夫は料理を出しても、スマートフォンを見たりしながら、ダラダラと食べるので料理が冷めてしまいます。私は温かい料理は温かいうちに食べてほしいと思いますし、ほかのことをしながらではなく、食事中は料理を楽しむのが作った人に対する礼儀であると思います。気持ちを分かってほしくて、「私はこのように育ってきた」と話すと、夫は「俺の親の育て方が悪いというのか!」と怒り出します。
「『自分が正しく、夫が間違っている』という前提が夫の怒りにつながっていると思います。ですので、まずはこの前提を棚上げしてみて」と岡本さん。
「ご主人は、会社では納期や礼儀に縛られているから、家ではゆっくりしたいのかも。だから思いっきりマナー違反をして甘えているのです。Bさんはいわば〝料理の論理〟、ご主人は〝甘えの論理〟とでもいうか、つまり別々の論理で行動しているんです。それにBさんは、『このように育ってきたんだから』という意識を変えるのに罪悪感があって、自分自身を縛っているのかもしれません」
夫婦ゲンカに発展しそうな問題は、どちらかが大きく構えて、というのがポイントになるかもしれません。
「夫婦として信頼関係を深めたいから、気になるのですよね。だったら、結婚は異文化交流と捉えましょう。夫婦は違う家庭で、違う文化で育ってきた者同士が新しい文化をつくること。どちらが正しいということはありません。『なんでそうなのかな?』と、相手の文化に興味を持ってみて。Bさんの夫の場合は、子どものとき両親が忙しくて一人で食事をしていたとか、食事をリラックスの時間と捉えているから好きにさせてほしいのかも。何がOKで何がNGか、2人が納得できる形を探ってみてもいいのでは」
「主夫をさせるか、いやなら別れなさい!」とズバリ。いやいや、ちょっと待ってください円笑さん!
「僕も料理をしますから、苦労は分かります。だから夫に食事を作らせて同じことをしてやんなさい。そうすれば妻の気持ちが分かりますよ。でも育ってきた家庭のことをいうのは角が立ちますね。『あなたにほれてるから、おいしいうちに食べてほしい』なんて言って驚かせるのはどう?」とアドバイス。
これなら、〝別れる〟なんて最終手段に出ることはありませんね。
朝の満員電車で隣の人との間を詰めずに、ゆったりと座っている人が多いと感じます。それは若い人に限ったことではなく、中年の人もそうですし、男性・女性問いません。目の前にたくさんの人が立っているのに、こんなふうに座ることができる神経が信じられないと、毎朝見ています。
実はコレ、暗黙のルールに従った結果なのだそう。
「電車の中では互いにスペースを譲り合うルールがある一方、『知らない人同士、なるべく関わりをもたないようにしよう』というルールも存在するんです。人や刺激が多い街中で自然と生まれたふるまい方といわれています。Cさんは〝譲り合いのルール〟が勝っていますが、〝関わらないルール〟が強い人は、隣の人に気を使って距離を詰められないんです」
これはエレベーターやレストランなどでの席の座り方にもいえるとか。ゆったり座っている人も、それはそれで神経を使っているのかも。
「Cさんは、全体の状況に気が付き、社会正義や社会貢献への意識が強い方ですね。『信じられない』という言葉に、憤りのエネルギーを感じます。その思いに電車の人々は気付かず、ただ疲れていて座れてほっとしているのかもしれません」
「詰めてください」と言うのもいいですが、高橋さんの提案は、みんなが自然と詰めて座ってしまうようなアイデアを考えて電鉄会社に届けること。
「それが実現されれば、Cさんの社会貢献に対する高い意識も満たされると思います」
「同感です。僕は『ハイッ、ゴメン』って割り込んでいきます。年寄りの特権を利用しているわけじゃないけどね(笑)」と言う円笑さん、76歳。
「昔は世話焼きの人がいて、声をかけてくれたりしたけど今はそんなことない。荷物を床に置いたりしてるでしょう。昔の日本の道徳心が失われてきたよね」とちょっぴり嘆き節。でも、座れそうなスペースがあれば、思い切って声をかけてもいいのではとも話します。
「『ちょっと寄ってくれます?』と丁寧に言えば分かってくれますよ」
職場の後輩のことですが、ミスをして人に迷惑をかけても知らんぷり。「自分は悪くない」というような発言をします。私はわざわざことを荒立てたくないので、その態度について注意をするようなことはしませんが、腹は立ちますし、その分、ストレスがたまってしまいます。後輩とはいえ年齢は上なので、注意するとしても言いにくい部分があります。
「後輩は自分からミスを認めないような職場環境で、これまでキャリアを積んできたのかも。でもDさんは、ミスを認めて理解し合う職場が過ごしやすい。つまりDさんにとっては自分が正しく、後輩が間違っている。この考え方も、一度棚上げを。対等に互いに〝変わった人〟に見える関係であると考えれば気は楽に。そのうえで、先輩としてこの職場ではミスを認めることでうまくやってきた文化があるから、そうしようと話してみて」
「Dさんはスムーズに仕事ができる職場にしたい。だから、本当は態度を改めてほしいのでしょうね。この場合は、ケース1のように関わらないように距離をとることは難しそう。であれば、その人が過去に頑張ってきたことなどを話したりして、仕事以外の場面で年下として敬意を払う姿勢を見せれば、その人との距離が縮められるかも。それとは別に、ほかの後輩にも業務上必要な事柄なら『気を付けよう』と注意を。みんなに平等に接することが大切です」
これは上司にお願いして言ってもらうのもいいですね。
「はなし家は年齢、学歴、財力、たとえ私のような男前(笑)であっても、関係ありません。少しでも早くこの世界に入れば、その人が先輩。兄さん、姉さんと呼びます。この場合、仕事のためであれば注意してもいいのでは。ただし、改善のため。悪口ではありません。〝腹八分目に医者いらず〟っていうでしょう。食事だけではなく、人に注意するときも、80%ほどに抑える気持ちで話をしたほうが伝わります。そのかわり、ほめるときは120%でほめてあげてくださいね」