ライフスタイルに合った家で暮らしたい─。住まいへの考え方が人それぞれ異なるように、家づくりのスタイルも多様化しています。今回紹介するのは、「えっ、この建物を住宅に?」という意外な発想で住まいをつくり上げたケース。固定観念を捨てることも、自分らしい住まいをつくる鍵になるのかもしれませんね。
「結婚して子どもが生まれ、家族との時間をもっと増やしたいと思ったのがきっかけでした」
洋菓子教室を主宰する小林かなえさんが目指したのは自宅と職場の共存。
「子どもや生徒さんのため、立地は環境がよくアクセスも便利な場所に。建物は教室の定員が最大9人なので、広すぎず、狭すぎず。改装や新築も視野に入れながら5年間探した結果、条件をクリアしたのが築35年の中古ビルだったんです」
1階がガレージ、2階から4階は賃貸オフィスだったというこの建物。
「内部はコンクリートの構造く体がむき出しで、老朽化が進んでボロボロ。フロアは細かく仕切られ、窓が少ないので光が通らず。生活や教室に必要な機能も整っていませんでした」
リフォームでは、壁や柱を取って間取りを一新し、大きな窓を新設して、広さと明るさを確保。水道・ガス・電気の設備もすべてやり直したそう。
「教室は重量のある調理機器を使ったり、人の出入りが多いので、強度があって音の響きにくいコンクリートの建物にはメリットもありました」
間取りや設備については、約7カ月かけて小林さんが考えたものを設計士が図面化。
「時間や労力はかかりましたが、完成したときの気持ちは『やればできるんだ!』(笑)」と小林さん。「仕事と家庭との両立もスムーズになり、みんながハッピーな出来映えになりました」
設備会社が所有していた倉庫を自宅に改修したのが、設計士の杉本さん夫婦。
「住まい選びは立地優先。選んだ建物は、天井は低く、断熱性も皆無。真っ暗で寒かったんですが、強度に優れ構造もしっかりしていたので、住居として使えると直感しました」と夫の孝雄さん。
「敷地内には設備会社のショールームが併設しており、職住一体の暮らしを希望していた私には可能性を感じさせる物件でした」
住居への転用は、建物に採光と広がり、住み心地のよさを与えることが課題だったと2人。
「隣家との距離が近いので、最上階の3階をLDKにして4カ所の天窓を設置。幅が狭かった階段は付け替え、階段スペースを吹き抜けにして、上部から家全体に光を取り込むようにしました」(妻・美代子さん)
「京都の寒い冬を乗り切るため、断熱材をギュウギュウに(笑)。改修しがいがありました。6年たった今でも、仕上がり、住み心地ともに満足しています」(孝雄さん)
現在、自宅前建物で設計事務所を営む美代子さんは、家の新築や改築を考えている人がイメージをつかみやすくするため自宅を見てもらうこともあるのだそう。