「家族で仕事をするのが夢。みんなでいい距離を保ち、老後も支え合える生活ができればとても幸せです」とは、林さん夫婦。この将来の夢を実現するために、「田舎への移住とその地で農業を始める」ことを決意した2人。
現在、佳吾さんは田舎での農業を志す人をサポートする仕事に従事しながら、2〜3年後の自身の移住に向けて、何度も移住先に足を運び、地元の人と人間関係をつくっている最中なんだとか。
しかし、まだ20代の2人、これからどんどん変化する生活環境について尋ねると「子どもが大きくなり田舎を出ていく日が来るかもしれないし、僕たちも便利な街へ戻るかもしれない。それはそのときに老後のプランを変更すればいいかな、って」。
老後の夢とそれに向けた準備は進行しつつも、「軌道修正はいつでも」という林さんの20代からの「老後準備」は、夢にあふれているようです。
「退職後には、いまも取り組んでいるファミリーサポートの活動に加えて、看護師として培った経験を生かして病児保育や地域のお年寄りのケアにも力を注ぎたい」という、伏見区在住で看護師の井上好美さん。
以前に保育士をしていたこともあって「園では障がいのある子どもを預かることが難しく、何とかしたいと思ったのがきっかけで看護師の資格を取得しました。その後、医療の現場を知りたくて病院勤務を始めたんです」。
並々ならぬ努力と行動力に感服していると「今は看護師としてさまざまな医療ケアを学べて、休日には子どもと過ごせる。楽しくて仕方ない。これが天職」と笑います。
その行動力はとどまることを知らず「先日、院内の福祉施設への異動願を出したところ。退職後に備えて知識を吸収したくて」。
強い意志と行動力―。井上さんの積極的な姿勢が、老後を迎える活力にもなっているようです。
リビング読者に「老後について」アンケート(*1)を実施したところ、不安に感じることとして「資金」と回答した人が37%「病気」が34%、次いで家族のことと続きます。「どんな準備をしていますか?」の問いには、資金への不安から「貯金」「保険」「個人年金」というキーワードが多数。「財形貯蓄をしている」(30代女性)、「毎月2万円を積み立てしている」(50代女性)という堅実なものから、「投資信託」(65歳以上男性)や「株式の運用」(60代男性)と一歩踏み込んだ資金づくりをしている人も。
また、女性が年代を問わず「生活費や家族について心配している」という声が多いのに対して、「老後は趣味の時間に」という男性が多くみられました。現役時代には時間を割けなかったことに、楽しみを置く男性が多いということでしょうか。
*1 リビング京都web会員にアンケートを実施。有効回答数848
上記のように、リビング読者が老後不安に思うことの一番が、やはり「資金」。そこで、「老後難民」という言葉の生みの親の、野尻哲史さんに話を聞きました。
「長寿国日本、私たちは95歳くらいまで暮らせる資産を用意しておく必要があると考えます。厚生労働省『老齢年金受給者実態調査 平成23年』によると、月あたりの世帯支出は28.3万円。退職したらお金がかからなくなる、と言いますが、この数字を見るとそうではない実態が分かりますね」
もちろん老後ハッピーのために必要なのは資金だけではありませんが、やはり準備は必要。野尻さんは、「年金だけで足りない分を補うために、60歳の退職までに必要な資金を95歳から逆算して、それを早くから用意する必要があります。30代から少しずつ資産をつくり、退職後はその資産を上手に活用し、できる限り長く使っていける状況をつくるのがいいでしょう」と。具体的には「月々の貯金だけでなく、比較的敷居が低く非課税対象でもある確定拠出年金やNISAにチャレンジするのも一案です。まずは、どんな老後を送りたいかを考え、そこから必要経費を割り出し、逆算で資産づくりを始めることをおすすめします」