退職後、趣味や地域活動などの新たなステージに活動の場を広げている人は多いですよね。今回は、さまざまな分野で活躍する50~70代の人たちに、活動に寄せる思いを聞いてみました。
“おもちゃドクター”として、おもちゃの“治療”をする神賀重善さん。「おもちゃは大切なコミュニケーションのツール。修理は、持ち主の子どもたちにとって学びと感動の場」と実感しているとのこと。14人の仲間と、京都SKYセンターのサークルとして「京都SKYおもちゃ病院」を京都市域の児童館などで開設しています。
神賀さんにとって最初のおもちゃは、戦後の物資不足の中、父親が手作りしてくれたものでした。「自分でも、おもちゃを作って友達と遊びましたし、心の成長に役立ったと感じています」
結婚し子どもが生まれてからは、保育園のバザーで大掛かりなしかけおもちゃを登場させて大人気に。理系の仕事に携わっていた神賀さんは、「中途半端なおもちゃは作れません(笑)」。その後、仕事ばかりの日々で、おもちゃの空白期があったそう。
「再び、おもちゃを介して子どもたちとの楽しい時間を持てるようになったのは、退職後にはじめたおもちゃ病院の活動のおかげ」と神賀さん。しかも、病院の仲間には、電気や時計、接着剤、洋裁といった専門家も多く、チームワークが抜群。
「手順を教えて一緒に修理すると、子どもたちは自分が“治した”気持ちになってすごく喜ぶんですよ。こういったことを通して、何事にも原理があることを伝えていけたらと思っています」
仕事を辞め親の最期をみとり、しばらくしたころ日野鈴子さんはふと考えました。「このまま何もせず、時間が過ぎていくのはイヤ。自分は何がしたかったんだろう」。
学生時代にまで記憶をさかのぼると、演劇に関心を寄せていた思い出がよみがえってきました。そこで、日野さんは、インターネットでシニア世代の初心者から参加できる劇団の情報を調べました。
「近場にもシニア向けの劇団はありましたが、作品を一から創作するという京都のこの劇団がいい」と、劇団の見学を重ね、本格的に入団したのは3カ月前。
日野さんを含む劇団員13人は50代半ばから60代後半で、半数以上は設立時からのベテラン役者です。「私は発声すらまともにできなくて、まだ精いっぱいの状態です。練習の翌日は、筋肉痛でぐったり。必死ですが、とても楽しいです」
日野さんは、実は徳島在住。週1回、稽古のために徳島から京都まで日帰りで通っています。「往復の高速バスの中で、人を観察しているとドラマがあるんです(笑)」。入団してから「人に関心を寄せるようになりました」という日野さん。「以前は、あまり人に興味がなく、自分の気持ちも抑えていたのだと思います。練習を通して、感覚を表現・解放する快感を知りました」
変わりつつある自分を楽しんでいるようです。