「東山アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS=ハップス)」は、京都市の「若手芸術家等の居住・制作・発表の場づくり」事業を実施する組織として、2011(平成23)年に設立。翌年春から活動がスタートしました。住まいや発表の場の確保など、アーティストのさまざまな“困りごと”の相談に乗っています。
「物件を持つ大家さんを紹介したり、大学と連携したり。私たちの役割は、解決の糸口を一緒に見つけることです。昨年からは、元・新道小学校の教室をスタジオとして活用しています。公募で選ばれた人たちが創作活動に励んでいます」とHAPSのディレクター・芦立さやかさん。
オフィスを構える東山区六原の「六原まちづくり委員会」に参加し、地域と積極的に連携をしているのも特徴のひとつ。
HAPSの実行委員会のメンバーで、まちづくり委員会の委員長でもある菅谷幸弘さんは、「六原地区に多くある空き家をアーティストたちの住居に活用できないか、情報交換をしています。若い世代が住んでくれて、地域の一員になれば、街の活力にもなるでしょう」
そんなHAPSを利用してこの町へと転居したのが、画家の彦坂敏昭さんです。京都の芸術大学を卒業後、拠点を東京に移していましたが、8年ぶりに夫婦で六原地区の町家へ。
「窓を開けて仕事をしていると、話し声や笑い声が聞こえ、家の中にいるにもかかわらず外の人たちや町との関係を感じられます。移り住んだことで、すぐ創作活動に変化が出ることはないと思いますが、このような日常が制作の中にもしみ込んでいくことを考えると、とてもわくわくします」
芸術家が一定期間滞在し、創作活動をする「アーティスト・イン・レジデンス」。全国的に行われていますが、2000(平成13)年には京都芸術センターが取り組みを開始しました。現在、年2〜3組、国内外のアーティストが3カ月程度、京都に滞在して、ギャラリー展示をしたり、パフォーマンスを披露するなどしています。
京都府の東南端、南山城村にある「Gallery Den mym(ギャラリーデン 南山城村)」は、昨年、築60年以上の古民家を利用した「AIR 南山城村–Artist In Residence 青い家」をオープン。こちらは1日(24時間)から利用可能。「自然の素晴らしさを感じて創造の糧にしてほしい」(同ギャラリー・手島美智子さん)
京都のアートはこれからもアツい! アーティストの育成からビッグイベントまで、
今後の“京都×アート”の注目トピックスを紹介します。
マンガ家のタマゴたち集まれ!
東京都豊島区にかつて実在した「トキワ荘」。手塚治虫や赤塚不二夫といった著名な漫画家たちが暮らし、全国からマンガ家志望の若者が集まったという木造アパートです。
マンガ家を目指す若者が切磋琢磨(せっさたくま)できる空間を京都にもと、京都市と京都国際マンガミュージアムが協力し、「京都版トキワ荘事業」をスタートさせました。上京区妙蓮寺前町の京町家を男性用の「京都第1トキワ荘」とし、現在入居者を募集しています。入居条件は「本気でマンガ家を目指している若者」など。京都から傑作が生まれる日も近いかも!
詳細はホームページ=http://www.tokiwa-so.net/kyoto/=で確認を。
2015年、国際的な芸術祭開催
京都経済同友会、京都府、京都市がタッグを組んで、2015年3~5月にかけて「PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015」が開催されます。京都市美術館や京都府京都文化博物館をメイン会場に、さまざまなアートを体感できる催しになるそう。
アーティスティックディレクターを務めるのは、元・京都国立近代美術館学芸課長の河本信治さん。調査研究と情報収集を兼ねた「オープンリサーチプログラム」を実施しながら、本番に向けて準備を進めています。豊かな文化と伝統を育んできた京都の魅力を発信する機会になりそうですね。
“アートと交流”がテーマ
堀川通を北上すると、丸太町通を過ぎたあたりから、西側に1階が店舗・店舗付き住宅、2・3階が住宅となっている建物が6棟たっています。これは1950年代初頭に建設された堀川団地。
建築から60年が過ぎ、京都府では「アートと交流」を基本テーマにした堀川団地の再生事業を検討中。伝統産業などを活用した地域活性化の取り組みのための拠点「西陣アート&クラフトセンター(仮称)」の整備を含めた、さまざまな議論がされています。