこにこトマト」。夏祭りの開催などに活用されたとのこと。
設立から10年がたつ同基金。昨年12月には、これまでに集まった寄付は4億円を超えました。
「直接お礼の連絡をしたり、報告会を開いたりと、寄付をした人と受け取った人がコミュニケーションをとれる機会をできるだけ設けています」(可児さん)
文化財の修理保全に関する講習会や、文化財の所有者・管理者を対象にした無料相談会の実施など、文化財の保護活動をしている「公益財団法人京都古文化保存協会」。
同協会では、2018年4月からインターネットを通じて広く寄付を募るクラウドファンディングを始めました。
「相談会では、修理をしたいが費用の問題があってできないという声をよくお聞きしました。国や府の指定文化財なら補助がありますが、それも全額ではありません。指定を受けていない文化財なら全額所有者が負担して修理をしなければなりません。そこで広く皆さんに現状を知っていただくためにクラウドファンディングという形をとったんです」と同協会の中溝哉(はじめ)さん。
木像の色があせてしまったり、古文書に虫食いがあったり、修理が必要な文化財はたくさんあるそう。2019年3月までに1200万円を集めることを目標に、現在も実施されています。
また、文化財の破損で記憶に新しいのが昨年の災害。地震や台風で寺社が倒壊したり、傷ついたりという被害がありました。同協会では、そのような被害を受けた文化財を対象にしたクラウドファンディングもしたのだそう(既に終了)。
このような形で集まったお金は、専門家による委員会で話し合い、緊急性の高いものの修理からしていくとのことです。数多くある京都の文化財はこのようにして守られていくのですね。
次は、〝投資〟で集めたお金を地域のために役立てようというケースを紹介します。
「プラスソーシャルインベストメント株式会社」の代表取締役社長・野池雅人さんは、投資の魅力を息の長い関係性を築けることと話します。
「ベースは地域の人の困りごとを、地域の人の資金で解消へとつなげるという考えです。投資であれば配当という形でつながりが続きますよね。その継続性の中で、投資した側は地域の事業への参加者意識が生まれ、見守っていこうという気持ちになります。受け取った側は地域住民への責任感を持続させ、さらに良い取り組みに発展させようと励みになるはず。その結果、成果が出れば地域が活性化され、お互いが刺激を受け、さらに大きな輪になっていくのではと思っています」
これまで滋賀での子どもの居場所事業、愛媛県での地域課題の解消などに関わってきましたが、京都での活動はこれからが本番。
「京都はもともとまちづくりに関心が高い地域。文化を生み育て、応援していこうという意識が古くからありますから」
現在は、京都信用金庫、龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンターとも協力し、取り組みを進めているそう。
「住民と大学、民間、もちろん行政も。地域を盛り上げようという人をみんなで応援できればと思っています」
〝地域とお金〟に関する動きはほかにもあります。
山科青少年活動センターでは、地域通貨「べる」を発行。地域通貨とは、限られたコミュニティーでのみ通用する、お金に変わる価値のあるもの。〝1べる〟で1円の価値があり、登録された店舗でお金として利用できます。現在、登録されているのは、地域の文房具店やカフェなど13軒とのこと。
この取り組みの対象は、山科区の中学生以上20歳以下の青少年。
「『べる』の目的は青少年の成長を支える仕組みを地域につくること」と同センターのユースワーカー・松陰律さんが話すように、「べる」は〝活動〟の対価としてもらえます。
センターには、「チラシの訂正20枚100べる」といった「べる求人票」が掲示してあり、センターでの事務作業やイベントの手伝いなどの地域活動(〝べる活〟)をするとお金のかわりに「べる」がもらえるのだそう。
「地域の誰かの役に立つという経験をしたり、地域の方と交流をしたり。そんな目的のもと活動をしています」