細い通路の奥に敷地が広がる、旗のような形をした土地。それが旗竿地です。山口琢馬さん宅の場合は、通路が幅1mほどで、玄関扉までおよそ10m続く形状。
この場所を選んだ理由を尋ねると、「費用が抑えられたのと、近所に同じ子育て世代が多かったこと、職場へのアクセスの良さや静かな環境にも引かれて」とか。
長い通路を有効活用するために考えたのが、家庭菜園。通路の先端に1台分の駐車場、半ばの高低差がある部分に階段とベビーカーも通りやすいスロープを、そして奥の3mほどの通り道の脇に幅20㎝ほどの家庭菜園を造りました。カボチャやトマト、サツマイモ、ネギ、イチゴなど季節ごとに家族でさまざまな作物を育てています。
「土地の形が気になったのは最初だけでしたし、環境の良さで選んでよかったです」
通路は、子どもたちが走り回ったりして遊べるスペースにも。夏はテントをおいて中で食事をするなど、活用しているそうです。
「旗竿地は低価格なところがメリット。細い通路を無駄と感じるかもしれませんが、発想を変えてはどうでしょう。考え方次第で庭としても使えますし、車が入って来ず、子どもが外で自由に遊べる空間にもなります。山口さんのように家庭菜園を楽しんだり、収納スペースを外に増やしたり。活用方法はたくさんあると思います」
「来て、こっち!」と、新川(しんかわ)家の子どもたちの案内で2階へ。子ども部屋に行くと、そこには二つのロフトが。母・美菜子さんによると「もう一つの子ども部屋も、はしごが収納できるロフトを取り付けて天井を高くしています」。車2台がちょうど並ぶ幅の、細長い土地に立つ家。居室内を少しでも広くとるための工夫です。
家の中を見渡すと、家具もほとんどありません。
「家具を置くと狭く感じるため、収納スペースをたくさん造り、中にしまうようにしています。ウオーク・イン・クローゼットや天井収納も造ってもらいました。子ども部屋にも勉強机がなく、みんなリビングで宿題をしています」
階段と廊下を仕切る壁にも本棚を設けるなど、細かな工夫があちこちに見られました。
このようなさまざまなアイデアは雑誌から。いいと思ったものを切り抜いてスケッチブックに貼り付け、それを工務店の担当者に見せながら家づくりをしたのだとか。
夫と2人の子どもと暮らすYさんが、およそ8坪(26・39㎡)の土地に3階建ての住まいを完成させたのは3年前。夫の実家や駅からも近い場所で、値段も安めだったため迷いはなかったと言います。
間取りは、1階の廊下奥に約3畳の部屋と浴室、2階にLDK、3階に寝室と子ども部屋として使用予定の一部屋が。駐車場もあります。
限られたスペースを有効活用したいと、ほぼすべてのドアを引き戸に。開いた状態でも邪魔にならないように、テレビ台や洗濯機は置く場所をあらかじめ決め、そこを避けて窓などを設置。さらに、LDKをできるだけ広くするために、廊下をなくして、壁際の引き戸を開けるとそのまま階段へと続く形にしました。
雨戸はシャッタータイプだと上部に収納スペースが必要で窓が少し小さくなると言われ、横引きのタイプに。
「モデルルームを見学したことで、こんな設備があったらいいなとイメージがわいたので、足を運んでみるのがおすすめです」
「建物の壁には、穴をあけるなどしても構造上問題のない箇所があります。そこを無駄にせず、新川さんのように本棚などに活用すると、狭い空間でも収納スペースを確保できますよ。
また狭小地で、壁で仕切った部屋をたくさん確保しようとすると、一部屋が小さくなり窮屈さを感じることが。思い切って扉や壁の仕切りをなくしたり、吹き抜けにするのも手。奥ゆきや高さが出て、広がりを感じる空間になります。
スペースをとる階段をどこに置くかも重要。部屋の中央に設け、踊り場や廊下を造らないことも可能です」
好条件ではない土地で、家づくりやリフォームをするときに大切なことを尋ねると、「常識にとらわれずに」と池井さん。
「『家には、廊下や階段、独立した個人の部屋がある』ことが当たり前と考えがちですが、制約がある土地であれもこれも実現させようとすると、逆に住み心地の悪い空間になってしまう可能性があります。『家族にとって、これって本当に必要?』と考えてみましょう。例えば、子ども部屋を設けなくても、リビングの一角でこと足りるかもしれません」。
さらに、自分たちに合う設計事務所や工務店、住宅会社を見つけることも重要とか。
「見極めるために、電話して話を聞いたり、会って相談するところから始めましょう。相談は無料というところがほとんど。新居で検討している土地があれば、購入前にその情報を持っていき、希望の条件がかなう家が建てられるか聞いてみるのもよいですね」