浅草寺の雷門といえば東京観光の定番スポット。そこで目を引く大きなちょうちんの製作を担うのは、江戸時代から続く老舗で、下京区に本店を置く髙橋提燈(ちょうちん)。昭和46年から、約10年に1度のペースで新調していて、現在のものは平成25年に作り替えたばかり。上下の金枠を含めると高さは390㎝、直径330㎝、重さ770㎏というビッグスケール! 山科区にある工場は2階の床を可動式にしてあり、製作時には床を1階におろして吹き抜けにし、スペースを確保するのだとか。
竹を割って〝竹骨〟を作るなど、すべての工程を行う同社。この大ちょうちんには材料の準備に約1年、製作に約3カ月を費やします。同社会長の髙橋康二さんは「小さいちょうちんをおろそかにすることはありませんが、大作を作る際は、やはり恥ずかしくないようなものをと気を使います」。
今、雷門にあるのは同社製のものでは6代目。実は5代目までと少し違う部分があるそう。
「迫力を感じてもらえるように勢いのある文字をと毎回心掛けています。現在のちょうちんには文字の奥行きを出すために、文字の周囲に描く〝ひげ〟にグレーを使っているんですよ」と代表取締役社長の川﨑正彦さん。次回雷門を訪れた際には、そんな細部も注目してみては。
写真の2人が手にしているものは…。これは、忠実に再現した心臓の立体モデル。内部の空洞や血管までリアルに作られた〝心臓シミュレーター〟で、伏見区の「クロスエフェクト」が製造しています。
「病院で撮影したCT画像をもとに、個々の患者さんのものを作るフルオーダーと、成人の心臓をモデルにしたスタンダードモデルがあり、前者は手術前の医師の確認などに、後者は若手医師の教育用として全国で利用されています。臓器の外形を製作するだけならそう難しくはないのですが、内側まで正確に再現するのに苦労しました。独自技術を使い、ウレタン製で軟らかく、手術時のようにメスを使用できるのが特徴です」と同社営業グループ・石田寿人さん。
この商品は企業が新しいプロジェクトを進める際の試作品製作を行っている同社が、大阪の国立循環器病研究センターと協力して開発・製造。
「フルオーダーは、心臓が小さく、難しい手術となる小児患者さんがほとんど。これまで医師たちは、CT画像などから頭の中でイメージするしかなかった心臓を、手術前の段階でこうして見ることができます。1人でも多くの命を救うために役立ててほしいと思っています」
620種、3万点の生き物を飼育・展示している大阪の水族館「海遊館」。そんな生き物たちの元気な姿の舞台裏にも、京都の企業の技術を発見しました。
その会社は、本社を四条烏丸に、研究所を地下鉄「鞍馬口」駅近くに構える「アークレイ」。糖尿病の検査機器といった臨床検査用機器や体外診断用医薬品の開発・製造・販売メーカーです。同社の2つの検査機器が、2006年から海遊館で使われています。
それが、血液検査を行う「スポットケムEZ」と、血液の電解質分析をする「スポットケムEL」。大きい方の「EZ」でも、幅約33㎝、奥行き約20㎝のコンパクトな箱型。これで検査を―?
「採取した血液を、内蔵している遠心分離機に少量入れて検査します。省スペースで、その場で結果が出るのが特徴です。EZは一度に9項目の血液検査を、ELはナトリウム、カリウム、塩素の3項目の分析ができます。結果の数値の見方は異なりますが、海遊館で使われているのは、人を検査するのと同じ機器。これらを調べることで、体調に変化がないかを知ることができます」と同社広報宣伝部の山本晃さん。
海遊館では、イルカやアザラシ、ペンギンなどに加え、ジンベエザメをはじめとする魚類の血液検査も実施しています。