「高齢者を地域で見守りましょう」。よく耳にする言葉ですが、具体的に何をすればいいのか、よくわからないという人もいるのでは。「安否確認」「生活サポート」「認知症支援」の3つに分け、さまざまな活動を紹介します。地域の一員として自分には何ができるのか、ヒントを見つけてみて。
「一言で高齢者といっても、困っていることは人それぞれ。気軽に話せる間柄になることが理想です」とは、佛教大学福祉教育開発センターの金田喜弘さん。
「高齢者は何から何まで助けなければいけない、という思い込みにも注意が必要です。ほどよい付き合い方を考えていきましょう。高齢者からは助けを求めるのを遠慮してしまう、という声も。助け上手、助けられ上手を目指し、関係を築いていければ」
日頃のあいさつや、ポストに郵便物がたまっていないか確認するなど、まずはできることから。認知症サポーター養成講座に参加するのも一つだといいます。
「知識があれば、徘徊(はいかい)などにも戸惑うことなく対応できると思います。何かあったら、民生委員や地域包括支援センターなどに相談を」。時には専門家と連携して取り組むことも必要なんですね。
そしてもう一つ大切なのが、高齢者と地域をつなぐ出会いの場をつくること。「高齢者は同世代の人が亡くなったりして、知り合いが少なくなっています。そうした場所に子育て世代や若者が参加することで、地域の協力体制の強化にもつながるかもしれません」
犬の散歩をしながら高齢者の安否確認を行う「わんわんパトロール」。長岡京市谷田自治会の老人クラブ「谷田たちばな会」で、5年前から取り組まれています。
「特別なことではなく、普段の犬の散歩を通して、何か地域に貢献できないかと考えました」。そう話すのは山本淳(きよし)さん。活動には山本さんをはじめ30世帯が参加し、設定された6つのルートをそれぞれが担当。一人暮らしの高齢者の家には特に注意を向け、郵便受けに配達物がたまっていないか、洗濯物が出たままになっていないかなどをチェックします。
「夏なのに何日も窓が閉め切ったままの家があり、おかしいと思って警察に通報したことも。住人が倒れていましたが、一命をとりとめました」
また、ある家に犬が入っていこうとするので玄関に目を向けると、住人が転倒して動けなくなっていたという例もあったそう。犬も活躍しているんですね。
週に1度、自治会館に集まりメンバー同士で情報共有。「何日かあの家の人を見ていない」「昨日会ったけど元気でしたよ」と、ここで無事が確認できることもあるのだとか。
「横のつながりが大切。活動を始めて、より地域が好きになりました」
メンバーの家には「わんわんパトロール」の看板を設置。地域の人に活動のことを知ってもらえるよう、アイデアを出し合っています。
「いつも買い物に来るあの人、最近見ないな」。店員の小さな〝気づき〟をシステム化したのが、新大宮商店街のポイントカード「ふえるかカード」の、一人暮らしの高齢者を対象にした「お訊ねシステム」です。
スタートは2013年10月。利用者それぞれが設定した日数以上カードが使われなければ、同商店街事務所から確認の電話がかかってきます。
「お客さんが孤独死したと聞いたり、家がわからなくなって徘徊していた認知症の人を保護した経験から、客層の高齢化を実感。システムの導入を決めました」とは、同商店街振興組合副理事長の中村孝さん。
連絡がつかない場合は地域の包括支援センターに見回りをしてもらいますが、実際に依頼したことはまだないそう。
「これまではカードを出し忘れていた、という人がほとんど。何事もないのが一番です。今では高齢者の方から『元気ですよ』と声をかけてくれるようになりました」