高齢者の暮らしを支えるもの

生きがいや仲間づくり/一人になった場合、「孤独を感じながら、暮らさなくてはいけないのではないか」という不安があります(SM、38歳)/テレビを見て過ごすだけになるのは、避けたい(WT、53歳)

「ちょっと外に目を向ければ、さまざまな居場所がありますよ」と内山さんは話します。
例えば京都市内でも、各地域で高齢者が自由に集える交流スペースが開かれています。京都SKYセンターでは約80のサークルや講座が実施される「シニア大学」などもあります。
「おすすめは、各市町村の社会福祉協議会で募集しているボランティアへの参加。地域の身近な所で社会貢献をすることが、仲間づくりはもちろん生きがいにもつながってくるのではないでしょうか。サークルでも、身に付けた特技を子どもたちに教えたり、老人ホームで披露することで、また新たな目標ができたり、交流が生まれていくと思います」

こんな取り組みも!
スポーツをしたり談笑をしたり

老人福祉センター

  • 老人福祉センター
  • 老人福祉センター

高齢者の仲間づくりや生きがいづくりの場である「老人福祉センター」。京都市では、60歳以上の市内在住の人なら誰でも無料で利用できるところが17カ所。そのうちの一つ、中京老人福祉センターを訪ねました。
「カラオケやヨガなどの同好会があります。手芸や健康の講座、工場見学ツアーを実施したことも。ただお茶を飲むだけでもいいんです。気軽に遊びに来てください」とは同センターの沼澤國男さん。
取材日は、的を狙ってリングを投げるスカイクロスの開催日。15人ほどが集まっていて、誰かが投げるたびに「うまい!」「あー、あかん」など、歓声が上がっていました。参加者の一人に話を聞くと、「痩せた太ったとか、そんな世間話が楽しいです(笑)」とのこと。
談話コーナーで話をしていた3人は、「家で一人でいるより、いろいろな人と笑ったりしゃべったりできていいですね」。

急に倒れたとき/自宅で倒れても誰も気付かないのでは…(SS、62歳)/急病や災害時などの不測の事態にしっかり対応できるか心配(ちょこっとママサン、54歳)

「安否確認のために、同じ境遇の知り合いと、毎日決まった時間に電話をかけあうのはどうでしょう。家族とでもいいですね。近所の人に頼めるのであれば、新聞がたまっていないかなどを気にかけておいてもらい、緊急時には家族などに連絡をしてもらうという方法も」(内山さん)
京都市では、老人福祉員が定期的に独り暮らしの高齢者を訪問する活動も行われています。
「費用はかかりますが、行政や企業が提供している見守りサービスもあります。ボタンを押すと、警備員などが駆け付けてくれる緊急の通報サービスや、電気ポットを使うとその情報が家族にメールで送られるサービスなどです」

こんな取り組みも!
ボタン一つで駆け付けてくれます

あんしんネット119(緊急通報システム)

  • あんしんネット119
  • あんしんネット119
  • 「あんしんネット119」の通報装置は二つ。本体とそれにつなげて利用できる枕元用の押しボタン、首から下げておいて緊急時に押せるペンダント型押しボタンです

京都市では、「あんしんネット119」という緊急通報システムがあります。
京都市保健福祉局の担当者によると、「急に体の具合が悪くなったときや火災時に緊急ボタンを押すと、消防局に連絡がいきます。緊急と判断されれば、消防署や近隣の協力員が駆け付ける仕組み。近隣の協力員は家族や近所の方などをご自身であらかじめ申請していただきます」。
相談ボタンもついていて、押すと看護師など専門の相談員がいる相談センターにつながります。「『便秘が気になって』などでも構いません、健康に関することは何でもご相談ください。相談員からアドバイスをします」
利用は、京都市在住のおおむね65歳以上の独り暮らし(昼間独居を含む)や高齢者世帯の人。料金は無料から月額1462円まで、所得に応じて変わります。月に20件ほどの緊急搬送につながっているのだとか。
「独り暮らしの人や、体に何か不安がある人はご利用ください」

日常生活/年齢とともに体力が衰えてきて掃除・洗濯などが思うようにできなくなってきた(SS、62歳)/運転ができなくなれば、買い物に困るだろうなと思う(YK、80歳)/料理をする体力がなく、困っている(NT、67歳)

「要介護の認定を受けている人であれば、掃除や買い物、調理、洗濯といった生活援助が1割、所得によっては2割の負担で受けられます」と内山さん。「介護が必要でない人なら、シルバー人材センターなどを頼っても。家事の援助や草むしりなども、有償で引き受けてくれます」
料理だけなら、地域や企業による配食もあります。
「温かいまま運ばれてくるものや、冷凍などさまざま。味の変化を楽しもうと、何カ所かに頼む方もいらっしゃいますよ。買い物は、インターネットで注文すると自宅に届けてくれるサービスを利用しては?」

こんな取り組みも!
毎日、自宅に夕食が届きます

お待たせごはんですよ

  • お待たせごはんですよ
  • 「いつも自宅まで届けてくれるので助かっています」と利用者の砂野(いさの)さん

城陽市社会福祉協議会では、城陽市内在住の高齢者世帯などに向けて、自宅まで夕食を届ける配食サービス「お待たせごはんですよ」を毎日実施しています。ご飯、おかず、おつゆが付いて1食620円。
「栄養士が考えた、塩分が控えめで栄養バランスのとれた日替わりメニューです。希望に応じて細かく刻んだ状態でお届けすることも可能です。ご利用は毎日でも、週1回だけでも」とは、城陽市社会福祉協議会の西村佳江さん。
基本は玄関先で渡すスタイルですが、難しければテーブルまで運んでくれます。また、届けに行ったときに応答がなく、その後も電話連絡などに応じなければ、緊急連絡先として登録がされている家族のもとへ連絡がいくのだとか。安否確認の意味合いもあるのですね。

介護/介護が必要なときがきたら、どう対処したらいいのか(HM、52歳)/夫に介護してもらうことも自分が夫を介護することも、本人のためになるようにキチンとできるか心配(SS、45歳)

「介護が必要になったら社会的なサービスを利用するために、各市町村の窓口での手続きから始めてください。介護保険制度により、住み慣れた家で最期まで日常生活を送れるような仕組みができています」。暮らしに必要なサービスの利用プランを立ててくれるケアマネジャーも心強い存在と内山さんは話します。
専門職員に介護にまつわる心配事を相談できる、「地域包括支援センター」も各地域に設けられています。 「考えておきたいのは症状が進んだときのこと。認知症により問題行動が出るなどして、家族が管理しきれなくなる場合があります。3カ月まで入居ができる老人保健施設などを利用することで症状がおさまって、また自宅で生活が送れるようになった例もあるので、ケアマネジャーと相談しながら、検討してください」
キチンと介護できるかという声に対しては、「キチンとしなければならないと思う必要はありません。大事なのは、背負い込みすぎないこと。頼れるところは、プロに任せましょう。他人の手を借りることに最初は抵抗を感じるかもしれませんが、お風呂などの介助は技術も必要。プロのサービスを受けることで、介護される側も快適な時間を過ごせると思います」

こんな取り組みも!
かかりつけ医と
病院が連携してサポート

在宅療養あんしん病院登録システム

約1万人が登録しているのが、京都地域包括ケア推進機構の「在宅療養あんしん病院登録システム」。在宅で療養する京都府内の65歳以上の高齢者が対象です。体調悪化時に、かかりつけ医の判断により、事前登録をしておいた病院で診察を受け、必要な場合は入院ができる仕組みです。かかりつけ医と登録先の病院の連携により重症化を防ぐことにつながるほか、入院後は関係機関が連携して、在宅復帰をサポートします。登録は無料です。

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