椅子から立ち上がったときにくらっとした、外出中、急に目が回って倒れそうになった…。そんな〝めまい〟の経験はありませんか? 実はそのめまい、さまざまな不調によって引き起こされている体からのサインなんですよ。
「人間は、目や耳、全身の深部知覚(※)から入力した情報を脳で統合して体のバランスを取っています。その入力にアンバランスが生じるとめまいという症状がおこります」と話すのは、京都大学医学部附属病院めまい外来の医師・田浦晶子さん。
読者アンケートを実施したところ、回答してくれた49人中38人がめまいの経験ありと答えました。「どんなときめまいがしましたか?」という問いに対して多かったのが、「座っていて立ち上がったとき」という回答(19人)。これはどんなめまいなのでしょう?
「立ち上がった瞬間に、〝くらっ〟とするのは、『起立性低血圧症』かもしれません。脳へ行く血流が不足して起こるもので、いわゆる〝立ちくらみ〟もこれに含まれます。
頭を動かしたときにくらっとしたと考えると、『良性発作性頭位めまい症』という病気の可能性も。これは、体のバランスを保つための器官で、耳の中にある耳石(じせき)が剝がれ落ちて三半規管の中を浮遊することで症状が現れます。めまいで病院を受診するケースの中で一番頻度が高いといわれています」
※体の深部にある感覚器により、位置や運動などの状態を感知する感覚のこと
「耳の中に内リンパ水腫ができる『メニエール病』もめまいを引き起こす病気です。これはストレスや睡眠不足が原因と考えられていて、きちょうめんな人に多い傾向があります。ひどいときにはぐるぐると目が回るような回転性のめまいがします。
ほかに『前庭神経炎』も、症状が重いと歩けないほどの回転性めまいが起こります。その後しばらく、くらっとしたり、ふわふわした感じが続くという人が多いです。原因は不明ですが、ウイルスや血行障害による可能性もあり、風邪をひいたあとめまいがする場合には、この病気を疑います」と田浦さん。
「くらっとする」「ぐるぐる回る」「ふわふわ」など、いろいろなめまいの症状があるのですね。
「体の中で起こっている変化が同じでも、ぐるぐる回ると感じる人もいれば、ふらっとしたと感じるという人もいますので、めまいの症状から病気を診断することは難しいのが現状です。ただし、めまいが持続する時間や、耳鳴りや難聴といった〝蝸牛(かぎゅう)症状〟の有無にはそれぞれ特徴があります」
「良性発作性頭位めまい症」「メニエール病」「前庭神経炎」は、耳が原因で起こる「末梢性めまい」に分類される代表的な病気。これらについての特徴を表にまとめました。自己診断は禁物ですが、参考にしてみて。
良性発作性 頭位めまい症 |
メニエール病 | 前庭神経炎 | |
---|---|---|---|
発症する人が 多い年齢など |
60~70代 女性 |
30~40代の 女性 |
特になし。 風邪をひいた後に 発症する人もいる |
めまいの特徴 | くらっとして、 数分でおさまる |
数十分~数時間。 ひどい人はぐるぐる 目が回る回転性の めまいがある |
おさまるまで数週間 以上かかることもある。 1回起こると長く続く。 最初はぐるぐるとした 回転性のめまいがある |
繰り返しの 有無 |
頭を動かしたときに 繰り返す |
1週間に1回や 年に2~3回など、 頻度に個人差が あるが、繰り返す |
繰り返さない |
蝸牛症状 | なし | あり | なし |
上で紹介した病気以外にも気を付けなくてはいけないのが、脳の病気によるめまい。
「小脳や脳幹には体のバランスを統合する機関があるので、そこに梗塞や出血があると、めまいや歩行障害の症状が出ることがあります。
めまいと同時に、言葉がうまく発音できない、片方の手足や顔面のマヒ、知覚異常といった症状があれば、すぐに診察を受けてください」と田浦さん。
ただし、これらの症状がなくても、脳の病気の可能性はゼロではないとか。
「ピンポイントで、小さな梗塞や出血が脳にある場合は、付随する症状がでないこともあります。脳のほかに、不整脈など心臓の病気にかかわるめまいもあります。いずれにしても検査を受けて、めまいの原因をはっきりさせましょう」
病院に行くときは、どのくらいの時間めまいが続いたか、どんなときにめまいが起こったかなど、メモをしていくと症状を伝えやすいそう(表参照)。