パートやアルバイトで働くとき、103万円や130万円の〝壁〟を気にしている人は多いのでは? 今年10月からは新たに〝106万円の壁〟が加わります。働き方と向き合うきっかけになりそうですね。
働いていると、収入などに応じて課税や社会保険加入の適用対象となります。今回、新たに社会保険の適用が拡大されることに。それが“106万円の壁”です。
この新しい“壁”について、社会保険や労働に関する制度、法律などの専門家である社会保険労務士の海沼典子さんが解説してくれました。
「“106万円の壁”の対象は、法律で月収8万8000円以上と定義されています。106万円はそこから換算されたおおよその年収。この収入を上回ると、自ら社会保険に加入して、厚生年金や健康保険といった社会保険料を支払うことになります」
ただし、106万円以上の年収がある人全員が対象になるわけではありません。
「大きなポイントは従業員501人以上の企業で働いていること。他にも、企業と契約している労働時間数や勤務期間などの諸要件があり、それらを全て満たす人が対象となります」
106万円の壁による影響を受けやすいのは、「会社員または公務員の夫がおり、その扶養内で働いている比較的大きな企業のパートタイマー」と海沼さん。厚生労働省による2015年の試算では、約25万人が該当するとのことです。
①〜⑤の全ての要件に該当する人が適用対象となります
※正確には「社会保険の被保険者」
今回の制度改訂をより理解するため、既存の103万円、130万円の壁についても教えてもらいました。
「103万円は所得税法の規定で、年収が103万円以上になると配偶者の所得税の扶養から外れて、その人自身に所得税を課税。さらに、『配偶者控除』から、控除を受ける人に所得制限がかかる『配偶者特別控除』へと切り替わります」
103万円は“所得税・配偶者控除の壁”なのですね。
「一方130万円は、社会保険の被扶養者になれるかどうかの壁。今回の106万円は、自ら社会保険に加入しなければならない基準で、新たな“社会保険の壁”と言えるでしょう」
106万円の要件である“501人以上の企業”について、法律上では“当分の間”とされていると海沼さん。
「施行後の動向を見ながら検討され、2019年秋には新たな動きがあるでしょう。少子高齢化による保険料確保のため、106万円の適用範囲は拡大の方向へ向かうと予測されています」
加えて、昨年の税制改正で配偶者控除の廃止を検討。今回は先送りされたものの、今年末や来年、再び浮上してくる可能性が。「今後の動向には注意が必要です」
基準ごとに収入の算出方法などが異なります
今年10月から
社会保険に加入、保険料を支払う※1:その年の年収(賞与・残業を含む、通勤手当は含まない) ※2:配偶者の所得が1000万円以上の場合は、「配偶者特別控除」の適用外 ※3:就業先との契約に基づいた見込み額(賞与・残業・通勤手当は含まない) ※4:就業先との契約に基づいた見込み額(賞与・残業・通勤手当を含む)
「対象者には、勤務先から説明会や面談などが行われると思います。制度について正しく理解することも必要ですが、壁を越えてキャリアアップのために前向きに働くことも大切です」