昔を振り返ると、子ども扱いされるのが嫌な時代がありませんでしたか。
「7歳の親戚の子が自分のことを『もう子どもじゃない』と言っていました。私の3分の1も生きてないのに子どもじゃないとは…」(HY、34歳)、「駅で切符を買おうとしたら、小学生までの子ども料金で案内された。中学生なのにとショックでした」(MH、14歳)。
そして大人になると共感できそうなのがこちら。「18歳の娘に対して『もう子どもじゃないんだから』『まだ子どもなんだから』の2通りを都合のいいように使い分けて子育てをしています(笑)」(ちょこっとママサン、54歳)
〝子ども〟かどうかは、大人の都合で決まってしまう、なんてこともあるようです。
何歳からを〝高齢者〟と呼ぶのかは、難しい問題。
「電車で何歳くらいの人に席を譲ったらいいのか迷う。私からは高齢に見えても、『まだ元気だから高齢者ではない』と思っている人には微妙な顔をされてしまいます」(KK、52歳)のように、座席を譲るときも配慮が必要です。
「48~51歳の4人でレストランに行ったとき、店員の若い女性に『シルバーカードはお持ちですか?』と聞かれました。『シルバーって60歳⁉ 私たちが60歳に見えるってこと⁉』と友達が怒って大騒ぎに。笑い話にしつつも、やはりスッキリしませんでした」(KM、52歳)。これは怒るのも無理はないような…。若い世代からすると、上の世代の年齢の判断は難しいのかもしれません。
「職業紹介センターで求人を探していたとき。応募用紙の〝シニア歓迎〟の欄に丸をつけて、もうそんな年かと悲しくなりました」(TY、63歳)、「60歳以上が対象のシニアカードを発行してもらう際、50代に見られてはいけないと証明書を持参。ところが、確認されることもなくあっさりと作れてしまいました。ちょっとショック」(レッキー、60歳)。このように、〝シニア〟の仲間入りをするのを複雑に思う人は多いもの。
「60代の母によると、『映画のシニア割引はうれしいような悲しいような』とのこと。複雑みたいです」(MN、31歳)。お得なサービスはウエルカムでも、下の世代と線引きされることには寂しさを感じるという意見でした。
「誕生日のお祝いメールをもらったとき、『もうすっかり中年です』と返信。『まだまだよ!』という反応を期待していたのに、スルーされて違う話題に。完全に中年の域に達していたと認めざるをえなくなりました」(NY、46歳)は、相手に気遣いをお願いしたくなるようなエピソード。冗談めかして〝中年〟と言ってはいても、心の中では「私はまだ先」と思うものですよね。
「〝中年〟はおなかの出たおじさん、おばさんのイメージ。そんなふうにだけはならないぞと決めて、20代のスタイルをキープしています」(SK、48歳)と、マイナスなイメージをバネに努力する人も。
ですが、「20代のときは〝中年〟は30~40代だと思っていたけれど、30代の今は『中年は40代から』と思うように。自分の都合のいいように解釈しています(笑)」(MK、33歳)と、目をそらしたくなるのも女ゴコロです。
若い世代をひとくくりにした〝若者〟という呼び方。「若者といわれると、常識がないと思われているのかと不安になります」(YE、27歳)、「昔は『今どきの若者は』という言葉が嫌いでした。そして現在、『今どきの子』という言葉を使ってしまう自分に年を感じます」(NM、40歳)と、〝若者〟に自分が入ることに抵抗を感じる声もありました。
「旅行の企画で見つけた〝若者用プラン〟という旅行の企画。対象は23歳まででしたが、日程を見るとどうやら大学生の長期休暇向けのもの。社会人はもう〝若者〟ではないのかも」(SU、23歳)のように、学生か社会人かも、〝若者〟をどう捉えるかのポイントの一つです。
呼称にまつわるさまざまな読者のエピソードで、カギとなっているのがそのイメージ。当てはまると思う年齢と、各呼称のイメージを尋ねました。
72.6歳〜91.5歳
・経験豊富・病院に通っている
※厚生労働省では65〜74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と区分
61.2歳〜72.7歳
・定年後の人生を満喫
・まだまだ元気
43.4歳〜57.2歳
・働き盛り
・中年太り
・仕事、育児に疲れている
16.9歳〜28歳
・何にでもチャレンジできる、キラキラした時期
・何をしていても楽しそう
・怖いもの知らず
3.3歳〜15.3歳
・無邪気でかわいい
・保護者が必要
アンケートでは、30代以外のほぼすべての年齢がいずれかの呼称に当てはまるという結果に。30代は「フレッシュさはないけれど、世間では若いと言われることも。中途半端な年齢」(MT、30歳)と思われたり、〝アラサー〟〝アラフォー〟などの言葉で置き換えられるため、合う呼び方がないと考える人が多いのではないでしょうか。
〝高齢者〟のイメージとしては、「経験豊富で物事をよく知っている」(SR、49歳)や「体の不調がある」(TT、27歳)などが上がりました。〝シニア〟は「退職して、趣味を楽しんでいる」(IT、43歳)のように、充実した生活を送る人を想像するとのこと。
〝中年〟のマイナスイメージを強めているのが「中年太り」(TK、31歳)、「加齢臭がしそう」(KM、52歳)などの意見。ですが、「子育てや仕事に励む働き盛りの時期」(KS、39歳)と、活躍する姿も思い浮かぶようですよ。
「一番輝いている時代」(NT、47歳)と、うらやむようなコメントが多い〝若者〟。一方で「世間知らず」(MT、40歳)などが、〝若者〟と呼ばれることへの抵抗につながるのかもしれません。〝子ども〟の基準は「保護者の見守りが必要」(YY、47歳)かどうかが焦点になってきそうです。
京都橘大学
健康科学部心理学科
准教授 ジェイムス朋子さん
40〜50代は体の変化とともに、人生においてもさまざまな転換を迎える、葛藤の多い年代です。第一線で活躍するだけではなく次の世代を育てる役割も担うようになり、年齢に関して複雑な気持ちにもなるのです。
60代以降はより自由な時期。いろいろな経験を経て「真に自分らしく生きる」ことができ、充実した日常を重視する傾向があります。〝若者〟というとキラキラした青春時代という印象を持たれがち。でも人生で最も迷いや葛藤も多い時期ですから、「自分はそうではない」と思い、実際よりも自分を年上に感じる20代が多いのかもしれません。
今は人生が多様化しています。昔ながらの年齢イメージだけでは「生き方」が見えない時代です。各年代特有に感じる葛藤は、私たちの心の成長を助け、年齢を経る喜びを教えてくれるものだと思います。