そばを流れる川のせせらぎや鳥のさえずりに耳をすませながら、山道を歩くこと約20分。新緑のモミジに包まれた古知谷 阿弥陀寺に到着します。
建物に入り、中庭に目をやると、いくつもの“紫がかったピンク”や“白”“黄”“オレンジ”が。茎の細長い、この花の名前は…?
「これはクリンソウです。山の中に群生していたものを、30年ほど前から寺で栽培し始めました」と、同寺の林万里子さん。「虫の交配により、原種の紫色が淡いピンク色に、黄色がオレンジ色にと変化するものもあり、種類が増えていったのだと思います」
クリンソウは、京都府指定の準絶滅危惧種。「湿度や気温などの関係で街中では育ちにくい花なんです。この寺で栽培しなくては」と、林さんは話します。
自然豊かな山の上だからこそ、この景色が見られるんですね。
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岩船寺の境内入り口。目の前にあるのは、“白”や“ピンク”“黄”に囲まれた三重塔です。
そちらへ歩みを進める前に、まずは足元に注目を。小さな“紫”の花、ミヤコワスレが愛らしい姿を見せます。
三重塔へ近づいて行くと、“白”は向かって左手、石塔のそばにあるのが分かります。見上げるほどの高さに咲く、モクレンの花です。
その右隣には、“ピンク”。大きな花びらを持つシャクナゲが、池を囲むように咲き誇っています。池の中へ目を移せば、“黄”が水面に。これは、黄ショウブですね。
「境内は木々に囲まれているので、光の入り方もまばらに。そのためか、同じ花でも場所によって咲く時期がずれたりするんですよ」と、副住職の植村海宥(かいゆう)さんが教えてくれました。
「仏さんと対話する時間を持つきっかけになれば」という思いで花を植え始めた同寺。色彩豊かな“花の寺”なのです。
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愛宕(おたぎ)念仏寺の境内に点在するのは“白”。通路脇や斜面に並ぶ羅漢の石像のそばに、シャガの花が咲いています。近づいて見ると“紫”と“黄”の斑点模様があり、“白”を際立たせるアクセントになっているよう。
湿気があり、日の当たらない場所に咲くというシャガ。嵯峨近辺ではよく見かける花ですが、愛らしい石像との組み合わせはここならでは。花や石像がしっとりとぬれる雨の日に訪れると、また違う魅力が感じられそうです。
シャガのほかにもう一つ、住職・西村公栄さんのおすすめが、境内に何本も植えられたモミジの花の“赤”。一つ一つは小さく細い花ですが、遠くから見ると、一つの大きな花のように見えるそうですよ。