亥野颯真くん(4歳)
レタスをちぎったり、プチトマトのヘタを取ったりといった料理の手伝いが好きな亥野颯真(いのりゅうま)くん(4歳)。
「4歳上のお姉ちゃんが自分の包丁で野菜を切る姿を見て、自分も…と言っているんです」と母親の亥野美和さん。
そこで登場してもらったのが、栄養教育や家政学が専門の西彰子さん。長年、京都聖母女学院短期大学の子ども料理教室で指導してきた、頼もしい助っ人です。
調理台は身長の半分ぐらいの高さがベストとのこと。颯真くんに合うよう、踏み台などで高さを調整します。立ち方にもポイントが。調理台と体が並行になるように立ったら、右足を一歩下げます。足を下げることで体が少し横向きになり、調理台と腰の間に自然に三角形の空間ができます。
使った包丁は、安全のためにまな板の向こう側に置き、刃は自分の反対側に向けておくことも教えてもらい、挑戦スタート。バナナ、キュウリ、ニンジンを切り、最終的にそのカット食材でサラダを作ることが目標です。
ようやく颯真くんの手に子ども用の包丁が渡されました。
「柄は、刃元に近い場所を“グー”で握ること」と西さん。「力を入れやすく、刃の動きが安定します」
食材を抑える手は、いわゆる〝猫の手〟。
「指先を内向けに丸めて指先を立て、食材が動かないようにしっかりと押さえます。出っ張っている第2関節に刃を沿わせて切れば、厚みが調整しやすいですよ」
切り方は、「包丁の真ん中あたりで食材が切れるように考えて、刃先を食材の向こう側のまな板に付けます。そのまま、ゆっくり刃を下ろしましょう。こうすると刃が食材に斜めに入りますね。これが重要。垂直に包丁を下ろすと必要以上に力がかかり、切れにくい上に危ないのです」。
レクチャー通りに、バナナとキュウリをカットします。初めは薄く切れていましたが、次第に厚みが増していきます。「もう少し薄くね」と抑える手の位置と刃を置く場所を調整し、最後のニンジンに取り掛かります。最初のカットは、つい包丁を垂直に下ろしてしまったため無駄な力が入ってしまいました。刃の使い方をおさらいして再びやってみるとスパッ。この違いには颯真くんもびっくり。最後は切りそろえた食材でサラダを作って終了です。
初めて包丁を一人で使った颯真くんは、「ニンジンが切れてうれしい。またサラダを作りたい」と意欲満々。美和さんも、「教えるコツが分かりました。これからは、どんどん包丁を使ったり、料理をさせてあげたいです」。
西さんに子どもの包丁デビューの時期を聞くと、「説明が理解でき、約束を守る気持ちが感じられたときだと思います」とのことでした。
次のテーマは、「一人で買い物」「一人で電車などに乗る」です。買い物は、店頭に並ぶ商品の中から目当ての物を選び、お金を払うというさまざまな要素が組み合わされた行動。移動途中の事故も気がかりです。また、一人で公共交通機関を利用させる際も心配なのが事故。迷ったらどうしようと心配も尽きません。
「親から離れ、一人で行動する状況に置かれると、子どもは緊張を覚えるもの」とは、京都ノートルダム女子大学心理学科准教授の薦田(こもだ)未央さん。
「子どもは、成長に伴いさまざまな経験を重ねて、小学生ぐらいの年齢では見通しを持ちながら、少しずつ気持ちや行動をコントロールできるようになります。見通しが持てるように、親が手本を見せたり、子どもの様子を見ながら一緒にやってみて、子どもの経験値を上げましょう」
買い物に連れて行って〝買う〟〝店まで歩く〟などの経験をさせたり、電車の乗り方や気をつける場所は、体験しながら教えるとよいのだそう。
「大人ならなんとなく分かっている距離や時間感覚が子どもは持ちにくいため、指示を具体的にすることも重要です」
では具体的に、電車を利用させるときには何に注意すればいいのでしょう。
京都市交通局高速鉄道部運輸課に聞くと、「一番気を付けてほしいのが事故です。駅構内やホームで走ったり、〝歩きスマホ〟をしていると、ほかのお客さんとの衝突やホーム下への転落など大変危険なことにもつながります。また、電車の扉に指を挟まないよう気を付けるように、よく話をしてください」(担当者)。
また、「行き先の異なる電車に乗ってしまい、迷子になるお子さんはよくいます。困ったときは、制服を着ている駅員か車掌などに声をかけてください。恥ずかしくて声を掛けにくいときのために、紙に乗車する路線名、目的地、乗降駅名を書いて持たしておいてもらえると、こちらも助かります」とのことでした。