教授の研究、分かりやす〜く教えてください!

3次元空間が4次元空間にどのようにつながっているか

立命館大学
理工学部
教授 福本善洋さん

3次元の空間とは前後左右、上下に動ける空間。今、私たちがいる世界のことです。では、4次元の空間とは?

「例えば、前後左右、上下以外に過去未来にも動ける空間、いわばタイムマシンが動ける空間といえましょうか。宇宙は4次元空間だと考えられています」と、立命館大学理工学部数理科学科教授の福本善洋さん。

「私の研究は3次元空間が4次元につながるとしたら、どのような形になるかを考えること。果てしなく広がる宇宙の形を解き明かすことにもなります」

福本さんは〝トポロジー〟という考えで図形の性質を探ることから、研究を進めているとか。

「ひもで三角形をつくったとしても、動かせば丸にも四角形にもなりますよね。トポロジーとは、そのように、ある図形を動かして違う形にしても、同じ図形だと捉える考えです」

ひもだと分かりやすいですね。でも、動かせない複雑な図形がいくつもあるときは、どのようにそれらの違いを確かめるんですか?

「ある数式があって、研究者はそれを使って確かめます(笑)。ですが、例を挙げましょう。

ここに2本のワイヤがあるとします。まず1本で輪をつくり、そこにラップで膜を張ります。次に、もう1本のワイヤを手に取ります。先につくった輪にくぐらせてこちらも輪にし、知恵の輪のような形をつくるとすると、膜が邪魔をしてしまいます。なので、膜にワイヤを通す穴を1つ開けてくぐらせることにしましょう。

次に、別の2本のワイヤを用意します。1本のワイヤで丸い輪をつくり、ラップで膜を張ります。もう1本のワイヤを丸い輪の中に通し、そこで細長い輪をつくるとします。ここでも膜が邪魔をするので、穴を開けます。2個開けてワイヤを通せば、細長い輪がつくれますね。

このように穴が奇数の場合と、偶数の場合とでは、トポロジーでは違う図形と考えます。ただし、膜は表裏の区別をつけて張ります。仮に同じに見える図形でも、一方の穴が奇数でもう一方は偶数なら、二つは違う図形です」

とはいえ、偶数同士、奇数同士であっても同じ図形だとは限らないそう。「どちらも偶数、もしくは奇数だとわかったら、さらにほかの方法で探っていき、結論を出すのです」

先ほどのように膜を張った図形は、1次元が2次元につながっていると福本さん。

「1次元は線で表せる幅のない空間。ワイヤがそうです。2次元は平面のような世界。ワイヤを輪にして膜を張れば、平面の広がりができますね。このように1次元が2次元につながるなら、3次元の図形も同じこと。4次元につながります。ワイヤでつくった図形の性質を調べる方法を4次元に応用させ、研究を深めています」

物流インフラが及ぼす文化的・経済的影響

同志社大学
商学部
教授 石田信博さん

食べ物、服など、私たちの身の回りはモノであふれています。

「そうしたモノを船や飛行機、鉄道、自動車を使って運ぶ流れを〝物流〟と呼びます」と、同志社大学商学部教授・石田信博さん。まさに〝物〟の〝流〟れですね。

「乗り物だけではモノは運べません。船だと港、自動車だと道路が必要。乗り物を動かすための設備が〝インフラ〟です」

では、物流とそのための設備は、どのような〝文化的・経済的影響〟があるのでしょうか。

「東南アジアには、さまざまな地域へ行く船、飛行機が集まる、便利な港や空港がたくさんあります。効率よくモノを運びたいと考える会社は、まず東南アジアに商品を届け、そこから目的地へと運ぶんです」

港や空港の周辺は物流に携わる人が集まり、工場や家が立つ都市となってにぎわっているそう。

「大都市・シンガポールがその例。港や空港といった物流インフラがお金を生み、経済が活発な街になりました」

そしてもう一つ、〝文化的〟な影響とは?

「周辺には、港や空港を利用する外国人向けの店などが増えます。シンガポールに見られるのは欧米の影響。フードコートや高層マンションがあるように外国文化が交ざった都市になるんです」

東南アジアの発展は、物流インフラが関係していたんですね。

「シンガポールでは、24時間体制の空港が多くの会社から好評。そんな長所を取り入れれば、日本の都市もまだまだ発展するのではと思います」

音響心理学の研究

京都市立芸術大学
音楽学部
教授 津崎実さん

京都市立芸術大学音楽学部教授・津崎実さんの専門は音響心理学。音楽を聞くと安らぐ、といったことでしょうか。

「音楽というよりも、一つの〝音〟を聞いたとき、人がその音をどのように感じるかを調べています。低い音だと、人はどう感じるでしょうか。恐怖や不安といった感情を持つと思います」

低い音が怖いのは、人の声でも同じだそう。

「オペラの男性だと、ヒーローはテノール、悪役はバリトンの声で演じる傾向に。大きな体の方が低い声が出やすいのが恐怖の理由。大きなものは怖い、と本能的に感じているんです」

さまざまな音の感じ方を調べれば、生活に役立つものの開発にも応用できるといいます。

「健康な耳は小さい音だけを大きくする働きを持っていますが、高齢になったりするとその能力が衰えます。サポートをするのが補聴器ですが、単純な補聴技術だと全ての音を大きくしてしまいます。聞こえている音まで大きくなるため、補聴器を着けると『うるさい』と感じる人もいます」

改良するには耳の基本的な機能を調べ、音の周波数などに応じて柔軟に働く聴覚の仕組みを取り入れていく必要があると話してくれました。

思想史の観点からのマンガ研究

京都精華大学
マンガ学部
教授 吉村和真さん

「マンガを読む暇があったら勉強しなさい!」と怒られた経験がある人は多いかもしれませんね。学問と正反対の位置づけをされがちな漫画を研究しているのが、京都精華大学マンガ学部教授・吉村和真さん。

「漫画はわざわざ研究する必要がないと考える人も。ですが、学問として捉えると、私たちの考えは漫画に影響されていると分かります」

研究のキーワードは〝思想史〟。思想の歴史、つまりある考えが一般的に広まる背景と、漫画との関係を探っています。

「子どものときに見聞きしたことは、物事の考え方のベースになります。私は漫画から発展したアニメも研究の対象としています。例えば、子ども時代に『アンパンマン』のようなアニメを見て、正義と悪の認識が根付くことがあるんです」

漫画は人が持つイメージにも関わっていると吉村さん。

「優れた人はスタイルが良く、目鼻立ちが整っているというイメージはありませんか? これは多くの漫画のヒーローやヒロインの特徴です」

漫画に描かれた〝すてきな人〟が、どんどん世の中に浸透していったんですね。〝思想史〟をキーワードに見ると、娯楽とされがちな漫画も奥深さが感じられました。

記者が印象に残ったのが、自分の専門について語るときの、教授たちの生き生きとした表情。興味のあるテーマを考えることが、とにかく楽しい!という気持ちが伝わってきました。 この研究が世の中を変えるかもしれないと思うのも、ロマンがあります。今の子どもたちは、これからどんな心ひかれるテーマに出合えるのでしょうか。

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