歯磨きは歯を守るだけではありません。
歯のトラブルなどで口の中の環境が悪化すると、全身の健康にも影響があるそうです。
京都府歯科医師会
広報担当理事 歯科医師
石原宗和さん
11月15日は「口腔(こうくう)がん検診の日」。「口腔がん」とは、口の中全体(口腔)にできるがんの総称で、発生する場所によって「舌(ぜつ)がん」「歯肉がん」などに分類されます。
「近年、日本では口腔がんの罹患(りかん)率や死亡率が増加傾向に。この病気の原因は、喫煙や飲酒のほか、口内環境との関わりも指摘されています」と、京都府歯科医師会の広報担当理事を務める歯科医師・石原宗和さん。
「歯垢や歯石などの汚れを放置した不衛生な口内、治療できていない虫歯、損傷したかぶせ、合わない義歯などがリスクを高める要因になります」
口腔がんは早期の発見・治療によって、完治する可能性は90%以上とのこと。
「口腔がんは“見える”がんであり、自分で発見しやすいのが特徴。毎日のケアをしっかり行うと同時に、口内のチェックも習慣にしましょう。『腫れやしこり』『赤っぽい、白っぽい変色』『口内炎がなかなか治らない』といった違和感があれば、早急に歯科医に相談してください」
「歯周病の炎症を放置すると、歯周病菌が血流に乗って全身に運ばれ、さまざまな影響を与えます」
血管内に入り込んだ歯周病菌によって、動脈の壁が盛り上がり、動脈が狭くなって狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを発症することもあります。血糖値を下げるインスリンの働きを低下させ、糖尿病が悪化するケースもあるのだとか。妊娠中に子宮に菌が侵入すると胎児の発育を妨げたり、早産を誘発するリスク要因になると石原さん。
「歯周病菌などの口内の汚れが誤って気道に入り込むと、肺が炎症を起こして『誤嚥性肺炎』に至る場合もあります。
特に高齢者は、異物に対する反射力や体の抵抗力が低下しているため注意が必要。歯を失ったとしても、義歯をきちんと洗浄したり、舌の汚れを取るなどして、口内環境を清潔に保つよう心がけてください」