狭小地や旗竿(ざお)地、細長かったり、日当たりが悪いといった土地。一般的には扱いにくいと敬遠されがちですが、そこはアイデア次第! 今回は、さまざまな工夫により、こういった土地に快適な住まいを建てた読者の実例を紹介します。専門家からもアドバイスをもらったので、新築やリフォームを考えている人は参考にしてみて。
アドバイスをもらいました!
一級建築士 池井健さん
京都市内の設計事務所代表。京都大学や京都建築専門学校で非常勤講師も務めています
Sさん夫妻が親から譲り受け、新居を建てた土地は、東西に長くて南北には家が隣接。日当たりが悪く、1階に採光を確保することが難しい状態なので、工務店からは「寝室を1階、リビングを2階に」と提案があったそう。
ですが、Sさんの譲れない条件は、LDKを1階に設けること、その中で日中は照明をつけず自然光で過ごすことでした。「将来階段を上るのが困難になった場合も、1階だけで暮らせるように」との考えからです。
そこで、採光のために工夫したのが次の2点。一つが、“天窓の設置”です。その光が1階のリビングまで届くよう、2階の廊下(1階の天井部分)に50㎝角のすりガラスをはめこみました。これは、雑誌を参考にしたSさんの発案です。「夏場に熱気がこもって熱いかと思いましたが、換気扇を近くに付けてもらい、快適です」
もう一つが、“各部屋に二つ以上窓を設けること”。これらのアイデアで取り入れた光が行き渡るように扉の一部、そしてダイニング、リビングなどの3部屋を仕切るつりドア全面にすりガラスをつけました。
「朝は東の窓、昼は天窓から光が入って、電気をつけなくても過ごせます」
続いては、2階のリビングの脇に、吹き抜けの坪庭があるSさんの家。
「両側に背の高いビルが立つ日当たりの悪い場所なので、リビングに光や風を取り入れたくて設けました。坪庭があることで、3階の部屋にも日が差します。コーヒーを飲んでくつろげる場所にもなっています」とSさん。
Sさんが新居を建てたのは約10年前。その20年前から同じ場所で暮らしていましたが、修理費用がかさんできたこともあり、建て直しを決意。以前の家は、昼間でも電気が必要な暗さだったため、新居は光を入れることを重視。坪庭に加え、南側の窓は壁いっぱいの大きさにしました。
このほか少しでも光を感じたいと、日光浴ができる場所も造りました。屋上や広めにとった2階・3階のバルコニーです。バルコニーは物干し場としても活躍。バーベキューを楽しむこともあるそうです。
家づくりでは、4社ほどに見積もりを依頼。「将来的なことも含めて、どんな生活を望むのかを考えて決めるといいと思います」とのことですよ。
「まずは家のどこに光が必要か検討を。1階は寝室にするので、明るさは求めないということもあるかもしれません。
天窓や坪庭は、京町家でも採光や通風のために古くから取り入れられてきたアイデア。最近の天窓は、開閉やブラインドの操作をリモコンでできるものもあるので、気軽に使えると思います。天窓からの光を行き渡らせるには、吹き抜けにしたり、半透明の素材を床だけではなく階段などに使ったり。坪庭は、敷地中央に吹き抜けの空間として造るのもいいかもしれませんね」