全国におよそ7800ある特別養護老人ホームには、約51万人が入居しています(厚生労働省、平成25年8月のデータ)。
ですが、「特別養護老人ホームの待機者は、現在、全国で五十数万人といわれています。申し込んでもなかなか入ることができない状況です」と石田さん。
その特別養護老人ホームに今年4月から入居制限ができ、新規入居は原則として要介護3以上の高齢者に限定されることに(現在は要介護1から対象)。これは、施設が不足するなか、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える施設としての機能に重きを置くための措置です。
特別養護老人ホームに入所申し込みをしている人の介護認定の内訳を見ると、在宅の人は47.2%。その16%、実に6.7万人が要介護4と5の人というデータがあります(平成21年12月集計 ※調査時点は都道府県によって異なります)。今後は、こういった緊急度の高い人たちから入所可能になるとのこと。
「特別養護老人ホームを新たに作るには、高額なお金が必要となります。民間の高齢者対象のマンションなどにゆだねていこうというのが国の考え方です」と石田さんは言います。
ただし、要介護1~2の人についても、やむを得ない事情により、特別養護老人ホーム以外での生活が著しく困難であると認められる場合には、市町村の適切な関与のもと特例的に入所できることが厚生労働省の資料には示されています(詳細について今後検討される予定)。ちなみに、現在すでに入居をしている要介護1~2の人も退去の必要はありません。
サービスを利用した際の料金や保険料にも変更点が。
「これまでは、利用した際の負担額は所得にかかわらず1割でしたが、今年8月の利用分からは、65歳以上の被保険者のうち一定以上の所得がある人は、利用者負担が2割となります」(石田さん)
2割負担となるのは、年間の合計所得金額(※)が160万円以上の人。年金収入のみの場合は、その収入が280万円以上に相当する人が2割負担となります。これは、個人単位の収入によって決まるため、夫婦で負担割合が異なることもありえるそう。
ただし、「その人の収入が給与収入、事業収入や不動産収入といった年金収入以外の収入を中心とする場合には、実質的な所得が280万円に満たないケースがある」「夫婦世帯の場合には配偶者の年金が低く、世帯としての負担能力が低いケースがある」といったことも考えられるため、その世帯の第1号被保険者(65歳以上の被保険者)の年金収入などとそのほかの合計所得金額の合計が単身で280万円、2人以上世帯で346万円未満の場合は1割負担に戻すことが検討されています(表1)。
このほか、第1号被保険者の保険料の負担が減るケースもあるとのこと。
「第1号被保険者の保険料は、国が示した標準の段階設定を参考にして、市町村が保険料を決定します。現在は所得に応じて6段階となっていますが、これが9段階になり、負担の程度も見直されます(表2)。段階区分が細分化されることで、より実際の所得に合わせた保険料が設定できるようになり、低所得者の保険料が軽減されます」と石田さん。これは平成27年度から実施されます。
※合計所得金額とは…収入から公的年金控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除などの控除をする前の所得金額のこと
京都女子大学家政学部生活福祉学科・教授の石田一紀さん
「今後、介護には〝地域の力〟が必要になってきます。特に女性の参加が期待されています。一定の研修を受けて介護に参加するという機会が増えてくるかもしれません。そういったことに関心を持つ人は積極的に情報を仕入れて、地域づくりをしていくというのもひとつの方向性ですね」