「結婚を機に、あのレシピを母から教わりたい」「子どもにこの味を伝えたい」―。そんな〝わが家の味〟には、おいしさだけではなく、家族の思いもいっぱいつまっています。みなさんの家の特別な一品はなんですか?
「誕生日には、必ず母に春巻きをリクエストしていました」とお便りをくれたのは、向日市の下村美穂さん。下村さんの母・長谷川浩美さん(伏見区)が作る春巻きには、春雨の代わりに糸コンニャクが使われているのが特徴です。
「コンニャクの歯ごたえと、タケノコのコリコリした食感が大好き。だから、初めて外食で春巻きを食べたときは『中がトロトロ! よその春巻きはこうなんや』と驚きでした」と下村さん。
このほかに春巻きに入るのは、千切りにした豚肉、ニンジンに、斜め切りにした青ネギ。ネギ以外を砂糖としょうゆで炒め、最後にネギを加えます。それを春巻きの皮で包んで揚げたら出来上がり。
「テレビで見たレシピを参考にしました。手早くできるところがいいなと思って」と長谷川さん。
というのも、長谷川家は自宅で書店を営んでいるため。浩美さんが店番をしながら家事をしているのです。糸こんにゃくはお湯にさっとくぐらせるだけで下処理ができるので、「凝ったことはできなくても手料理を」という思いから定番となったレシピなのです。
下村さんも自分で作ったことがあるそうですが、「手順は同じなのに、母とは違う味になる。思い入れが強い分、そう感じるのかな」と言います。取材時に臨月を迎えていた下村さん、「母の味をマスターして、夫や子どもに食べてもらいたい」そう。
結婚を機に、自分の家にはなかった新しい味を知る人は多いはず。「妻はオーブン料理が得意。特に、実家では食べたことがなかったミートローフは、新婚時代から大好きなメニューです」という城陽市の団野利男さんもそんな一人です。
団野家のミートローフは、現在は肉の量を以前の半分に減らし、代わりに豆腐を使っているそう。一時期体重が90㎏にまで増えた利男さんのために、妻・明日香さんが工夫したのです。おかげで、利男さんは数年かけて 13㎏の減量に成功!
ミートローフのたねは、水切りをした木綿豆腐と合いびき肉、みじん切りの野菜、パン粉、牛乳、塩こしょう、数種のハーブを合わせ、しっかりこねて作ります。これを耐熱ボウルに入れて200℃のオーブンで焼くこと1時間。肉のうま味と食べごたえがありつつ、もたれにくい一品の完成です。一番上にミニトマトとズッキーニをあしらい、彩りにも気を配っているのもポイント。添えるのは、刻んだキノコ数種類をバターで炒め、小麦粉でとろみをつけてから、しょうゆで味付けをした特製ソースです。
取材の日、明日香さんを手伝っていたのは大学生の長女・華保(かほ)さん。今はそうした段取りを覚えているところだとか。
「母は、食材や味付けが前日の料理とかぶらないよう、いつも工夫してくれています。しかも、それが楽しそうで」と華保さん。「ミートローフ以外にも、教わりたい料理はいっぱい!」。料理好きな姿勢も受け継ぎつつあるようです。