近年、空き家が問題視されるようになっています。そんななか、住み手がいなくなったり、老朽化した建物などを〝再生〟させ、新たな取り組みの場として活用するケースも増加中。もともとの役割を終えた後、新たな命が吹き込まれたことで、さらに人々が集まる場所となっています。
構想、約20年。京都市中京区壬生の元・友禅の染め工場を改装、今年5月に「おもちゃ映画ミュージアム」をオープンさせたのが、長年、映画の研究をしている太田米男さん。
太田さんがこの物件を紹介されたのは、昨年10月のこと。初めて見たときは、天井も床もボロボロでした。それもそのはず、こちらは空き家になって約10年経過していたのですから。
建物は、住居に使われていたという手前側が2階建て。奥は染め物が干せるよう吹き抜けになっています。「この間取りは、映画を上映するのにぴったり」とピンときた太田さん。吹き抜け部分の壁を利用して映画を上映すると、1階からも2階からも楽しめると想像がふくらみました。
同館に入るとまず目に飛び込んでくるのが約150点の映写機。貴重な映画フィルムなども展示されています。
「時間をかけて、いろいろな人が集うサロンに育てていきたいです。自分で作ったフィルムを手回し映写機で上映するワークショップも企画中。映画やアニメのルーツをぜひ見に来てください」と太田さん。
今春、京都市がまちづくりに取り組む地元の住民とともに千本北大路にある「楽只(らくし)市営住宅」の7棟の店舗兼住宅で始めた「1000KITA PROJECT」。大規模改修や建て替えなどで市営住宅を再編するにあたり、この場所にふさわしいまちづくりを模索しようとスタートしました。
老朽化や空室が目立ってきたこの建物で、最初に取り掛かったのが4つの空き店舗を活用した取り組みです。ボルダリング(フリークライミング)体験やカフェ、雑貨販売などを試験的に実施。こういった店を始めることで、人の動きや反応を探っています。
「お店があるのは、千本通沿いにたつ棟の1階部分。統一感をもたせるために、軒先に同じテント屋根をつけています」とは、まちづくりに関わるNPOの代表・木村日出夫さん。
京都市すまいまちづくり課の担当者も、「大学が近くにある大通り沿いで人通りも多く、可能性が感じられる場所。まずは、さまざまなトライアルをしていこうと思っています」と話します。この4店舗の活用は、まさにその“試み”の第一歩。
「“1000KITA”の愛称でいろいろな人に親しんでもらい、たくさんの人に訪れてもらえるような場所にしていきたい。北区の地域活性化の拠点になれば」と木村さん。
向日市の住宅街に現れるトタンの壁の建物。ここ「むこうスタジオ」は、若手アーティスト5人がシェアをして、各自の創作拠点にしているアトリエです。
「十数年前までは、竹材を扱う会社が竹を乾燥させるために使っていた倉庫でした。美大卒業後も京都で制作をしていきたいと考えていたとき、この物件の1階を3つ、2階を2つのスペースに仕切り、アトリエとして一緒に使わないかと同級生から誘われたんです」と、代表の清田泰寛さん。清田さんは主に油絵を制作しています。
卒業後の活動拠点を探している人も少なくないという美大生。作品のジャンルやテーマもバラバラの清田さんと前川紘士さんを含めた“何となく知っている”5人が集まり、2011年3月に「むこうスタジオ」がスタートしました。
「天井が高いところが気に入りました。大きな作品を作ったときにスケール感がつかみやすいんです」と前川さんが話す通り、床から天井までは約8メートル。竹材が取り扱いやすいように建てられたことがよく分かります。
今年5月には、オープンスタジオを開催。今後も同様のイベントを年1回のペースで行っていく予定だそう。