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京都のアート事情

京都に住んでいると、日常の中でアートに触れる機会もたくさんありますね。ですが、もっと身近に感じてほしい、そして次世代へと引き継ぐためにさらに発展させたいと、さまざまな取り組みも行われています。

堀川
AC Lab
約100冊の本がきっかけに

「オープンな雰囲気のギャラリーなので、ぜひ気軽に足を運んでください」と大垣さん(左)

取材日には「かしましい器~時々静かな3人展~」が開催されていました。左から、出展者の絵付け師・深田香奈重(かなえ)さんと高畑竹邑(ちくゆう)さん。「積極的に来場者と交流して、作品作りの過程も伝えていきたいです」(高畑さん)

出展者が自身の本棚から持ってきた本には、画集や小説のほか漫画もあります

堀川通沿い、堀川団地出水第3棟1階にある「堀川AC Lab」。京都府からの委託を受け、大垣書店が今年5月から来年3月まで運営しているギャラリーです。

「京都府在住のアーティストや職人などにスペースを貸し出し、〝アートと交流〟をテーマに展示を行っています」とは、同社店舗開発室 室長の大垣守可(もりよし)さん。同社が整備運営する「堀川アート&クラフトセンター」(仮称)で実施予定の企画を試みる場でもあるのだとか。

こちらの特徴は、作品とともに出展アーティストが持参した私物の約100冊の本が展示されること。来場者はそれらの本を自由に読むことができます。この展示スタイルの狙いは…。

「アートの知識のない人にとっては、ギャラリーは入りづらい場所。作品と一緒にアーティストの趣味や関心が見え隠れする本を展示することで親近感がわき、興味を持つ人が増えて間口が広がると思うんです。本がきっかけとなり、ギャラリーにいるアーティストと来場者の会話が弾むことも多いです」

本が、アートと来場者をつなぐ媒介となっているのですね。

ギャラリー
崇仁
〝京芸〟出身の作家がはばたく場所

個展「あわいのかたち」の展示風景。「歴史や時の流れを感じさせる空間に溶け込むよう、ゆったりした間隔でオブジェを配置しました」(山西さん)

左から、美術家の山西さんと京都市立芸術大学総務広報課の天沼さん

2023年に京都駅東部への移転を予定している京都市立芸術大学。今年3月、予定地内にある元崇仁小学校の職員室が、同大学・大学院出身作家のアート作品を展示する「ギャラリー崇仁」に生まれ変わりました。

「実力はあってもチャンスが少ない若手作家たちが、発表の機会や個展開催の実績を得られるようにと始めました」とは、同大学総務広報課長の天沼憲さん。一般の人にも同学の教育や活動を知ってもらうための「移転整備プレ事業」の一環でもあるのだそう。

期間は、校舎解体までの2年間限定。絵画、彫刻、工芸など幅広いジャンルの作家を一人ずつ紹介していくとのこと。取材に訪れた日は、美術家・山西杏奈さんによる木彫作品中心の個展「あわいのかたち」を開催中でした。

個展のテーマや作品は作家自身が選び、自由にレイアウト。他のアーティストとコラボレートしたライブ演奏、ダンスなどのパフォーマンスが行われることも。これからの活躍が楽しみな若手作家の表現に、いち早く触れられるのが魅力です。

ギャラリーの設計を手がけたのは、同大学大学院の環境デザイン専攻の院生。元の天井や壁の一部をそのまま残し、古い建造物の風合いを生かしたデザインにしているのだとか。作品はもちろん、空間も一つのアートとして鑑賞してみませんか。

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