「京都」と「湿度」の関係について、日本各地の都市の気象などを研究する気象庁気象研究所環境・応用気象研究部長の藤部文昭さんに教えてもらいました。
京都は湿度が高い、と思っている人は多いのでは?
湿度の年平均値の推移をみると、1881年に77%あったのが、2012年は67%に。1969年以降70%を超えていません。実は、京都の湿度は下がってきているのです。
「これは、都市化による気温の上昇が一番の原因。同じような変化は、ほかの大都市でも起きています」と藤部さん。
そもそも、湿度とは、大気中に最大限存在できる水蒸気量(飽和水蒸気量)を100として、実際に存在している水蒸気量を%で表したもの。飽和水蒸気量は、気温が高いほど大きくなります。「都市では植栽など緑が減少。ヒートアイランド現象で気温が上がっているにもかかわらず、水蒸気の供給が減少しているため、湿度が下がっているわけです」
湿度が下がっているにもかかわらず、「むし暑さ」は年々増しているよう。
「むし暑さ=湿度が高い、というわけではありません。都市の湿度の低さは、さわやかさを表すものではなく、むしろ暑苦しさを反映するものです」
湿度の減少と気温の上昇。日常生活に及ぼす影響は?
「気温が高く、アスファルトの照り返しや建物からの赤外線が多く、風が抜けないとなると、湿度が多少低くても体感温度は高くなります。都市の湿度低下は、高温化している結果。夏場に、熱中症の増加が取りざたされるようになったのもそのためです。冬場には、乾燥による悪影響が懸念されています」
暑い夏を乗り切る先人の知恵として、よく知られているのが町家の坪庭。奥行きのある建物の採光と通風をよくするための工夫です。
「昔から、夏の暑い日にはよく打ち水が行われます。まいた水が蒸発するときに気化熱が吸収され、温度を下げる効果があります。水が蒸発する分、水蒸気量は増し、湿度が上がりますが、温度が下がるメリットの方が上回るということだと思います。最近は、霧吹きでこの効果をより効率的に働かせる方法も開発されています」
湿度を味方にする、ということですね。
京の湿気、京表具や手描友禅など伝統工芸にも功罪あるようです。
京表具協同組合の理事長で、掛け軸を手がける表具師 静好堂中島の中島實さんに教えてもらったのは「梅雨時、掛け軸自体は床の間に掛かっているとき、おとなしくしていますね」。
おとなしくというのは、ストンと伸びて乱れないということ。想像するだけで、風情が感じられますね。
ただ、「軸づくりにおいては、基本湿気を拒みます。のり付けして乾燥させないといけないのですが、湿気が多いと乾燥時間がかかります。軸自体の保存も、湿気が多いとしみなどができるため、昔から軸は、水分を含まない材質のきり箱で密封することになっているんです。そして、なるべく湿気のこもらない高い位置に置いておく。しまうときは、天気のいい日に虫干しして、湿気を取ってからしまいます」と、中島さん。これは、私たちの日常生活でも同じこと。雨の日を避け、梅雨の合間の晴れた日に片付けをするのがいいということなんですね。
また、京都手描友禅協同組合の副理事長・鈴木勉さんからは、「手描友禅は、濃い地色などは、梅雨時の方がゆっくりと色が染まりやすく、むらが出にくいんです」と、教えてもらいました。
「女性の美に湿気がプラスなのは、なんといっても肌に潤いが出ることでしょうか」と、オーヴルビューティーアカデミーの代表で、美容家の奥田浩子さん。
「特に目のまわりなど、乾燥しなくてすむのは梅雨時だからこそですね。小じわができにくい時季です」と、何やらうれしい話です。
ただ、乾燥しないくらい潤いが出るときだからこそ、メイクには気をつけないといけないこともあるそう。
「ファンデーションの下地や日焼け止めは、潤い効果の強いものを選ばないように。手触りでさっぱりしたタイプがおすすめです。
また、ファンデーションは肌につけたときにスルッとすべるようなものではなく、止まりのいいものを選んでください。そして、一番いいのは、リキッド+お粉の組み合わせです。油分のあるリキッドは控えめにして、ベースメイクのもちをよくするお粉を多めに使いましょう。その日の湿気具合で、バランスを変えるのもいいですよ」