子どもには成長とともに経験するたくさんの〝デビュー〟があります。読者へのアンケートで多かったのが「補助輪なしで自転車に乗せたい」「包丁を持たせたい」。そのほか、一人で電車などに乗れるように、買い物に行けるようにという声もありました。そこで今回はこの4つに注目。サポートの仕方、指導法を専門家に聞きました。新しいことにチャレンジすると、子どもも親も一歩進めるかもしれませんね。
井貝颯良くん(4歳)
ピカピカの赤い自転車を持つ井貝颯良(いかいそら)くん(4歳)の夢は、補助輪を外して自転車に乗ること。その夢をかなえるため、京都サイクリング協会の守時一夫さん、井原秀隆さん、三木武士さんがサポートしてくれることに。父親の友一さんも応援します。
「補助輪を外すと、ハンドルだけで自転車の動きをコントロールすることになります。このハンドル操作が重要です」と守時さん。
第1段階は、補助輪を外し、自転車の左側に立ってハンドルを持ち、8の字を描くように歩く訓練。邪魔になるペダルは外しておきます。
最初はハンドルがあちこち向き、思うように進めませんでしたが、10分ほどでスムーズに歩けるようになりました。
次は自転車にまたがって、片足ずつ地面を蹴って進む練習。三木さんがサドルの後方を支えているので自転車は安定しています。
足の運びに勢いがついてきたところで、両足同時に地面を蹴って進むことに。地面から両足が離れたとたんに自転車が倒れそうになりますが、友一さんや三木さんが「大丈夫だよ」と声をかけます。
コツをつかんで自転車が倒れなくなると、三木さんは「地面を蹴ったら、足はしばらく浮かせたままにしておこう」「目線は前に」と新しいミッションを与えます。
そして数分後。三木さんが静かに手を放し、その場に立ち止まりました。それに気づかず走った颯良くんは1mほど先で転倒。三木さんはすかさず、「今、一人で乗っていたよ!」。わずかとはいえ、“一人で走れた”という事実が自信につながるのです。
「もっと強く地面を蹴ろう」という三木さんのアドバイスを受け、再びチャレンジ。緩やかな傾斜も利用し、一人で乗る距離はどんどん伸びて約5mに達しました。
2回の休憩をはさんで1時間30分。ハンドルがぐらつかなくなり、ブレーキ操作もしっかりとできてきたら、いよいよペダルを付けることに。「ペダルの中心に足を置いて」と守時さんたちに教えられたことを守ってスタンバイ。
「しっかりと足を動かそう!」。三木さんにサドルを支えてもらって自転車をこぎ出す颯良くん。三木さんが手を放しても、転倒することなく数m進めました。ここからは、みるみる上達。こぎ始めに支えられていれば、10m近くを自分の力だけで乗れるようになったのです。何度も転倒しましたが、2時間30分で目標達成です。
友一さんは、「普段はちょっとしたことでも泣きだす颯良が頑張り通したので、驚きました」と感激していましたよ。