「病気になったら病院に」ではなく、ならないために。〝予防医療〟の重要性が高まっています。健康であり続けるためには、自分自身で予防を心がけることも大切ですね。そのために知っておきたいこと、私たちができることとは?
今年発表された2016年の日本の平均寿命は、男性が80・98歳、女性が87・14歳。過去最高を更新し続ける中、〝健康寿命〟という言葉が注目されています。
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間。健康寿命が短いほど、介護が必要だったり、病気などで不健康な状態が長いといえるのだとか。
「今、求められているのは『いつまでも元気でいられること』。つまり、健康寿命を延ばし、介護期間などを短くすることが課題です」とは、京都府健康福祉部保健医療対策監の渡邊能行さん。京都府では、平均寿命と健康寿命の差は男性が10年、女性は約13年です(表参照)。
「15年度から、府では『きょうと健康長寿・未病改善センター』を設置。府民の健診や医療・介護のデータを分析して、市町村や医療保険者などによる健康づくり事業の実施を支援しています」
「予防医療には、『病気にならないようにする』『病気を早期に発見・治療して、重症化や死亡を防ぐ』『再発を予防する』といった目的があります」とは、京都府立医科大学の特任教授・石川秀樹さん。異業種が連携して組織された「予防医療普及協会」の顧問も務めています。
「例えば日本の死因の第1位である〝がん〟。50歳、60歳から発生率が急激に増加し、罹患(りかん)すれば、その後の本人や家族の生活に深刻な影響を与えます」
そのため、日本では1984年から10年単位の〝対がん〟プロジェクトに着手。第4次となる2014年からは、〝先制医療〟をテーマにがん予防に取り組んでいます。
「先制医療とは、その人の遺伝子や体質、生活などを調べ、将来発症しそうな病気を予測して、予防することです。一人一人に合った先制医療が進むことで、医療費や介護費の抑制、健康寿命の延長なども見込めると期待されているんですよ」
京都予防医学センターでは、さまざまな観点から健康づくりや病気予防に取り組んでいます。
保健師の西村久美子さんは、「健康寿命の延伸を左右する要因として明らかになっているのが、肥満・運動不足・喫煙。これらを改善することは、高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病の予防にも有効です」と話します。
同じく保健師の吉田和弘さんによると、「予防で大切なのは、本人自らが意識して行動を起こすこと。さらに、その人のやる気や行動をサポートする環境づくりも課題」とのこと。
本人だけではなく、企業でも取り組んでいくこともその一つ。予防は、社会全体で考え、みんなで向き合うテーマでもあるのですね。