会話中にムカッ、カチン! お互いがヒートアップして、つい売り言葉に買い言葉…。「こんなはずじゃなかったのに」という経験はありませんか?読者のエピソードをもとに、心理学や言葉、マナーの専門家たちに、さまざまな視点から〝予防と対策〟を聞きました。
「プレゼントをもらったら自然にお返しを考えるように、相手から何かをもらったら、それと同様のものを返したくなる心の働きを 〝返報性〟と言います」
そう話すのは、京都光華女子大学の人文学部心理学科の石盛真徳さん。
「会話においても、ほめられたらほめ言葉を、逆に傷つけられたり、嫌な思いをさせられたら、相手に同じ言葉を自動的に返そうとする。
〝やられたら、やり返そう〟という心の仕組みが、売り言葉に買い言葉という事態を引き起こしていると考えられます」
特に相手との関係が〝対等〟と思っているほど、「なめられたらアカン」「主導権を取られたくない」といった気持ちになり、つい攻撃的になってしまうのだそうです。
一方、本人に悪意がなく発した言葉でも、相手にとっては〝売り言葉〟になってしまうことも。
「例えば、関西の人が親しみを込めて『アホやなあ』と言ったとします。
ところが、言語環境が異なる地域の人には、言葉のニュアンスがうまく伝わらない。また、言った本人が親しい関係と思っていても、相手がそう感じていないと、受け止め方が違ってきます」
「伝わるはず」「わかってくれるはず」と思って言ったのに、相手がカチン!となるのは「お互いの認識がズレているんです」と、石盛さん。
「言葉には、その人が持っている背景や相手との関係性といった表面には表れないメッセージがあります。そのメッセージも含めて、発言したり、受け止めたりしないと、行き違いを招くことになるんです」
ある冬の日、子どもが屋外で遊んでいる姿を見て、母が「あんな薄着で…。ちゃんと温かい服を着せたらええのに」とポツリ。私が「でも、別に寒がってないし。お母さんだって、きっちりしてへんかったやん!」と言うと、気に障ったのか「もうええわ、勝手にし!」。アドバイスしてもらったのに、悪かったなあ…と苦い気持ちが残りました(38歳/れいこ)
まわりが友人のことを思ってしていることに対し、本人が感謝しないうえ「別に頼んでいない」と発言。その言葉がきっかけになって、「あなたにはみんなが迷惑をかけられている、もっと自覚しろ!」と、15年間の付き合いで我慢してきたことが爆発。その後、こちらから連絡したもののまともな返事が返って来なくなり、私からバッサリ縁を切りました(36歳/ハンコさん)
コミュニケーションは、キャッチボールのようなもの。このケースは、相手が取れないところに投げてきたボールを、あなたが無理して取り、体制が崩れたまま投げ返してしまったように感じます。
基本的に、暴投には手を出さないこと。つまり、友人の言葉には、「じゃあ、頼まれてからするわ~」と、軽く流しておくのが正解でしょう。
今までわからなかった人に、あえて言ったところで理解させるのは無理。今回のやり取りは、友人関係を見直す機会だったんだと思います。
15年間もよくガマンしました! よっぽどストレスがたまっていたんだと思います。
お友達のような自分本位の発言には、まともに対応せず、かわす、はぐらかすのが賢い対応。
もし、外食中だったとしたら、オーダーに引っかけて「え、そのメニュー頼んでないの! 注文したのは、カレー? 親子丼?」と、わざとボケて、相手の言葉で遊んじゃう(笑)。
相手への怒りをギャグに転換して、以前から小出しで発散していたら、この結末も変わっていたかもしれません。
誰でも、「ノー」という反応は、自分が否定されたようで抵抗があるもの。そういうときに、心がけたいのが〝イエス、バット(Yes、but)方式〟という接客方法。相手の言葉に対して、いったん「そうですね」と受け止めることで、その後の否定的な言葉を和らげることができます。
この場合なら、「そやな、寒いもんな~」と、まず受け入れたら、お母さんも「認められた」と感じ、次の展開も変わってきたと思います。
そして、大切なのは「しまった!」と思ったら、すぐに「ゴメン」と言葉にして伝えること。後悔しないためにも、その場で清算しておくようにするといいですね。
お母さんへの最後の嫌みのような一言も、ちょっと余計でしたね。
僕なら、子どもの〝服〟を〝心〟に置き換えて、「心はポカポカしてるから、大丈夫!」って、返すかも。クスッと笑えるヒネリを加えることで、お母さんも「勝手にし!」とは言えなくなるのでは。
さらに、「お母さんのあったかい心を、私もこの子も引き継いでるから」と続けると、お母さんもつい「何言うてんねん、もう(笑)」。お互い笑い合って、めでたし、めでたし、です!