市民の力が研究に役立っています


調査3夏季の3カ月間、鴨川を上るアユは何匹?

暑さ対策をして1回4時間、目視で数えます

【左】丸太町橋南側の鴨川の河川敷で、調査の様子を再現してくれた森澤さん。「魚道を通過する魚をチェックします。多いときは20匹くらい見られますね」 【右】遡上するアユは体長約10cm。ジャンプしながら川を上ります

春から初夏にかけて、鴨川を上るアユ。5月~7月の3カ月間、鴨川の5カ所において、アユの数をカウントする調査を「京の川の恵みを活かす会」が実施しています。

「近年、人工的に作られたせきなどを乗り越えられず、アユが遡上(そじょう)できないことが問題となっています」とは、同会会長で京都大学防災研究所の竹門康弘さん。アユの生育環境の再生を目指し、研究者や京都市などで同会が結成されました。

協力者の森澤邦博さんは、5年間調査に参加。「調査は1回4時間。1時間のうち、10分の観察タイムを2回設け、目視で数えます」と教えてくれました。

「夏は大変ですが、集中力を切らさないよう気を付けています。帽子やパラソルといった、暑さ対策が欠かせませんね」

そうして集められた調査結果は竹門さんがデータ化。調査に基づき、遡上を助ける設備〝魚道〟をせきに設置するなど、アユを増やすための取り組みに役立っています。

詳細は京都大学防災研究所水資源環境研究センター 竹門研究室=TEL:0774(38)4253=へ。


調査4マダラ模様のナメクジの生息地はどこ?

日時や場所など、目撃情報を報告

研究室の一角。「湿度を一定に保つ機器の中で、ナメクジを飼育しています」と宇高さん ※ナメクジに触った場合はよく手を洗うこと

ナメクジの目撃情報を募集! そう呼び掛けているのが、京都大学大学院理学研究科助教の宇高寛子さん。ヨーロッパ原産の「マダラコウラナメクジ」などの生態について研究をしています。

「大きいものだと体長は20㎝ほどに。ヒョウのようなマダラ模様が特徴です」と宇高さん。日本に生息するナメクジは、時代によって種類が変わってきているとのこと。その理由や今後の動きを予測するため、マダラコウラナメクジの分布を調べています。

「夜行性で、日中は植木鉢の下などに隠れています。私有地はなかなか調査できないため、特に家の敷地内を探してもらえたら」

約2年間で、のべ500人から目撃情報が届いているそう。「庭に大きなナメクジがいました」「買った花にナメクジが付いていてびっくり」といった声が、メールなどで寄せられています。

「似たような大きな在来種もいるので、マダラコウラナメクジだと確信がなくてもOK。もしかして、と思ったら、写真と日時、場所を教えてください」

問い合わせは宇高さん==まで。


新たな研究方法を探る、月1回の勉強会

これまで紹介してきたように、さまざまな方法で研究の一翼を担う市民の力。こうした一般の人が関わる研究は〝オープンサイエンス〟と呼ばれ、国や研究機関からも注目されています。
そのノウハウやメリットなどを考える目的で、月1回開かれているのが「KYOTOオープンサイエンス勉強会」。市民の協力により多くのデータが集まった事例や、文献の調査が進んだケースなどがセミナー形式で発表されています。
世話人の1人・京都大学情報環境機構特定講師の小野英理(えいり)さんは、「市民が関われる部分にフォーカスし、新しい研究の手法を考えていきたいです」。
参加は誰でもOK。申し込み・問い合わせはホームページ(http://kyoto-open.science/)にて。

主に河原町五条近くの施設「MTRL KYOTO」が会場に。10月には「宇宙・地球のオープンデータでハッカソン」と題したセミナーを実施。「これまでに主婦も参加してくれています」と小野さん

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