中学1年生の中村和水(なごみ)さんは、介護福祉士として働く、お父さんの直純さんが勤める老人ホームの見学に訪れました。
「普段と声の大きさが全然違う!」と驚きを隠せなかったのが、直純さんが入居者に「こんにちは」と声をかけている姿を見たときです。
「耳が遠い人のために、なるべく大きな声でハッキリと話すようにしてんねん」。そのほか、安心感を持ってもらえるように、話をするときに肩に手を置いたり、腰を落として目線を合わせることを心がけているとも聞き、「話し方にもコツがいるんだな」と学んだよう。
続いて、直純さんが入居者とおしゃべりをするテーブルに同席した和水さんでしたが、なかなか会話に入れず…。直純さんが「どんな娘さんだったんですか?」「そのころが見たかったなぁ」などと気軽に話をする様子を見て、「おばあさんと何をしゃべろうかと少し困りました。お父さんは絶えず話していてすごいなぁ」。雑談の難しさを感じたようですね。
今回の見学で、福祉の仕事に興味を持った和水さん。お母さんもこの施設で働いているため、「将来は両親のように、人の役に立つ仕事をしたいです」と話していました。
見学を終えて…
「私は年配の人に対しても、いつもと変わらない話し方をしていたかも。これからは、お父さんのように大きな声で話したいです」
kokoka京都市国際交流会館に小学6年生の野中日南子(ひなこ)さんが訪れたとき、母の直子さんは外国人の応対中でした。記者が「お母さん、英語上手だね」と言うと、「私は英語を話せないから、話せるお母さんはかっこいいです」と日南子さん。
直子さんは、日南子さんに「話すときには口を大きく開けて。焦らなくていいんだと感じてもらうために、ゆっくりと話すことも大事」と、外国人と話すときに気を付けているポイントを伝えます。日南子さんは、「京都にたくさんいる外国人は、お母さんみたいな人が支えているんだな」と少し誇らしげです。
「私も家の近所でよく道を聞かれるけれど、英語が分からなくて、指を差したりしています。いつかお母さんみたいに英語で教えられるようになりたいです」
直子さんがパソコンを使っている様子を見に行くと、日南子さんは横からそっと眺めて「パソコンに向かうときはいつも真剣なんです」。集中している姿もかっこいい!ですって。
見学を終えて…
「お母さんが英語を話すとき、いつも堂々として見えるなと思っていました。それは、ゆっくり、丁寧に話すことを心がけているからと知り、私もいつかそうやって英語を話せたらいいなと思いました」
親の職場を見学したり、仕事について話を聞くことが、子どもにどんな影響を及ぼすのでしょうか。
京都文教大学の柴田長生(ちょうせい)さんによると、「昔は家内工業や個人商店などが多く、親が働く姿を自然に見ることができましたが、現代では家庭の外での親の姿を見る機会は少ないもの。職場を見学したり、話を聞くことで社会人としての親を新たな目で見るきっかけになるでしょう」
社会を学ぶという点でも、「他人ではなく、親を通して見たり聞いたりすることで、大人としての役割をよりリアルに感じられるはずです」。
柴田さんは、子どもの年代によって、受け取り方もさまざまと考えます。
「思春期を迎える前の小学校高学年ぐらいの年代は、親に対して批判的にならず、純粋にすてきと思えるころ。理解力も育っているので仕事について話すにはちょうどよいのではないでしょうか」
また、「小学校低学年ごろでは、社会で活躍することへの理解は深まらないかもしれませんが、〝お父さん、お母さんってすごい〟〝私たちのために働いてくれてありがとう〟という感想は持つだろうと思います」
それでは、中学生以上の場合は?
「親への評価・批判がすでにある場合には、それが強まってしまうこともあります。けれど、なぜ親がそのような職業選択をしたのかと考えることで、自分の将来ビジョンを深められる年代だとも思います」
子どもが親の仕事に触れることで、仕事に関心を持つようになるのですね。夏休みも残りわずか。職場見学は難しいかもしれませんが、子どもに親の仕事について話してみるのもいいのでは。