「海外からの認知度は高く、特に欧米の方から人気があります」と話すのは、「ザ・リッツ・カールトン京都」のセールス&マーケティング部長・渡邊裕文さん。
渡邊さんによると、2014年のオープン当時、外資系のラグジュアリーホテルは京都では少なかったそう。
「世界的な観光都市・京都には、潜在的にラグジュアリーホテルのニーズがありました。国内外の京都を訪れる方々をおもてなしするポジションを目標としたわけです」
外国人宿泊客も多い同ホテルが特に力を入れているというのが、20種類の「ゲストアクティビティプログラム」。京都の町をスタッフと一緒に走ったり、ホテルの庭師とともにミニチュア日本庭園をつくるプログラムが評判です。
「貴重な体験をしていただきたいのはもちろんですが、お客さまとコミュニケーションをとるという目的もあります。どんなサービスが求められているのかを知るチャンスにもなっています。旅行客に質の高いサービスを提供することで、当ホテルだけではなく、京都の世界的価値の向上を目指しています」
空き家をリニューアルした宿泊施設「柚(ゆ)の木庵」が4月にオープン。東山区粟田学区の住宅地にあります。
開業したのは空き家の利用を進める「あきや活用まちづくりセンター」。地域の課題について市民が取り組みを行う、京都市主催の「京都市未来まちづくり100人委員会」から発足したチームです。
同センター代表の赤﨑盛久さんは「築80年の町家を改修しました。長い間人が住んでおらず、畳は白アリにくわれているような状態。倒壊の恐れもあったんです」と話します。
そこで、掘りごたつや中庭は以前のものを生かしつつ建物を補修。土間だったスペースにはキッチンがつくられました。
「素泊まりなので、食事は自由。近くの古川町商店街で地元の方と同じように買い物をすれば、京都の生活の一こまを見られるのではないでしょうか」
地域住民との交流の場も設けられています。
「祭りや地蔵盆、お茶会など、自治会のイベントに参加するチャンスも。この地域で積極的に取り組んでいる白川の清掃活動も呼びかけています。清掃の参加者からは、美しい光景は住民によって守られているのですね、との言葉をもらいました。観光だけではなかなか気づけない京都の魅力を知り、いずれは移住したいと感じてもらえたらうれしいです」
懐石料理を食べ、湯船につかり、布団で就寝。旅館「南禅寺畔 八千代」には、そんな日本ならではの体験を求めて多くの外国人が訪れます。
「外国の方を積極的に受け入れ始めたのは15年前。当初は文化の違いに戸惑うこともありました。下着を着けたまま大浴場を利用する人がいて驚きましたね」と振り返るのは、おかみの中西裕子さん。
驚いてばかりはいられない、と大浴場には利用法を書いた紙を張るように。料理の献立は食べやすいコースを設定するなど、海外旅行客へのもてなしに取り組んでいったとか。「外国語のホームページの作成や、海外の旅行情報サイトにも登録しました」
そんな中、予想外の反応に出合ったという中西さん。「当館には築100年の本館と新館があります。ユニットバス、トイレが付いた新館を希望するケースが多いのかと想定していたのですが、むしろ逆。昔ながらの本館が人気だったんです」
趣のある木造の建物に泊まりたいとの希望を受け、昨年から今年にかけて一部の客室をリニューアル。
「大浴場に抵抗がある方も多いので、各部屋に半露天風呂を付けました。ここからは、小川治兵衛がつくった庭園が眺められます」
そのうち一室は長期滞在向けに洗濯機や電子レンジ、食器を用意。マンションタイプの別荘をイメージした部屋です。
「ここ数年は、特に京都の文化を体験したいとの思いを持って訪日する方が増えています。より充実した時間が過ごせる旅館にしていきたいです」
住民は地元の宿に泊まる機会は少ないもの。ですが、「ホテルビナリオ嵯峨嵐山」のように、宿泊以外の要素が充実した施設も。全国手話研修センター「コミュニティ嵯峨野」を、幅広い人が利用できるようにと改装したホテルです。
併設されているのは「ブック&カフェ Tutti(トゥッティ)」。カフェスペースのほか、本や雑貨が取りそろえられています。商品は書店「ふたば書房」がセレクト。京都関連の本や和雑貨などが並びます。
さらに、壁には地元の人や障がい者のアート作品を展示するスペースが。宿泊客、地元住民、観光客と、さまざまな人が足を止め、作品に見入っています。
子どもたちの思い出が詰まった小学校がホテルに。5年前に閉校となった元清水小学校(東山区)を利用したホテル(名称未定)の計画が進んでいます。推進するのは「NTT都市開発」。1933年にできた校舎を利用して建てられます。
地域住民からの寄付により創立した小学校という点を重視し、地域のためのスペースも併設。集会所のほか、元清水小学校の写真や動画を展示するアーカイブミュージアムの設置が検討されています。子どもたちが通っていたころのにぎわいを感じられるかもしれませんね。
グラウンドも地域のために整備することを検討しているとか。早ければ2018年に開業する予定です。
カナダ発の高級ホテルブランド「フォーシーズンズホテル」は、日本で2番目となる「フォーシーズンズホテル京都」を、妙法院が隣接する東山エリアに10月中旬オープン予定。
180室の客室をはじめ、旬の素材を堪能できるレストラン、約800年の歴史を持つ庭園にある茶室、広々としたスパなどを用意。自然光が差し込むチャペルや宴会場といったウエディング施設も充実しています。
今月オープンした「ホテルグレイスリー京都三条 北館」の隣、新京極通沿いのスーパーの跡地に、「ホテルグレイスリー京都三条 南館」が2017年5月に開業します。全128室の部屋は全てツインルーム。
外国人の利用を想定し、北館と同じく京都の文化を際立たせた造りの特別室が設けられる計画です。