つけっぱなしの電気を消したり、脱ぎっぱなしの服を片付けたり…。
「人の尻拭いを自分がやっていると思うと、イライラしてしまいますね。それは自然な感情です」と、京都光華女子大学健康科学部心理学科教授の徳田仁子(きみこ)さん。
でも、少し気を付けたいのは、自分の〝思考のクセ〟だそう。
「『あなたはいつもそうだ』と過度に一般化してしまったり、『うまくいかないことばかり』と悪い部分ばかりが気になってしまったり。あるいは、『どうして分かってくれないの』と感じたり。人には思考の〝クセ〟があります。ネガティブに思い過ぎだなと感じる人は、自分にはそんな思考の〝クセ〟があることを認識して、『できたことは何かないかな』と、ポジティブに考えてみると、心にゆとりがもてます。そうすれば、イライラを相手にぶつけるのではなく、『言い方を変えてみよう』など発想の転換ができるかもしれません」
読者アンケートでも声が多かった、照明のつけっぱなし。京(みやこ)エコロジーセンターの澤田雄喜さんによると、照明は、家庭で電気を多く使う電化製品の2位(※)なのだとか(1位は冷蔵庫)。
ちなみに、ちょっと外出というときに消すかどうか迷いがちなエアコンは、起動に電力を多く消費するという特徴が。「30分以内の不在ならつけたままでもいいでしょう」(澤田さん)
出しっぱなしの水についても聞きました。
「家庭で1日で使う水の量は、1人平均219リットルというデータがあります。手洗いなどをするときに流れる水量は、1分間に12リットルともいわれているんですよ」。何げなく出しっぱなしにしていた水が、そんな量になるとは…。
「水は豊富にあると思いがちですが、限りがあります。さらに、上水や下水の処理には電力が使われていることも覚えておきたいですね」
電気や水の〝ぱなしさん〟は、水道光熱費の増加が家計の負担になるだけではなく、環境にも負担をかけているのですね。
※京都市発行「わたしたちの環境」より
少しでも〝ぱなしさん〟を減らすには、どうすれば?
注意の仕方や収納方法の工夫を紹介します。
「〝ぱなしさん〟を、仕事を増やす〝けしからん人〟ではなく、〝ぱなし〟を減らす手伝いをしてくれるサポーターだと発想を転換しましょう」とは徳田さん。
「サポーターになってもらうには、『~しなさい』と命令口調で話すよりも『ちょっとやってちょうだい』と〝お願い〟の言い方で」
相手の思考のタイプを考えて、工夫することも役立つとか。人には、「どうしてこうなってしまったのかな」と過去にさかのぼって考える人や、「この次に起こることは何だろう」と未来に意識が向く人など、さまざまな思考のタイプがあるとのこと。それぞれのタイプ別に言い方を変えるといいそうですよ(下表参照)。
「なぜ、こうなってしまったの?」と過去を探るタイプ。「いつもそうだよね」などと厳しくいうと悩んでしまうので、「次から~しようね」と未来の話をするのが大切 |
「次に起こることは何だろう?」と未来に向かって思考をするタイプ。前向きな一方、あまり反省しない傾向が。「次からする」と言いつつ改善しないこともあるので、張り紙をするなど思い出させる工夫を |
「今はこういう状態だ」と分析するタイプ。「今、一緒にやろう」と持ちかけ、経験をともにして |
自分が相手を評価するタイプ。「~しなさい」などというと、やる気をなくしてしまうこともあるので、「やろうと思っていたんだよね」などと、上手に促して |
※徳田さんへの取材をもとに作成
参考:日本ポジティブ心理学協会著「折れない心のつくりかた〜はじめてのレジリエンスワークブック〜」(すばる舎)
何度も同じことを頼むのは、言う方も言われる方もイヤなもの。整理収納アドバイザーの正垣(しょうがき)里恵さんは、紙に書いて伝えるのがオススメとか。
「特に思春期のお子さんは、親の言うことを聞いてくれないこともありますよね。そんなときは、『~しよう』と紙に書いて、目に付くところに張っておくのも一つの方法。『しなくちゃ』と思うきっかけになります」
照明のスイッチなどは気を付けていても〝うっかり〟はあるかも。
「トイレや階段の照明には、消費電力が少ない発光ダイオード(LED)照明や、タイマーやセンサー付きの商品を検討されてもよいかもしれません」と澤田さん。
アンケートで多く見られた〝ものの出しっぱなし〟。収納方法を見直すことで防げるかもしれません。
まずは、しまう場所を決めること。正垣さんが考慮するのは生活動線。例えば本は?
「家族みんなの本をしまう本棚はリビングに。頻繁に通る廊下に本棚を設置するのも良いアイデアです」
ポイントは、〝しまいやすく、分かりやすい〟ことと正垣さん。
「引き出しにしまうなら、〝充電器〟〝文房具〟のように、一つの引き出しに、ひと項目を割り当てて。細かすぎるとやりにくい人が出てきてしまいます。ラベルや写真を張って、何が入っているか誰もが分かるようにしておきましょう」
しまいやすさについては、徳田さんからもアドバイスが。
「子どものおもちゃなら、『引き出しに戻して休ませてあげよう』など、ストーリーを作って片付けまでを遊びにすると、楽しんでやってくれます」
とはいえ、四六時中、整理整頓された状態を保つのは大変。片付けを終えていてほしい時間の少し前に、家族に声をかけてはと、徳田さん。
「7時になってから、『7時だから片付けて。ご飯を食べよう』といきなり言われても、『遊んでいたのに』となってしまいます。『あと10分でご飯だから片付けようね』と促せば、言われた方も準備ができます」
正垣さんが利用しているのは、リビングの一角に設けた〝一時置き場〟。
「かばんや読みかけの本などを定位置にしまうまでの間、ここに置いておきます。そして寝る前に定位置にしまう。こうすれば散らかりっぱなしにならずに済みますよ」
「散らかしっぱなしにせず片付けておくのは、気持ちよく明日を過ごすためと説明すれば、協力する気持ちがわくのではないでしょうか」
「電気や水の節約は、自分1人だけでは少しですが、みんなですると量も増えます。家族にも声をかけて、できることから取り入れてください」
「ルールを決め、それを習慣化することが大切。収納場所を決める前には不要なものの整理を。新年度の前に、いるものといらないものを分けて、スペースを作って」